朔間凛月
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中学生のころの文化祭で『シンデレラ』をやったことがあったーー
シンデレラはガラスの靴を片方置いて王子の元を去っていく。「その靴を使って私を探せ」そう暗に言っている気がした
凛月「シンデレラってずる賢いよねー」
『え…なに…急に…』
王子役に指名されたけど俺はこんな体質だし、練習もままならないからと断りなまえと同じ大道具係になった。なまえは絵が上手いから背景の下書きをしていて、そこに俺は指示された配色のメモを残していく作業中。
シンデレラのストーリーが頭を過ぎり俺は純粋な疑問をぶつける。
驚いた顔をしたなまえは、不思議そうな顔で俺を見る
凛月「だって靴片方なんて走りずらいじゃん、俺だったら両方脱ぐか両方履くかだと思うんだよね〜
それに片方なんて、私を探して~って言ってるようなものじゃん…?」
『そのくらい焦ってたってことでしょ?なんでそんな…夢のないこと言うの。凛月は…』
凛月「俺意外と現実主義だったり~、ねぇなまえだったらどうする?靴片方置いていく?」
『え〜わかんないよ。シンデレラじゃないし私…それに王子様次第なんじゃない?佐藤くんが王子様なら両方履いて全力ダッシュするかなぁ…』
佐藤くん、っていうのは俺の代わりに今回王子様をする人のことで、なまえは「今の内緒ね」とこっちを向いていたずらっ子のように笑った。
凛月「じゃあ、俺なら…?」
『…え?』
凛月「俺が王子様なら、靴置いてってくれる?」
『ん〜…、置いていかない、かな。履いて逃げるよ。』
凛月「…は?なんで…」
『だって…だって凛月ならガラスの靴なんてなくても見つけてくれるでしょ?』
そう彼女は微笑んだ。一瞬心臓が大きく鼓動するのがわかった。彼女の微笑みもその言葉も、ふざけているのか真剣なのか。俺には判断がつかなかった。
そのあと俺は「やだよ。めんどくさいなぁ~」と言ってこの胸の高鳴りを静かに自分の中に閉じ込めた。
きっとこの時の俺は過信しすぎてたんだ。なまえは俺のことが好きで、いつかなまえが好きって伝えてくれて、このまま付き合って、いつかはきっと、なんて信じて疑わなかった。
この時
もっと素直に、「当たり前でしょ?何がなんでも見つけてあげる。」そう言って素直に思いを伝えていれば…なんて今更かもしれない。
あれから数年ーーーー
なまえは今日結婚する。よりにもよって俺の誕生日に…、中学を卒業してから高校は別々で会う回数も減っていき、今は連絡もあまり取れていなかった。そんななまえが久々に会いたいと言ってきて予定をあわせてご飯に行ったその時に渡されたハガキは結婚式の招待状だった。
予定も空いていたので同じく招待状をもらった幼馴染のま〜くんと一緒に行くことになった訳だが何かと目立ってしまうこともあり式場の配慮で、少し式場に入る時間をずらし後ろへと座ると…
そこには純白に身を包んだなまえの姿と彼女に腕を組まれている知らない男の姿があった。
神父の言葉で、式は順調に進んでいく。
俺とま〜くんは静かにそれをみると、
神父「それでは、誓いのキスをーーー」
その言葉をきっかけに2人は向かい合い男は彼女のヴェールをあげる。肩を掴み彼女を寄せようとした瞬間誰かが「嫌だ!」と俺の脳内で声をあげたーーーーー
そして、その瞬間俺の目の前が光に包まれて眩しさのあまり目を強く瞑るーーーーー
静かだった周りが急に賑やかになっていき誰かが俺の名前を呼んでいるのが聞こえる。
『凛月!りーつ!なんなの!?変なこと言うな~と思ったら急にボーッとしちゃって!!』
凛月「…え?なまえ…なんで…?」
『なんで…ってこっちのセリフだよ…急にボーッとして人の話聞いてないのは凛月じゃない!』
そこに居たのは中学生のときの制服を着たなまえと夕方の教室が広がっていた。周りには数人の生徒がグループごとに作業をしている。俺となまえは2人で作業中といった感じだ…手元を見ると自分も同じ制服を着ていて、なおかつ板の上で鉛筆をもっていた。
