月永レオ
NameChange
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私は、自分に自信が持てない。
いつもそう思ってしまう。
夢ノ咲学院声楽科、アイドル科に比べれば活動は活発ではないが年に数人は海外のオペラ劇場に進んだり、国内の有名な劇団などに引き抜かれたりされる。
加えて今年は優秀な生徒も多くすでに有名なミュージカルに参加した俳優や海外のオーケストラに歌手として呼ばれた子だっている。
そんな中で私はただ歌が好きという理由だけで入ったものだから、本気の人たちとの格差は歴然だった。
だから、その差を少しでも埋めるために学院の裏庭で歌のレッスンを続けていた。
いつも授業だけでなく発表会でも効果はふるわなかったのはやっぱり、実力がないからなのか…
『〜♪〜♪』
才能も実力もないけれど、入ったからには3年間はせめて向き合わないと、そう思って1年の時から毎日毎日裏庭に来ては練習をしていたある日。
秋頃の出来事だった、”彼”と出会ったのは
秋になり日陰が心地良くなって来たころ私はオペラにハマっていた。
もともと好きであったのだが、夏休みに見た劇団の『魔笛』が頭から離れなかった。
私は、運のいいことに声楽の世界でも貴重とされるレッジェーロを得意としているものだから、夜の女王は声質や癖が近いものがあった。
そう思いながらCDで好きなオペラ歌手の「夜の女王のアリア」に合わせて自分の歌声をのせる。
盛り上がった時に急にイアホンが何者かによって奪われてしまった
「お前!うまいな!」
『…へ…』
「でもモーツァルトってのがいただけない!もっと違うハイソプラノを聞かせてくれ!」
『つきなが…レオ…?』
そこにいたのは先ほどまで私がつけていたイアホンを自分の耳につけている最近まで不在だった”Knights”のリーダー月永レオの姿だった。
驚いた私が名前を呟く彼は太陽のようなオレンジ色の髪をなびかせながらこちらに改めて向き直る
月永「俺のこと知ってるのか?あぁ!待って言わないで妄想するから!想像を膨らませるから!」
『Knightsは声楽科でも有名なので、それに月永先輩は作曲もされるって友達から聞きました。』
月永「あぁ!なんで言っちゃうの!想像ごろし!鬼!悪魔!」
『それは…すみません…』
プンプンという効果音が似合いそうなほど先輩にしては可愛らしい表情で月永先輩は怒っていた。
けれど、話してる意味はよくわからなかった。
その意味は最近になって少しわかるようになった。
そんな出会いをしたのが秋頃の話で、
それからレオ先輩は放浪ののち声楽科の裏庭にやってきては私に歌のレッスンをしてくれた、それはアイドルとして歌う「月永レオ」ではなく作曲家の「月永レオ」の意見が大半で「俺は歌得意じゃないしなぁ」と零す彼にいつも苦笑いを向けていた。
歌が上手くないと、ダンスが上手くないと、アイドルなんて続かないと思うけれど、でもそれ依然に彼には作曲の才能があった。
才能がない私と違って、練習中も途中で作曲すると言っては私のルーズリーフに五線譜とオタマジャクシを書き連ねていった。
話しかけると怒るので横で大人しく見ているとたまにレオ先輩が楽譜になった部分を指差し「ここ歌って」というのでそこを音階に沿って歌うと「違うなぁ」とか「悪くない!」と感想を口にしていた。
その空間が数ヶ月という短い期間続いたが、私には濃くて暖かい時間だった。
その練習もあってか、12月の発表会には先生に褒めてもらえたし友達には表現が豊かになったと言われた。
歌手として、2月には市民団体の小さな劇団でオペラに参加させてもらう話が決まっていた。
そのことをレオ先輩に報告できないでいた。誰よりも早く彼に伝えたかったのに冬を迎える頃には彼はアイドル科でのイベントやライブで大忙しだと友達の話で聞いた。
冬に入り、寒さが現れた頃には私も裏庭で練習できず、彼も裏庭に訪れることもなくなっていた。
