呼び慣れた名前を捨てて
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*レオside
最近、なまえが体調が悪そうなのは把握している。仕事しながらでも眠そうにしているし、それを我慢してしんどそうになっているのも気づいている。
普段は都合がいいので車で通勤しているなまえが最近車に乗っていないのも把握している。でも、何もできないのは最近おれの仕事がやたらと忙しいから…そんなの言い訳だとわかってる。
けどおれもなまえも仕事が被ることはあまりない。迎えに行きたくても様子を見たくても実際に会うことは難しい。難儀な関係だ、せっかく夫婦になっても一緒に暮らせても…本当に必要な時に助けられないなんて役に立たない。ただ同じ家に帰ってきて体調の悪い彼女を寝かせるために霊感(インスピレーション)を押し殺して、「寝よう」と声をかけるのが最近の日課になりつつある。
今日は、珍しくなまえが『Knights』の収録チェックにくる予定で、一緒に帰れるかな。やっと、奥さんの役に立てると思っていたのに前の撮影が押して少し遅れてスタジオに入ると彼女はいなかった。
月永「あれ?なまえは?今日チェックでいるって」
凛月「ん〜仕事が入ったみたい」
朱桜「私も会えませんでした…。久しぶりのお姉様だったのに…」
鳴上「今日は次の仕事終わったら帰るって言ってたからレオくんも早く帰ってあげたら?」
月永「そうだな…そうする」
別にこういうことは少なくない。いろんな仕事をしている彼女が呼び出されて『Knights』が後回しにされることはよくあることだ。
だけど、今日くらい役に立てたらなと思ったのに…
ーー収録を終えて、家に帰ると部屋の電気もついてなくて少し不安になる。仕事が押してまだ帰ってきていないのかな?と思いながらペタペタの足音を鳴らしてリビングの電気をつけた。
案の定リビングには誰もいないただ気になったのは、なまえが今朝持って出た鞄がソファーに置いてあったこと…もしかして帰ってきてるのか?と思い、仕事部屋に風呂に…トイレも確認した。それでもいなくて、寝てるんだと察してベッドルームの扉をゆっくりと開ける。
なまえはいつもとは違いベッド全体を使って胎児のように丸まっていた。
月永「なまえ?寝てるのか?」
ゆっくりと彼女の顔がある方へ回ってベッドに腰をかける。するとなまえはゆっくりと目を開けた。
寝てなくて少し安心したけどやはり眠いのか目がトロンとしている。なまえの頭をあやすようにゆっくり撫でる。
『おかえり…』
月永「ただいま。仕事で呼ばれたんだってな」
『…うん』
あ…嘘ついてるな、なんて長年の経験でわかる。
聞いてほしくないことかどうかはいまだによくわからない。聞いていいことなのかどうかを悩んでいたら、なまえがおれの左手に手を重ねた。これは聞いてほしいやつだ。
月永「何かあったのか?」
『嘘ついた…。』
月永「うん…。」
『本当は仕事行ってない。ちがうところに行ったの』
月永「そうなのか?」
なまえはゆっくりと話しながらおれの手で少し遊ぶ。所詮恋人繋ぎに落ち着いておれの顔をゆっくり見上げる。
その顔は少し不安そうだった。
『レオはチビちゃん好きだよね?』
月永「ん?まぁ…嫌いじゃないな」
『好きか嫌いかで答えて』
月永「好きだな」
『うん…だよね?』
月永「急だな…話逸らされてる…?」
チビちゃんっていうのはなまえがよく撮影とか仕事とかで会う子役たちを指す言葉だ。ようは子供ってこと…だよな?
小さい頃も自分より小さい子のことをそう呼んでいたし、子供の総称という認識でいいだろう。
『子供は好き?』
違ったらしい、なまえのいうチビちゃんと子供の違いについて一度ご説明いただきたいところだが、その余裕は彼女にはなさそうだ。
月永「うん、好き」
『…赤ちゃん好き?』
月永「…え」
『好き?』
月永「好きだけど、待ってくれ。話が見えない」
『鈍感』
なまえは握ってた手を離して背中を向けるように寝返りを打った。えぇ…っと…どういう状況なのか、わからないけどただ何か言いにくいことを伝えたいたんだということは理解している。
でもわかってあげたいその内容が、わからないんだ。
月永「なまえ?どうしたのか教えて…?」
『仕事お休みしようと思う。』
月永「えぇ⁉︎そんなに辛かったのか!!?」
『…ちがうけど』
月永「病院は⁉︎最近体調悪そうだったもんな?病院行ったのか?」
『…行った』
月永「先生はなんて?」
『…できたって』
月永「え…?」
『だからぁ!赤ちゃんができた!』
背中を向けていたなまえが勢いよく起き上がった。顔は真っ赤で少し涙目だった。あぁ察し悪いなぁおれ…
『今日、凛月とナルちゃんに言われて産婦人科に行ったの!いつも行ってるところ!そしたら、眠気も気だるさも熱っぽいのも妊娠の初期症状なんだって!
…最近女の子の日も来てないし、むくみとかお腹痛いと思うこともあったし…思い返せばそういうことだったのかって感じで…っ…だからっ…ずっ…ずずっ…えーん!』
月永「えぇ!!!泣くなよ、どうした…?」
急に泣き始めたなまえの頭を抱きしめてゆっくりと撫でる。そういえば、妊婦さんはよく情緒が不安定になりやすいって聞いたことある。それなのかもしれない。
月永「待って…赤ちゃんできた…ってこと?」
『ん…そうだって言ってる…』
月永「…え…おれパパになるの?」
『…うん』
月永「…嬉しい」
『産んでいい?』
月永「もちろんだ!むしろ産んでくれる?」
『うん、レオとの赤ちゃん産みたい』
そう言って自分のお腹を撫でるなまえをまた抱きしめる。嬉しいけど戸惑いもある。こんな自分が父親になれるのかとか、赤ちゃんをちゃんと育てていけるのかとか…でも今は純粋に嬉しい。
月永「なまえの体調がそういう意味で悪いんだってわかって少し安心したし、赤ちゃんができて嬉しいし…でも親になるって不安がある」
『……私もそれは同じだから1人で悩まないで…もっと一緒に悩もう。2人で出した答えの方がこの子も嬉しいんじゃないかな』
月永「うん…ねぇ、なまえ」
『なに?』
月永「おれと一緒にその子の親になってくれますか?」
呼び慣れた名前を捨てて
『もちろんだよ、“パパ“』
おまけ→