そこには青や緑と書いてあり、何かの背景になる予定のものだろう。そんな……これはシンデレラの舞台で使った背景だ。あの日の光景が脳裏をよぎる…
『それで? ガラスの靴、片方なんて私を探して~って言ってるようなもの…だっけ?焦ってたなら仕方ないんじゃない?』
なまえの方をバッと向くとなまえは驚いた顔をする。あの時の会話だ…。冷や汗が流れる…会話を続けないと…混乱する頭であの日の会話を思い出す。
凛月「あ…えっと…なまえだったらどうする…?」
『…どうするって?ガラスの靴を?』
凛月「うん…えっと片方だけ置いていくの?両方履いて逃げる??」
『逃げるって…』
あはは、と苦笑いするなまえ、俺は冷や汗が止まらない。どういう状況か未だに頭が追いつかない。あの時の光景とさっきまで見ていた光景が頭を交互によぎる…
どうして、こんな状況になっているのかはわからないけど…それでも心のどこかであの日を後悔を払拭できるのではないかと期待している俺がいた…
『佐藤くんが王子様なら確かに逃げちゃうかも…ふふふっ、なぁに凛月変なことばっかり言うね』
なまえは口元を隠し綺麗に笑う。また佐藤くんを犠牲にして、佐藤くんの顔はもう覚えていないけれど…あの時は「めんどくさい」って言ってしまった、それをずっと後悔してた。それをやり直すために戻ってきた。そう思っていいのかな…俺の後悔を…消すための淡い時間なんだね…神様のいたずらかな…
凛月「…じゃあ、俺なら…?」
『…え?』
凛月「もし俺が王子様なら、靴置いてってくれる?」
『う~ん、凛月が王子様かぁ~…まず舞踏会にすらいなさそうで…』
凛月「そんな…いるよ。ちゃんとなまえとダンスもしてあげる」
『そうなの?ん〜一応私とダンスまで…イメージないなぁ…』
あの時はしなかった会話が俺の感覚を麻痺させる。こんな会話してない。どうしよう。次は何を言おう。何が返ってくる。怖い、けど楽しい。なまえが俺と会話して俺のために時間を使っている。俺を見て俺に微笑んでくれる…この数年感じられなかった。満たされる感覚…
俺も馴染んできたのか、頭を動かしてできるだけスムーズに会話を上手く進めていく。
『そうだなぁ…ガラスの靴を脱ぐかどうか、かぁ…うーん…脱がないかなぁ…』
凛月「…なんで…?」
『だって…
だって凛月ならガラスの靴なんてなくても見つけてくれるでしょ?』
きた…あの時の言葉だ。俺はゴクリと生唾を飲み込む。
なまえが俺の目を少し不安そうに見てくる…俺がどうするか見てる。あの時と同じ事を繰り返したくない、この奇跡をちゃんと利用してうまく…ちゃんと気持ちを…だめだ。素直に伝えよう。考えるな…うまくやろうとか考えずに素直に…
凛月「俺は…
俺はなまえがガラスの靴を両方脱いでも、片方脱いでも、両方履いていっても…見つけてあげるよ。
どこに居たって…ね。」
『…え?』
凛月「…なぁに?なまえ」
言えた。あの時の後悔を拭って、ついに伝えられた。伝えたなまえの瞳は揺れていて、少し水分が多い感じがした。俺は誰も知らない達成感に微笑んで「なぁに?」と聞くと、あわあわと視線を揺らした。
『いや…ぁの…そんな…凛月なら嫌だよ面倒臭いくらい言うかと思ってたから、…あ…まって見ないで…顔…赤い…から…』
凛月「ダメだよ♪見せて…ふふっ、かわいい」
顔を手で覆い、顔を他所に向けるなまえの手を取り顔を出してやると、なまえの言葉通り真っ赤になっていた。
目が合うと「あっ…あっ…」と顔なしのようにつぶやく
『凛月やっぱり変…なんかいつも言わないことばかり…あと大人の余裕みたいなの感じる…』
凛月「ふふっ、俺はおじいちゃんだからさ♪思ったことはそのまま言っちゃうの」
『おじいちゃんは関係ないし、おかしいよ…同い年じゃん…』
凛月「いいの、こっちの事情だから」
『なにそれ…』
真っ赤ななまえは少し不思議な顔をする。
楽しいなぁ…後悔が減って体が軽くなったからなのか、会話をよりスムーズに進められている…。
凛月「なまえ…ごめんね。いつも正直じゃない俺で…ほんとはずっと、この頃から君がそばにいてくれればって思ってた…」
『…へ…?この頃ってなに…それにそばに居てくれれば、なんて…私そばにいるよ…?』
