羽風薫
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3年生も卒業間近の冬、
返礼祭という一大イベントを前に俺は一緒に遊んでくれてた女の子達に別れを告げ、ひどい時は一方的な暴力をふるわれたりもした…
それでも、別れを告げるのは俺のこれからを俺なりに必死に考えた結果だった。
そんなことを考えながら、暖かいカフェでカフェオレを飲みながら人を待つ。寒そうな外で、肩を寄せ合って歩くカップルをみて微笑ましく思っていると、俺の待ち人が店内に入ってくる。走って来たのか息を切らしながら俺のもとへとやってくる。
『薫くん、ごめんね。遅くなっちゃった…』
羽風「なまえちゃん、俺も今来たところだよ」
彼女はみょうじ なまえちゃん、正真正銘俺の彼女だ。
一息ついた彼女は学校指定コートを脱ぎ、彼女のおかげで見慣れた紺色のブレザーが姿を現す。
羽風「なまえちゃんは、ホットココアかな?」
『うん、ありがとう。薫くん』
そう微笑む彼女に心があったかくなるのを感じる。
コートとカバンを隣の席に置いて座る彼女を尻目に店員さんに注文をとってもらう。すぐお待ちしますと返事をする店員さんに笑顔を返し、目の前の席に座った彼女を見る。
彼女と出会ったのは2年生の時、手伝っていたライブハウスで、ある日友達に連れられてやって来た彼女に俺が声をかけたのがきっかけだった。
最初はひどく警戒されていたが、偶然出会って俺には珍しくお茶もせずに家まで送る。またばったり会って家まで送る。その繰り返しをしているうちに本気の本気になってしまい、意を決して彼女に告白すると真っ赤な顔をして彼女が頷いてくれたのがまだ記憶に新しい。
『なぁに…?そんなに見て』
羽風「いや…告白した時のこと思い出しちゃって…あの時頷いてくれたなまえちゃん可愛かったなぁって、もちろん今も可愛いんだけどね♪」
そう話すと彼女は照れた顔で『やめてよ、昔のことなんて…』と小声で言う。
彼女の萌え袖になっている手元には先ほど店員さんが置いていったホットココアがあって、それを彼女がコクリと飲み込んでいく。
ホッと一息つく彼女が真剣な顔でこちらを見る。
『最近、女の子と遊ぶのやめたんだね』
羽風「え…あ…うん、練習もあったし…会えなくてごめんね?」
彼女は俺が女の子と遊ぶことをなんだかんだ許容してくれていた。『最後に薫くんが戻って来てくれるのが私のところなら大丈夫だよ』と言ってくれるほど寛大な心の持ち主だった。
それに加え、今はイベントが重なって会う時間は昔より激減していたのは事実だった。
だからそんな彼女が『薫くんに会いたい』と連絡をくれた時はニヤケが止まらなかった。
そんなつい先日のことを頭に浮かべていると、彼女が少し黙ってから口を開く
『やっぱり、遊んでた女の子ともう遊ばないって友達が言ってて…そろそろ自分の番かなって』
羽風「…え?どう言うこと」
暖かい心が一瞬で冷え切っていくの感じる。
彼女は何を言っているのかな、いったいなにを言いたいのか…
『友達からアイドル活動に専念したいから女の子と遊ぶのをやめてるって聞いた…だとしたら、私もいつか会うのをやめようって言われるのかな…って、でも薫くんに別れようって言われるのを想像したら…私涙が止まらなくて…だったら…自分から言おうと思って会いたいって言ったの…
だから、薫くん別れよう…?』
泣きそうな彼女と、呆然とする俺と…冷めてしまった俺のカフェオレ…湯気まだ纏っている彼女のココア…
静かなカフェのBGMが俺の脳内には大音量に聞こえた。
なまえちゃんと別れる…?
