恋を諦めた時
NameChange
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
君と過ごした時間は今までに味わったことのないほど豊かな時間だと感じた。
どの『世界』でもなまえちゃんの書く音楽は人を惹きつけた。思考は違っても、才能は変わりない…
その歌を僕が歌えることがどれだけ名誉なことか、『fine』がその歌を歌って評価されるたびに、これがなまえちゃんが本当にいるべき舞台なのだと自信さえ湧いた。
なまえちゃんとの関係も良好だし『五奇人』との交流も避けさせることに成功した。
まさに完璧な世界だと思えるほどに...さすがに月永くんが去ってしまった時は悲しそうな顔をしていたけど、仕事とプライベートを完全にわけた彼女は完璧な存在だった。
瀬名「あんたはなんとも思わないわけ…れおくんがあんなになって…それでも天祥院といる意味ってなんなの」
『なんとも思わないわけじゃない…けど英智くんは…『私』を必要としてる。レオには泉がいるけど英智くんには『私』しかいないの…
それに英智くんのおかげで私はここにい続けられる。『Knights』とも関われてる…』
瀬名「じゃあもしアイツが『Knights』と縁を切って専属になれって言ったらどうするわけ…」
『それは…わからないよ。言われてないし、でも英智くんは私の意見を尊重してくれてる…』
瀬名「なまえ…気づいてないの?あんた洗脳されてるよ…天祥院はれおくんを壊したんだよ!?あんたの大事な大事な幼馴染を壊した奴になんでそんなに忠誠を尽くせるわけぇ⁉︎」
『…わかってないのは泉だよ!壊れたんじゃない!レオは負けたの!勝負に負けたのを壊れたなんて表現しないで!レオは戻ってくる。絶対戻ってくる…そのためには英智くんの革命を終わらせる必要があるの…』
瀬名「あんたは…天祥院のこと…」
言い合う声を聞いたのは、昨日の放課後のことだった。その後の言葉はタイミングの悪いつむぎのせいで聞くことは叶わなかった。
けど瀬名くんの言う通り彼女は僕が思っている以上に僕に心酔していた。そして、僕も彼女に心酔している。
彼女が言っている通り僕には『彼女』しかいない、逆も然りだと思いたいほどに…、ここでの彼女は完全に僕側の人間だ。
月永くんも去って、もうすぐ『五奇人』の討伐も終わる。そうすれば、君と本当の『fine』を築こう。そして、瀬名くんが言っていたように『fine』の専属になってもらおうかな…。
この『世界』なら神様も認めてもらえるかな…僕は正しく導けているはずだ…。
天祥院「なまえちゃん」
『英智くん…』
『革命』を終えて、『fine』が解散した。もともと、凪砂くんや日和くんとはそういう契約だったし…この別れは何度も経験したからそこに感情は揺らぐことはない。けど君は違った。
天祥院「彼らがいなくなって寂しいかい?」
『寂しい…うん、寂しいかな。彼らは才能もあったし人柄も良かったから変人だとは思ったけどね。仲良かったぶん、別れは辛いって感情は湧くよ』
2人で学院の屋上でベンチに座る。夕陽に照らされた彼女の髪が宝石のようにキラキラしていた。初めてみる彼女の苦しそうな表情に僕の心もチクリと痛む。それと同時に、彼女への気持ちに気がついてしまった。
天祥院「大丈夫だよ。君には僕がいるから」
『えっ…』
天祥院「『革命』が終わったら伝えようと思っていたんだ。僕は君が好きだよ」
そう大好きだ。君が笑う姿も悲しむ姿も…どんな姿も自分のそばで支えてあげたいと思うほどに君は素敵な女性だ。
驚いた顔をしてこちらを見る彼女の顔にかかっている髪の毛を耳にかける
天祥院「君は素敵な女性だ。仕事にも一生懸命で人の笑顔を連鎖させるような笑顔にどれだけ救われたことだろうか。」
『な…何を言ってるの英智くん…恥ずかしいから』
そっと置かれたなまえちゃんの手に自分の手を重ねる。髪の毛に触れた手を頬に持っていく。赤くなった頬が可愛らしくて口元が緩むのを感じた。
天祥院「でもね、君は僕が本当に好きな『みょうじ なまえ』ちゃんじゃない」
『えっ…』
天祥院「僕が好きなのは幼馴染である月永レオを一途に想って彼の育てた『Knights』を心から愛し一生懸命ななまえちゃんだ。つまり、僕が好きなのは月永くんのことが好きな君だったんだ。
なんせこれは僕が見てるとんでもない悪夢だからね」
『…そう、私はね好きだったよ。英智くん』
そう言って笑ったなまえちゃんが背中の夕陽に溶け込むように消えていった。
自らの手に残った感覚が失われるのをただ見ていることしかできなかった。そして、消えゆく君を見ながら噛み締めるように目を閉じた。
どうか、僕の初恋の『君』を返してーー
『天祥院くん!起きて!』
僕の体を揺さぶりながらかかる声に苦い声を漏らしながら重たい瞼をこじ開ける。
『いくら生徒会室が環境が整った最高の施設とはいえ、病弱な貴方が寝てたら蓮巳くんが倒れるよ?』
天祥院「…なまえ…ちゃん…」
『体調は平気?ただのうたた寝…?』
天祥院「ここは…?」
『貴方の城よ…依頼書が溜まったって言うから取りに来たらこれなんだから…心臓止まるかと思った』
天祥院「それは…悪いことをしたね…」
どうやらうたた寝していたようで、座り慣れた生徒会長の椅子に座り直す。どうやら長い夢を…
『天祥院くんなんか寝不足だったの?』
天祥院「どうしてそう思うんだい?」
『昨日会った時より顔色がいい気がする。』
天祥院「…そうだね、いい夢を見たんだ」
『へぇ…皇帝陛下もいい夢を見るんだね。』
天祥院「…僕だって夢くらい見るさ」
『それで?どんな夢だったの?顔色が良くなるくらいいい夢だったの?』
天祥院「……ふふ、知りたいかい?
僕の初恋が終わった話をーー」
そう呟いた僕に君はあの時と同じ少し苦しい顔で笑った。
恋を諦めた時
『そんな幸せ(悲しい)夢を見たんだね』
.