このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

貝の大空と大樹の精霊のお話


光が消えた後、残されてたのは額の左に不思議な形をした赤い宝石をつけたツナだけだった。
獄寺と山本にツナを部屋のベッドに運ばせ、ママンには疲れて寝落ちしただけだと伝えた。

「10代目は大丈夫なんすか……リボーンさん」
「ただ眠ってるだけだからな、大丈夫だろ」
「あぁ!やっぱりあの金髪ヤローのせいで……!10代目が!!」
「まー落ち着けって獄寺、小僧も言ってんだし大丈夫だって」
「てめーは10代目が心配じゃねぇのか!!」
「心配だけどよ……」

コイツらはツナに過保護なとこがあるからな……いい加減起きねーと面倒くさくなるぞ。
そう思っているとツナの手がピクリと動く。
目が覚めたか、そう思ったのも束の間、開いたツナの瞳は赤く光っていた。

「10代……目……!?」
「その赤い瞳……お前さっきの“精霊ラタトスク”か」
「……お前らには赤く見えるのか……そうだ、俺がラタトスクだ。今はお前らに事情を説明するために綱吉の身体を使わせてもらっている」
身体を起こしてベッドに腰かける。敵意がないのは間違いないな。
「てめー……10代目のお身体を使うなんてふざけんな!!」
「チッ……しょうがねぇだろ、今は綱吉にマナを分けてもらわねぇと死ぬんだ」
「じ、10代目のお身体で舌打ちしてんじゃねぇ!眉間に皺寄せんな!!」
「……うるせぇ」
ラタトスクが指で耳を塞ぐ、凄くわかる。
「だから落ち着けって獄寺、ツナが心配なのはわかるけどよ……」
「離せ野球バカ!!」
山本が獄寺を羽交い締めにして抑える。
「山本、そのまま抑えとけ。獄寺は静かにしてろ」
「了解」
「リ、リボーンさんがそう仰るのなら……」
俺はテーブルの上、ラタトスクの前に立つ。
「ラタトスク、説明してもらうぞ。お前は何者だ」
少し殺気を出しながら問いかけるが、ラタトスクはその殺気を感じつつも受け入れて答える。
「……信じるかはお前ら次第だが…………俺は精霊ラタトスク。この世界とは別の世界の精霊だ」
マナの在り方を考えるとこの世界には精霊なんて存在しねぇだろうな、そう心の中で呟くラタトスク。嘘はついてねーな。
「まあ普通は信じられねーだろうが……俺は信じてやる」
「ハッ……頭おかしいんじゃねぇのか?こんな得体の知れない存在を簡単に信じやがって」
「俺は読心術ができる。精霊の癖に簡単に読み取れるなんて人間みてーだな」
「……ヒトでいた時間は短くも長かったからな」
「そうか」
コイツにとってその“ヒトでいた時間”ってのは大切な時間だったんだな。
「話を戻す、俺はこの世界の意志に呼ばれた気がしてそのまま身を預けたらこの世界に辿り着いていた」
「世界の意思だと?」
「そんな気がしただけだ。そして、この世界には精霊の糧となるマナが存在していなかった……いや、存在はしている」
「それがツナにあったと」
「少し違うな……この世界のマナは、ヒトの命として存在していた。綱吉はそこらのヒトよりも膨大なマナを持っていた、だから契約をしてマナを分けてもらうことにした」
「……それは寿命を縮める事になるんじゃねーのか」
「一般人ならな。……お前らのマナもそこそこデカいが、綱吉は……マナを大量に生み出すことができる。それこそ俺らが貰ってもなんの問題もないくらいにな」
「だからさっきのデメリットには入れてなかったんだな」
「そういうことだ。メリットもデメリットも嘘はついてねぇ。なんなら後で試してみろよ、いい結果が出ると思うぜ」
「フッ……そいつは楽しみだな」
「まぁ帰れる目処も立ってねぇし、暫くは世話になる」
「あぁ、わかったゾ」
ラタトスクが心の中で「お前らなに茶啜ってんだ……ちゃんと聞いてたんだろうな……」と呟く。片方はツナなんだろうと察するが……
「ラタトスク、お前……何人いる?」
「……理解力がありすぎて暴力教師を思い出すな……もう1人居るぜ」
「二重人格か……それとツナ、お前の考えはお見通しだぞ、後でねっちょりだからな」
どうせ俺のことも暴力教師だとか言ってるだろうな。
「なんでバレてんの、ねっちょりはヤダだとよ」
「だろうな」
こちらからの声は伝わるみたいだな。記憶の共有的なもんか?
「暫くは世話になるってことは、自己紹介しといた方がいんじゃね?」
今まで大人しく話を聞いていた山本が声をかける。
「俺は山本武、好きなもんは野球と寿司、一番好きなもんはダチだ、よろしくな!」
「お、おう……」
山本が差し出した手を仕方なく受けるラタトスク。
「いやー、俺精霊のダチなんて初めてだ」
「…………やっぱあのバカ思い出すな」
「奇遇だな、こいつもバカだ」
「剣一本で攻撃力100、二刀流になったら?」
「200だろ?」
「ここにもいたのか……おい綱吉お前え違うのとか言うんじゃねぇ」
「ねっちょりにっちょりに変更だな」
ラタトスクが顔を顰める。中で叫んでるんだろうな。
次に行動したのは獄寺。山本が行動したから拘束が外れていたが、ラタトスクを睨みながら考え込んでいた。
「おい、赤目野郎」
「あ゙ぁ?」
獄寺の呼び掛けに低い声で答えるラタトスク。やっぱりコイツら相性悪いか……ヤンキー同士みたいだな。
「テメー!10代目のお身体で……!って違ぇ……お前、UMAなのか?」
「は?……ゆーま?」
「UMAってのはな……未確認生物のことだ……宇宙人なんかがそうだ」
「宇宙人なぁ……まあ、俺は大樹の精霊だが、デリス・カーラーンは彗星だしな。ある意味宇宙は関係してんじゃねぇか?」
「そ、そうか……!……俺は獄寺隼人だ」
「やめろそんな目で見るな研究対象にすんな普通に接しろ」
そう来たか、獄寺にとって興味のある存在になったんならやっていけそうだな。
「んで、俺はツナの家庭教師のリボーンだ」
「家庭教師なのか、ヒトは見かけによらねぇもんな」
「お、よくわかってるじゃねぇか」
「伊達に何万も生きてねぇよ」
「精霊だもんな」
手を組み、足を組み、俺にドヤ顔を見せてくるラタトスク。でも身体がツナだからなんかムカつく。ツナに戻ったら蹴り飛ばしてやろう。
ラタトスクが俺のおしゃぶりを睨む。
「人形みたいなサイズのヒトが喋ってんのが疑問だったんだが……お前は羽のない天使みたいだな、マナの在り方が……無理やり黄色にさせられた人工的な……」
「待て!」
予想外の所を突かれ声を張り上げる。
「それ以上は……」
コイツ……人の持つ死ぬ気の炎が見えるのか……。黄色にさせられた、なんて痛いところをついてきやがる。
俺の黄色く呪われたマナ。
俺達のそこそこデカいマナ。
ツナの大量に生み出されるマナ。
そして、マナ=死ぬ気の炎。
なるほどな。こいつの存在は伏せておく必要がありそうだ。

