貴方のものになった
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実は私みょうじなまえ、あの人気アイドル朔間凛月と結婚して本名が朔間なまえになりまして…
まもなく二ヶ月ほど経過しようとしています。
芸能活動をするなかで同じ名前でいたいという私の意思を尊重してもらい、芸能界ではみょうじなまえのままという…なんとも不思議な生活にも慣れ始めた今日この頃…私はとんでもないことを思い出してしまいました。
『凛月の誕生日…』
そう、愛しの旦那様『朔間凛月』の二十数回目の誕生日が近づいていることを結婚イベントを終えて目まぐるしいこの二ヶ月すっかり脳みそから抜け落ちていました。
ではなぜ、思い出したかというと彼の趣味である紅茶サークルの後輩紫之創くんと先ほどまでお仕事をご一緒でその時にした会話がきっかけでした。
ーー回想
紫之「なまえさん!今月は凛月先輩の誕生日ですけど、お二人はご予定あるんですか⁉︎結婚して初めての誕生日ですもんねっ!そういうのって…ドキドキしますね…!」
『…えっ……凛月の誕生日…』
ーー終了
あの時の場の空気の凍りようは長い芸能人生でも初めて味わった。紫之くんは青ざめた顔をしてその場を走り去ってしまい、私は固まることしかできなかった。
その時の会話で思い出した凛月の誕生日、いつかの瀬名さんの誕生日のようにESビルでパーティーが開かれるもしくは『Knights』の皆さんでお祝いをするのでは…?と思いつつも、やっぱり新婚であることを考えて祝う時間を与えてくれるものなのだろうか。
なんなら、私より零さんの方がお祝いしたいだろうし…
正直、当日は1日いないものだと思って考えないようにしていた節もある。けれど、よくよく考えてみれば付き合っても間もないし、結婚しても間もない私たちにとっては貴重な誕生日という記念日なのだから大切にしなければいけないし、忘れてはいけないイベントであった。
猛省した私は、約一週間前から動き始めていた。
凛月の身近な人に彼の欲しいものや予定の確認をして調査して…、慌ただしい一週間を過ごした。もちろん、自分の仕事の合間に
そして、私は準備した。準備して準備して…完璧な計画まで立てた。けど、彼を祝うことばかりを考えて彼自身に伝えることを失念していた。
彼の誕生日前日、お風呂上がりののんびりタイムにちょっと確認のため彼に「明日の予定は?」と何気なしに聞いてみると…
凛月「明日?えっと仕事だけど」
『…まじか…』
そんな彼に普段は口から出ない言葉が溢れた。
彼はそんな私を見てそれこそ「え?今なんて言った?」みたいな驚き顔で私を見た。
『凛月…明日仕事なの?』
凛月「うん、朝はライブの稽古で昼からバラエティーの収録、夜はラジオの収録と雑誌の撮影」
『忙しいんだね…』
凛月「まぁ、一応人気アイドルだからねぇ」
私も一応!人気女優だけど!貴方のために!休みをとったの!……なんて彼に直接言えるわけもなく心が泣いているのを感じながら彼に誤魔化すように笑った
『そっか…えっとお仕事頑張って…』
凛月「ありがと…♪ふぁあ、ふ…そろそろ寝ようかなぁ…」
『あ…私やることあるから先に寝てて…』
凛月「じゃあそうするね?おやすみ、夜更かしはしないようにね」
『あはは…凛月には言われたくないけど』
そういうと「それはそうだね」と笑って凛月は寝室へと消えていった。私は、自分の計画性のなさに情けなくなって座っていたソファーに足を乗せて体を丸めた。
なんて情けないことか、彼の誕生日を忘れるし…かと思えば計画を伝えず彼は仕事を入れてしまった。
きっと私がうまいことできていれば、今頃彼は仕事を休んでぐっすり寝て…一緒に出かけて…ディナーを食べながらプレゼントをあげて……
『ううぅ…ぐず…ぐず…』
情けなくて情けなくて、目から涙が溢れてくる。どうしてこうもうまくいかないものだろうか。友達へのサプライズでもここまで上手くいかなかったことはない
ただ彼に喜んでほしかった、彼と誕生日という特別な時間を共有したかった。それだけなのに…
考えていると、不意に携帯がピピっと音が聞こえ顔を上げる。着信の画面とそこには『Knights』の女王様こと紡さんからだった。
『もじもし…』
紡「うわっ…なまえちゃんどうしたの?その声…」
『紡さん…私…自分が情けなくて…』
紡「…落ち込んでいた時に電話してごめんね?」
『いえ…ズスっ…用事が…?』
紡「なまえちゃんじゃなくてね?凛月に連絡したかったんだけど寝てるのかな?」
『はい…明日の仕事のために寝ちゃいました』
紡「そっかぁ…もっと早く連絡すればよかった…」
『どうしたんですか?起こしましょうか?』
紡「いいよいいよ、珍しく早寝してるから起こすのも申し訳ないし、明日の仕事全部バラしになったのだから、明日起きたら伝えておいてくれる?」
その瞬間、さっきまで落ち込んでいた気持ちが一気に浮上する感じがした。神様はまだ私のことを見捨ててない…!まだ私にやれと言っている!
