君を見つける
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ライブの開始は華やかで司の流暢な英語から始まり、それが聞こえた瞬間に会場は黄色い歓声に包まれた。音楽が流れるたびに心臓が震える。『Knights』が現れた時の高揚感は何者にも代え難い。
聞いたことがある音楽が、今までに聞いたことのない感覚で自分の中に流れ込む。
ライブの開始からどのくらいたっただろうか。
波のようにうねるペンライトの光に、それを促すようにメインステージのライトも激しく変化する。
曲によって、色や動きが変わるのが目まぐるしくも心地いい。私の見たことのない大勢の力がライブを盛り上げる様子が美しくて鳥肌がたった。
それからステージの真ん中で『王さま』らしくなった末っ子が少し大人っぽくて少し心がくすぐったくて、頬が緩んだ。
他のみんなも少し会わない間に壁を乗り越えて前よりいい眼をしていると思えた。容姿が変わったわけでもない、何かが大きく変化したわけではない。ただあの頃一緒に過ごした彼らはもう道を探して迷っていた子達じゃないと感じた。そこにいたのは、もう1人で歩ける、立派な騎士たちだった。
ボーッと見ていると、花道を歩くメンバーがここぞとばかりにファンサービスをしている。
手を振れば悲鳴が聞こえるし、投げキスをすればフラッと倒れそうになる人だっている。舞台袖にいたら見れない景色だった…
眺めていると、霊感(インスピレーション)が湧いてきた。私じゃない人がプロデュースしたライブ。私だったら、こうするとか無意味なことを考える。このライブだって最高じゃないか、5人のアイドルが何百人何千人を湧かせるこの状況を最高と言わず何という。
でも、私の方がもっとこの5人を輝かせられる。もっともっとお姫様に幸せを与えられると思うと、このライブに関われなかったことを悔しくすら感じる。
そんな言葉にし難い感情を胸の中でグルグルさせていた時だったーー
月永「みんなありがと〜♪次が最後の楽曲だ!」
レオの声をきっかけに…
月永「聞いてくれ、『Grateful allegiance』」
音楽が流れる。あの時、誰もいないライブ会場で初めて観客席から見た曲…
どこかの音楽バカが音楽バカに送った、ドロドロに甘いラブソングも気づいた時には会場の女性全てを魅了する曲へと姿を変えていた。
いつもはあんなに近くにいる彼がこんなにも遠くに感じることがあるなんて、心が少し冷たくなる。
何となく会場にとどまれそうにない…なんて少し苦しい気持ちを落ち着かせるように深く息を吐いたその時、花道を歩いていた『彼』とバチりと目があった。
まるで、電流が走ったように絡み合った視線が外されることもなく彼は少し固まる。そして、大好きなペリドットがこぼれ落ちるほどに大きく見開かれる。
『あっ…』
見つかった、「私を見てる!」と騒ぐ後ろや隣の女の子たちには申し訳ないけど確実に私だ。
そうであってほしい、なんてファン心理なのかもしれないけどこの多くのファンの中で私を彼が見つけられるのかはいささか疑問である。
曲中ということもあり、彼は少しこちらを見た後に歌へと戻る。
苦しかった気持ちが少し楽になった。見つかっていたとしても、そうじゃないとしても彼が見てくれただけで何故かさっきまで胸の中をグルグルしていた謎の感情がスッと消えて今は目の前の彼らに集中できる。不思議だ…後輩の言葉を借りるようだけど魔法にかけられたみたいだ。
月永「愛を込めて〜♪」
突然、メインステージにいた彼が花道を駆け抜けて私がいる席に1番近い場所までやってくる。そして、指をさしておまけにウィンク付きで愛を込められた。
私の周りは「キャー!」と悲鳴が聞こえて続きの歌詞がかき消される。驚いた顔をしたメンバーが待つステージに戻ろうとする彼はまた私の方を見てから駆け抜けた
心臓がいくつあっても足らない…
最後の曲が終わって、それぞれが挨拶をする準備をする。1人ずつ挨拶をして最後に残された彼が一歩前へ出る
月永「今日はみんな来てくれてありがとう〜!
今日も最高のライブができたと思う、おれたちの大事な仲間の誕生日を大事なファンのみんなと祝えたことも…無事にツアー終了日を迎えられたことも嬉しく思うし、支えてくれたファンのみんなやスタッフ、そしてプロデューサーには感謝してもしきれない!
だから、またみんなに会うためにこれからももっとも〜っと応援してくれ!そしたらまたみんなに…お姫様に会える!そしたら必ず『おまえ』を見つけるから…♪」
そう笑ったレオは一点を見つめて笑った。また私の周りが声をあげる、だんだんと怪しく思ったのか「今日レオくんこっちばっかり見てくれるくない?」「知り合いでもいるのかな?」なんて疑うような声があがり始めた。
最後にメンバーがお辞儀をしてステージを後にした。ペンライトが波打って『もう一回』を求める。その掛け声のリズムが心地いい、さっきまであんなに気持ち悪かった気持ちも今では体に馴染んでる
『思い立ったら吉日…ね…』
そう呟いた言葉は、観客の掛け声にもみ消されていったーー
君を見つける
だから貴方から目を離せない
おまけ→