「次はお前の番だぞ。もう1人のラタトスク」
そう問いかけるとラタトスクがゆっくり目を瞑り呟く。
「だとよエミル、ご指名だ」
そしてゆっくりと開かれた瞳は緑色に光っていた。
「えと、初めまして。僕がもう1人の精霊ラタトスク、エミル・キャスタニエです」
ニッコリと見せたその表情はラタトスクとは全く違うものだった。
「……精霊なのにファミリーネームあんだな」
エミルに尋ねれば驚いた表情をみせる。
「それさっきも綱吉に聞かれました……僕は精霊ラタトスクがヒトとして生活していた時に作られた人格で、名前はその時に使っていたものです」
「さっきの“ヒトでいた時間”ってやつか」
「はい、色々ありまして……それで僕はヒトとしての人格、ラタトスクが精霊としての人格ということにしています」
「把握したぞ。これからよろしくな、ラタトスク、エミル」
エミルに向かって手を差し出す。
ツナにとって、コイツらの存在は大きなものになる。
これからのことはわかんねーが、未来はそう嫌なもんにはならねー気がする。
さっきまで不安を含んだ笑みを見せていたエミルの表情は明るいものに変わる。
「はい!よろしくおねがいします!」
俺の手を取り答える。獄寺と山本にもよろしくねと声をかけると再び俺を見る。
「それじゃあ僕らは綱吉の中にいるので、何かあったら綱吉に聞いてください。ラタトスクが答えるので」
伝えきったと言わんとばかりにエミルは瞳を閉じる。
エミルは気弱な部類だと思っていたが、どちらも精霊ラタトスクなんだなと感じる。
再び開かれた瞳の色は、いつものツナの茶色の瞳だった。
「えっと……ただいま?」
「お帰りだぜツナ」
「じゅ、10代目ぇ……」
「山本……って、うわぁ!獄寺君!?なんでそんな泣きそうな顔してるの!?」
「ご無事で何よりです!!!」
「え、うん……エミルがお茶出してくれたから飲みながら話聞いてただけだけど……」
「お茶?お前の中どうなってんだ」
精神空間にいたであろうツナの言葉に疑問しか出ない。
「どうって……赤と緑とオレンジのもや?がぐるぐる回ってる空間?思った物を出すことができるみたい」
「赤と緑とオレンジ……なるほどな」
それぞれの色か、わかりやすいな。

「んじゃ、夜遅いしお前らは帰れ。んで、明日の昼に並盛山集合な。ツナの現状確認も含めて体力測定するぞ」
獄寺と山本に帰宅を促す。
「えええええ!?体力測定!?」
「お、いいな!やる気出てきたぜ」
「わかりました!おい野球バカ!ぜってー負けねーからな!」
「おう!俺も負けないぜ」
「なんで二人ともやる気なの!?」
「お前も死ぬ気でやるんだからな」
「そんなぁ~!」

5/5ページ
スキ