『了解です!凛月に伝えておきますね!ありがとうございます!』
紡「ふふっ、ありがとう…?よろしくお伝えください〜」
通話が切れたことを確認して私はガッツポーズをする。私はもし自分より早く凛月が起きた時のためにテーブルの上に書き置きをして私も彼のいる寝室へと入る。すると、寝たと思っていた彼は起きていて携帯を見ていた。
凛月「やっほ〜」
『凛月…起きてたの?』
凛月「通知音が聞こえてさぁ…いい安眠妨害だよねぇ」
『じゃあ…』
凛月「明日の仕事なくなっちゃった…♪」
凛月は明るい画面をこっちにフラフラと揺らしながらニヒルに笑った。
凛月「俺明日仕事なくなったんだけど?なまえは?」
彼は本当に意地悪だ。もしかしたら偶然なのかもしれない…本当に偶然明日の仕事が全部キャンセルになってオフになっただけかもしれない。でも、彼の表情を見ると意図的なのかとも思う、仕事を入れて私が絶望した表情を見るのを目的にしていたかもしれない、そういうことをする男だ。彼は…
『私も…オフ…』
凛月「じゃあ久々にデートでもしよっか♪」
『ホント…?せっかくのオフなのに休んだっていいんじゃ…』
思ってもないことが言葉になる。数分前の私は彼を連れ回す気満々で…なのに彼の予定を知って全てを諦めて…
凛月「いいよ、でも俺がエスコートさせて?なんかそういう気分なんだよねぇ〜」
『え…』
まぁ彼には私の計画なんてきっと知られてないわけだから、そういう話をし始めるのはおかしい話ではない。でもまぁ彼の誕生日なわけだし、彼の我儘に付き合ってもいいと思った。予約したディナーは、キャンセルして…他は予約しているわけでもないしいいとしよう。
よし、この一週間のことは水に流して明日は彼にされるがままになって、最後にいい雰囲気になったらプレゼントを渡せば完璧だ…うんきっと完璧…。
『うん…デートしたい…』
凛月「やったぁ〜じゃあ明日ね。おやすみぃ〜」
そう言って彼は半分空いたベッドに潜り込んだ。待ち合わせも何も決めていなくて唖然とする私と既に寝息が聞こえる凛月なんてシュールな空間に少しムズッとした。
『……』
私は大人しく凛月の隣に寝転がって目を閉じた。夏から秋に変わっている気候でまだ服装に悩む頃、明日どんな場所に行くのかどんな服装をすればいいのか分からなくて…少し眠れないでいたら、凛月が寝返りをうって私と同じ向きに寝転ぶ。私を抱き枕にするように抱きしめるから凛月の熱が伝わって暖かくなって眠気が襲ってきた。
もう明日考えよう…
そう思って目を閉じた。朔間凛月誕生祭前夜のことだった。
前夜
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