なんで、なんでなまえちゃんは泣きそうな顔で俺のことを見ているんだ。拭ってあげなきゃ…なまえちゃんの涙を…
伝えないとはっきりと…
羽風「どうして、他の子と同じだと思ったの?」
『だって、薫くんは私と付き合ってからも女の子と遊んでた。友達に相談したらきっと私もそのうちの一人なんだよって言われて…だから…そうなんだって思ったし、それで良いとも思った…けど別れたいって言われるのも怖くて…』
あぁ…俺のせいでついに泣き始めたなまえちゃんを呆然と見つめる。俺が全部悪いんじゃないか。
自分の中では他の子とは違う扱いをしてきた、大切に大切に距離を縮めていった。この思いは彼女に届いている。そんなの俺の勝手な思い込みだったんだ…。
彼女には、ただの遊び人にしか写ってなかったに違いない。それなのに彼女は俺を捨てずにここまで一緒に…
『それに…』
羽風「…うん」
『アイドルの活動に専念したいってことは彼女なんていらないって思って…薫くんの邪魔にはなりたくなくて…』
羽風「…え?」
彼女はいつもいつもそうだ。自己犠牲なのか、我慢したがりなのか。俺のことを一生懸命に考えた結果だったと思うと、怒るに怒れない…
俺は本当に弱虫で怖がりだ…でも、ここで彼女を手放せるほど大人でもない…
羽風「なまえちゃん、俺別れたく…ないなぁ…」
『え…でも女の子たちと別れてるって』
羽風「違うよ、その子たちは別れるって言うような関係じゃないの。ただのお友達なの、好きな時に遊んで好きな時にバイバイする関係なの…」
『最低…だよ。それは女の子に…』
羽風「そうだねぇ…だから軽率に会うのもやめようって思った。それはこれからのアイドル活動って奴もあるけど、何よりなまえちゃんに申し訳なかったから…」
『え…』
驚いた彼女に俺も真剣に言いたいことを言葉に出していく。
苦手でも彼女ならきっと汲み取ってくれるはずだ。彼女なら…
羽風「前にUNDEADのライブ来てくれて、そのあとメンバーに会ったでしょ?その朔間さんに言われちゃってさ…あ…恥ずかしいから、内容は聞かないでね…?」
『う…うん…』
と言うのもライブに来たなまえちゃんを見て朔間さんが「可愛い子じゃな。薫くんにはもったいないのぉ…」とか言って俺がありえないくらいキレてしまって楽屋の空気が地獄になってしまったなんて言えない。それにそのあとに「あの子も同じ気持ちなんじゃないのか」と言われて彼女の立場に自分を立たせて見たんだった…
羽風「それで、すごくすごーーーく遅いんだけど、なまえちゃんの立場に立って考えたんだ…俺は嫌だった。
遊びでもなまえちゃんが他の男と一緒にいるの、楽しそうにしてるの。その時間を俺に頂戴ってなんども考えちゃってさ…」
『うん…確かに嫉妬はしてたかも…でも薫くんが最後に自分のところに戻って来てくれるのが嬉しくて…』
羽風「それはなまえちゃんが良いこすぎる証拠だよ。俺は嫌だった。だから…俺なりの答えだったんだ、他の女の子と遊ばないって言うか…そう言うのやめようって思ったの。だからなまえちゃんは…他の子とは違うんだよ?」
『そっか、そっか……嬉しい…けど私なんて…薫くんが思ってるような人じゃないんだよ…』
そういって流して雫を拭うなまえちゃん
思っているような人じゃないと言う言葉が引っかかる…。これ以上彼女は自分を傷つけることを言うのではないか、そんな不安と心配が自分の中に巡る。
羽風「それは、どうして…?」
『良い子なんかじゃないの…本当は嫌だったのかもしれないし、嫉妬していたのかもしれない、それでも我慢してた。何も言わなかったのは…無関心なだけなの…』
羽風「無関心…?」
『私…自分の感情がわからなくて…わかるのは目の前にある幸せとか嬉しいってことだけで…だから薫くんが他の子と遊んでも気にならないし、アイドル活動の為に会えなくても何も感じなくて…でも、薫くんのことは本当に好きなの…。』
羽風「じゃあ、嫌いとか興味ないってことではないんだね?」
『うん…』
