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卓の子SS

リイタス

貴方は萌えが足りないと感じたら『菜の花畑のなかでおいかけっこをしているリイタス』をかいてみましょう。幸せにしてあげてください。
https://shindanmaker.com/524738

♦♢♦♢

「すげぇ……!」
一面の黄色を移したタスクの赤い瞳の輝きを見て、連れてきてよかったと心から思った。

俺もエミルも最近は忙しく、同じ社内でも二人で会う時間をなかなか取れずにいた。そのうえタスクにはここ暫く会えていない。だからだろうか、朝一で「今日は相談室お休みデース」なんて棒読みで自分の元に来たタスクを連れて会社を飛び出してしまったのは。

「花畑……菜の花畑に行きたい」
どこか行きたいところはないかと問いかければ、いつもの嫌味や素っ気ない言葉ではなく、1番に返ってきた素直な言葉に喜びを隠せず、直ぐに1番近い菜の花畑へ車を走らせた。

いつもの生意気さはどこにやったのかというくらい、今日のタスクは素直だった。菜の花畑を見てぽそりと感想を呟いたかと思えば、駆け出す姿はいつも以上に可愛らしく思えた。今日は平日で、自分たち以外の客は誰もいない。ほぼ貸切状態になっていた。
俺はゆっくり後を追って歩いていたが、突然タスクが花畑の真ん中で立ち止まり空を見上げる。その姿がとても絵になる。鮮やかな黄色に囲まれている少し淡い金色の髪、少し褐色の肌。俺を見つめる綺麗な赤い瞳が景色に映える。
だが、タスクの瞳は今まで見たことの無い、悲しみを含んだ瞳をしていた。その瞳を見た途端、綺麗だと思っていた景色が一変する。
淡い金色が、紅緋の瞳が、菜の花畑に消えてしまいそうな……そんな気がした。
無意識に駆け出していた足を止めることもせず、タスクの元を目指す。それに気づいたタスクも自分と同じ方向に駆け出す。
「なぜ逃げる」
「お前が!いきなり!追っかけてくるからだ!バーカ!!」
距離は徐々になくなる。腕を捕まえるとそのまま引き寄せ抱きしめる。
「いきなりなんなんだよお前……人いたらぶっ飛ばしてだぞ」
そう言いつつも抵抗せず抱き締め返してくるのは、人がいないからか、素直だからか。
「お前が、消えてしまいそうな……そんな気がしてな」
感じたことをそのまま伝えれば、タスクの腕に少し力が入る。少しの沈黙が、花の騒めきを大きくする。
「……お前次第だな」
沈黙を破った言葉は予想とは大きく違っていた。
「だから、俺が消えそうで不安だってんなら、お前が俺の事捕まえてろよ」
「……俺はお前を離すつもりはない」
「だったらいいんだよ……俺もまだ消えたくねぇし」
唇に温もりを感じる。またお前は不意打ちを……
「腹減ったから飯食いに行こーぜ」
「ああ、そうだな」
「唐揚げな、唐揚げ」
菜の花畑を後にする。
消えてしまわないようその手を離さずに。


「お前、菜の花の花言葉知ってるか?」
「いや、知らないな」
「じゃあ後で調べて待っとけよ」
エミルがなんか考えてっからと呟いた横顔は幸せそうな顔をしていた。

いつも楽しく過ごせるのはあなたがそばにいてくれるから。
菜の花の花言葉は「快活な愛」
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