凛月「いつかわかるよ…でも俺は照れ屋さんだから、なまえから会いに来てくれると嬉しい…」
『照れ屋って…自分で言うものじゃないと思うけど…でも、凛月がそばに居ていいって言うなら…いよっかな…凛月のそばは居心地がいいし』
凛月「そっか、じゃあずっと待ってるね。受け身でごめんね?でも大好きだから甘えさせて、ずっと俺のそばにいてね」
『っへ!?今大好きって…』
そう言ってさっきよりも真っ赤になるなまえを見てるとまた眩しさが俺を襲い、強く目を瞑る。
**「…っ…り…りつ…凛月や…!」
凛月「…ぁ…兄者…」
零「シャキッとせい。お主が今日の主役じゃろう…」
そこに居たのは少し焦った顔の兄と白いタキシードに身を包んだ俺の姿だった…。また状況についていけず…ボーッとしてしまう。戻るならば、式場だったと思うのだが…まさか俺が結婚する結婚式の式場なんて…相手に思い当たる節が無さすぎる…一体これは…
凛月「兄者…俺今いくつだっけ…」
零「覚えとらんのか…?たしか…今日で25、じゃったかのう…凛月大きくなったわい♪」
凛月「今日で…」
間違えない。元の時間には戻っている。彼女が結婚したのが俺の25の誕生日…。でも俺はなんでタキシードを着て…
真緒「凛月~そろそろ時間だぞ~」
凛月「ま〜くん…」
真緒「??、どうした?そんな神妙な顔して主役がそんなんじゃ…相手も心配しちまうだろ?」
零「そうじゃよ。そのほうがあの子も笑顔になれる。しっかり笑っておれ、凛月」
凛月「相手…」
さっきの過去で行われた会話を思い出す。なまえは側に居てくれたかな…なまえは…
頭に浮かぶのはなまえのことで、なまえはあのあとあの男と結婚できたのかな。それとも、まだ結婚していないのかな…。
零「さぁ、式場に行こう。みんな待っとる」
凛月「ぇあ…うん…」
兄者とま〜くんに連れられて式場に向かうと式場には見知ったアイドル達と親族。相手の親族…多くの人が参列していた。俺は神父の前に立ち、相手を待つ。なんで顔もわからない相手と結婚してるんだろ、俺…しかも誕生日に…ボーッとする頭で扉の方を見る。
司会「それでは新婦、なまえ様の御入場です。」
凛月「…え」
司会者の声に驚きの声が漏れる。俺の声を拍手と入場の音楽が搔き消す。そして、ゆっくりと扉が開き、なまえのご両親となまえが入場する。数回ほど会ったことがあるご両親が一度、俺に微笑む。義母さんがなまえのヴェールを下ろし、一度ハグをすると義父さんの方へと背中を押す。なまえは義父さんの腕をとりこちらへと、ゆっくりと近づいてくる。
一歩、一歩…俺の前にくると少し顔を伏せていたなまえがゆっくりと顔をあげてこちらを見る。自然な流れで腕を取り、なまえが横に並ぶ。
神父の前に2人で立つとなまえが小声で話しかけてくる。
『凛月、どうしたの?驚いた顔して…具合悪い?』
凛月「純粋に驚いてるんだよ…具合は多分いい…」
『いいんだ…そっか、ねぇ凛月』
凛月「なぁに?」
『本当にずっとそばにいることになっちゃったね…』
凛月「…え」
『ほら、中学の時にさシンデレラの話したじゃん?そしたら凛月がずっと俺のそばに居てって』
あの時の言葉が頭をよぎる。やっぱりあれは夢じゃなかったんだ…。光に包まれた後に行なった会話はここでは現実のようで、あの会話を嫌がらず守ってくれたなまえも夢じゃなくて現実みたいだ。
神父の言葉に誓いをたてて、なまえと向かい合う。
凛月「守ってくれてありがとう、甘えてごめんね?これからは、俺が約束を守るから…」
『大丈夫、その言葉だけで幸せだよ。凛月の隣は居心地がいいから…これからもそばに居てあげる。ねぇ…凛月』
凛月「なぁに?なまえ」
なまえの顔を隠していたヴェールをあげて、顔が見えるようになったなまえが俺の顔を見て微笑む。
そして、静かに口を開く。
『お誕生日おめでとう。凛月…!』
神様、この恋を
そして、2人は誓いの口づけを
Happy Birthday‼︎ Ritsu
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