驚いた。まず彼女がこんなに素直に感情を口にするのは珍しい。それに俺の知っている彼女はコロコロ笑うし、綺麗に泣く、愛ある言葉を吐けば顔を真っ赤にしていた。表情豊かな女の子だった。
それが感情が少ないと言われたら嘘だと思うしかなかったが、彼女の表情は真実を告げていた。
『だから、私じゃ薫くんを幸せにしてあげられない。そこに女の子たちと関係をきってるって聞いて良いタイミングだと思ったの…』
羽風「そっか…そう言う事だったんだ…」
今までの彼女の行動もその考え方を踏まえると理解できる点も多くあった。
でも、それと同時に彼女の別れ話がただ、女の子たちと離れたからと言う理由じゃなく、彼女なりの理由があると言うことがハッキリとわかってしまった。
『ごめんね、薫くん…薫くんのこと大好きだけど、だからこそ薫くんには幸せになってほしいの…別れ…てくれる…?』
彼女はまた泣きそうな顔でこちらを見る。
こんなに自分のことを思ってくれている女の子がいるのに、別れ話をさせてしまうなんて、何が色男だ。笑わせる…。
羽風「…やだ」
『え…』
羽風「やだよ。俺、なまえちゃんのこと大好きだもん。他の人なんて考えられない。」
こんなに彼女が思いを伝えてくれたんだ。俺もちゃんと答えるよ、聞いて?俺の気持ちも、勝手に進めちゃダメだよ
羽風「俺さ、こんな性格だから勘違いされるけど意外と一途なんだよ?
覚えてる?去年の夏に付き合ったばっかりで海に行ってさ。俺がサーフィンしてるとこ見たいって言うから一緒にやったじゃん?
その時になまえちゃんがうまく波に乗れなくて浅瀬なのに溺れそうになって俺が抱き上げたの」
『覚えてるけど…今そんな話…』
羽風「その時にさ、感じたんだ。この子だって、この子を幸せにしてあげたいってさ。それからずっと、なまえちゃんのことばっかりでさわかってるよ?意味言ってることがやってることと矛盾してるのは…
でも俺の幸せにはあの時からずっとなまえちゃんがいるんだ…」
『そんな話一度も…』
羽風「恥ずかしいから言えないよ…けど、なまえちゃんが自分のこといっぱい話してくれたから俺も話したいなって…」
付き合った時はただの好きって感情だった。けどあの時からずっとこの子と幸せになりたい。この子を幸せにしたいって思ってた。
羽風「俺はなまえちゃんのこと感情がないって思ったことないよ?なまえちゃんが笑顔になれば嬉しいし、泣きそうなら俺も悲しい…自分で読み取れないだけでなまえちゃんは十分感情のある子だよ。
わからないなら俺が教えてあげる。
俺がいっぱい幸せも喜びも楽しさも教えてあげる、あと本当は嫌だけど怒りも悲しみも…
俺がなまえちゃんを幸せにしてあげる」
『でも…私じゃ薫くんを…』
羽風「俺の幸せを勝手に決めないで」
そう強い口調で言うと今まで泣きそうだった彼女が驚いた顔をした。だってそうだろ、俺の幸せは俺が決めて誰かに語れて誰かに推し測れるものじゃない…
羽風「俺の幸せは、アイドルとして歌って踊ってファンの子を幸せにすること」
『うん…』
羽風「俺の幸せは、仲間に囲まれて笑い合うこと」
『うん』
羽風「それで、俺の最高の幸せはなまえちゃんと一緒にいること」
『…』
そうすると真っ赤な顔をした彼女の顔から滝のように涙がこぼれる…。愛されてるって気づいて、愛してるって知って…
ねぇ…なまえちゃん…
羽風「ねぇ…なまえちゃん」
『っっ…なぁに薫くん…』
羽風「俺の幸せにはなまえちゃんがいるんだけど、なまえちゃんの幸せには…俺はもういない?」
いないのであれば俺はもう諦めるよ…これ以上言ってなまえちゃんを苦しめたくないんだ、でもね、もしもまだいるなら…
『うんん、別れ話をしても、まだ薫くんとの将来で頭がいっぱいだよ。
私の幸せにもずっと、薫くんがいるよ』
そういった彼女の涙は今まで見たどの涙より美しくて綺麗だった
幸せの感じ方
「もう別れるなんて言わないでね?」
end.
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