彼とは連絡先を交換していたわけではないし、秋頃にもすれ違っていたことは少なからずあったはずなのに、彼に会えない日が一ヶ月は過ぎようとした頃には、私の心には大きな穴が空いていた…
そんなある日のことだった。
1月ではたまにある我慢できる寒さの日に久しぶり裏庭へと足を向けた。理由はない。ただ今日は行かないといけないそんな気がしたから向かった。
レオ先輩と出会った木の下であの時聞いていた「夜の女王のアリア」を口ずさむ。
『〜♪〜♪』
あの時よりも音域が広がって声の圧を調整できるようになったからか、歌いやすさが前よりよくなったと感じた。
そうすると、裏庭の奥から最近聞けていなかった声が聞こえる
月永「モーツァルトじゃない曲にしてくれよ!久しぶりにきてモーツァルトを聞かされる俺の身にもなってほしい!」
『レオ先輩…』
冬の寒さを感じていた心が一気に暖まるのを感じた。
彼はその髪の毛と同じくらい太陽のような力でも持っているのだろうか。寂しいと思っていた気持ちが、穴が空いてる気がした心が一瞬で埋まって満たされていく。
『どうして…』
月永「なんとなく!けどなんかなまえに呼ばれてる気がしてさ!来てみたらあの時のように魔笛の曲歌ってるし、なんか不思議な気分だ♪」
『そう…ですか、』
月永「なまえは?寒いのに外でずっと練習してたのか?」
『いえ、私もなんとなく…外に行こうと思って…』
月永「そっか!じゃあお揃いだな!気があうな俺たち」
そう言ったレオ先輩は曇りない目で私を見る。
それをじっと見つめ返しているとレオ先輩が私の横へとやって来て寒そうにしている草の上に座って私の足元を叩く。
「まぁ座れ」って感じなのか、笑みを崩すことなくこちらを見てくるので、それに従って私も草の上に腰掛ける。
すると、先ほどまで笑顔だったレオ先輩がスッと真剣な表情へと変わる。
月永「実はさ、なまえがいたら話そうと思ってたことがあるんだ…。」
『なんでしょうか…?』
月永「俺さ、なまえのことが好き」
『…へ…』
月永「出会って短いのに、って思うか…?」
『ま…まぁ…』
レオ先輩は今、私に好きと言ったか?
寒空の下で私の体は湯たんぽのように暑くなっていくのを感じた。
好き、というのはLOVEなのか、LIKEなのか…
レオ先輩はよく「愛してるよ!」とか「大好きだ!」と声を大にしていうが、表情から見るにちゃんと伝えたい感情なのだろうから茶化すのはやめよう…
月永「実はさ…一目惚れ…?なんだ」
『えっと…なんで疑問形なのでしょうか…?』
ふはっなんだその敬語と真剣という糸が切れたのレオ先輩は笑い出してしまった。でも私もまさかレオ先輩にそんなことを言われるなんて予想もしてなかったので混乱中なのだ。
月永「はじめて会った日、実はいつもみたいに曲を作ってたんだ。いつもは自分の頭の中を流れる曲しか作曲中は聞こえないのに、歌声が聞こえてさ、しかも大っ嫌いなモーツァルトの曲!
でも、綺麗な声だった。その声を聞いて妄想が膨れ上がった。けど声の主を知りたくて、そしたらお前がいた」
『そうだったんですか…』
月永「その時、初めて天女を見た男の気持ちがわかった気がした!だから羽衣を盗む代わりにお前からイアホンをとって声をかけたんだ!」
興奮気味に話すレオ先輩に私は驚きを隠せない。そのころは私は1年から続けている練習も身を結ばず、くすぶっていたただの落第生だ…
レオ先輩がいう天女なんて、言われるような存在じゃなかった。
そんなただ聞くだけになっている私にレオ先輩は話し続けていく
月永「なまえと出会う前さ、俺もいろいろあってやっとまともに曲がかけるようになって来たときに、お前と出会って…
いるのかは知らないけど神様がご褒美をくれたような気がしたんだ♪もっと頑張れよって!だからお前のこといっぱいサポートしたし、サポートした分俺も曲がいっぱい浮かんで来た!感謝しかない!
お前は自分に才能はない、っていうけど俺からしたらなまえは才能の塊だ!だからそんな卑下してほしくない!
頑張ってる姿とか、結果が出て喜んでる姿を見てると俺の世界まで輝いて見えた!
そう思うとさ、お前のことどんどん好きになっちゃって…」
『ありがとうございます…レオ先輩がそんな風に思っていたなんて…でも…だったらどうして最近はここに来てくれなくなったんですか…?』
そういうとレオ先輩は考えるポーズをして小さく唸った。
答えにくいことだっただろうか、でも知りたい、忙しいはずなのにこんな所に足繁く通ってくれたいたレオ先輩がパッタリと来なくなった理由を…
月永「んんーー理由っていうと恥ずかしいんだが…ユニットの活動が活発になって練習に参加しないといけないことが増えたっていうのは大きい…。
一生懸命頑張ってるなまえにみてほしかったんだKnightsとして活動している俺を、作曲家として活動している俺を、
いろんな俺を見せて俺を好きになってほしかった」
『そんな…一言言ってくれれば、ライブもドリフェスも見に行ったのに…』
月永「ダメダメ!自主的に来てくれることに意味があるんだ!それに言えるわけないだろ!お前のために曲を作ったから見に来てなんて!」
『…え』
月永「あっ…」
お互いの顔が真っ赤になって、一瞬目があってお互い逸らす。
つまり、レオ先輩は私にKnightsの活動を見てほしかった反面、恐れ多くも私の為に書いた曲がKnightsの楽曲になっていてそれを聞きにきてほしかった。だから一段と練習に専念しつつ曲を作り続けていた。ということだ…
月永「そのくらい好きなの!でもなまえはあまりアイドル科に興味ないし、Knightsの曲になったらそれはKnightsのものになってしまうって気づいた。」
『そう…ですね。』
月永「だから歌じゃなくて、言葉にしにきた!」
『もし…今日いなかったらどうしたんですか?偶然今日はいましたけど…』
月永「またお前の為の曲をKnightsの曲にしてた!それでもうここには来ないようにしようと思ってた!」
なんとも潔い声でレオ先輩は言った。
こんなに気持ちを伝えられたら私もはっきり言葉にしないと…そう思って口を開く
『私も…言葉にしてもいいですか…?』
月永「うん」
『まず、綺麗な声って言ってくれてありがとうございます。あの日私のイアホンをとって声をかけてくださってありがとうございます。
練習を見てくれてありがとうございます。
実は、成績は格段に上がったし先生にも友達にも褒めてもらえることが増えました。
それと今度舞台に立ちます。市民の小さいものだけど…役もメインどころ…です
それもこれも先輩のおかげです。先輩が褒めてくれて、アドバイスをくれて、応援してくれたからできたことです。全部全部感謝します。』
月永「おぉ…どれから言っていいかわからんけど、全部お前が頑張った証拠だぞ!おめでとう!」
一気に喋った私に苦笑いしながらレオ先輩は頭を撫でてくれた。
頭に置かれた手はしっかり重みがあって男性の手をしていて、そして何より暖かかった。
月永「舞台見に行く。楽しみだ♪」
『はい…それで…先輩
私は先輩と出会えてよかったと思っています。
それは歌のこともですけど、何より先輩という人を私も好きになってしまったから…』
月永「好き…?ほんとか?本当にほんとか!言わされてないか!?」
『最後まで聞いてください!
私、あの時学科内ではかなりの落ちこぼれで才能なんてなかったんです。本当に…
でも先輩が褒めてくれて自信も出て、表現も豊かになったし、感情がいっぱい増えました…。
不安になって困ってると必ずここに先輩が来てくれて安心させてくれました。
会えなくなって、先輩のことを考えて寂しくなって…心に穴が空いたみたいになって…
だから今日先輩に会えて先輩が私が呼んでる気がしたって言われて嬉しくて…っわわ!』
だんだんと想いが溢れてしまい言葉に詰まっていた私を、レオ先輩が抱きしめた。
その力は思っていたより強くて胸が苦しくてレオ先輩の肩をポンポンと叩く
それでもレオ先輩は離してくれないようで…私の言葉を遮り話しだす
月永「充分だ!嬉しい!なまえ!大好きだ、愛してるよ♪
どうしよう!霊感(インスピレーション)が溢れ出しすぎて逆に何書いていいかわからない!」
『レオ先輩…はい、私も大好きです…』
月永「俺これからもなまえに負けないくらい頑張る!そして…
俺がもっともーーーっと有名な作曲家になったら、お前の為にすごいオペラを書き上げる!だからその時は…その時はいつかーーーー、
いつか俺のオペラを歌って!」
そう言ってレオ先輩は勢いよく私に口付けをした。
きっとその時が来たらお願いするのは私の方なのに、それでもなぜか彼が「歌ってくれ!」と言っている姿は容易に想像できた。
離れた唇に寂しさを感じていたらレオ先輩はこちらを見てニッコリと笑いかけたので私もこの幸せな気持ちが伝わるようにレオ先輩に笑いかけた。
2人でいつか来る夢を追い続けようとこの時、彼に誓ったーーーーー
君の声に導かれて
『あの時天女に会ったのは私もだったのかも知れない』
end.
1/2ページ