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貝の大空と大樹の精霊のお話


意識が浮上する。

視界が暗い。
ここは、ミズホの里の建物に似た室内のように思える。壁にあるショウジという窓に見覚えがあったからだ。
ショウジからは月明かりが差し込んでいるので、今の時間が夜だとわかる。


ふと、息苦しいと感じる。

自分は精霊だ。
精霊は大気中に存在するエネルギー「マナ」を糧にして生きている。
その上、俺は世界の「マナ」を調整する役割もある。
そんな俺が、息苦しいなんて──


突然、ドォンと音と共に空間が震える。

爆発音、そう理解するのに時間はかからなかった。
腰に下げている剣に手を掛け、ショウジだったかフスマだったかのスライド式の扉を勢いよく開け、部屋を飛び出す。

外に出て感じたそれは強い一瞬の光と響くような音、そして微かにしか感じられないマナの存在だった。

光と音、それは前に見た事のある【花火】というものの様だ。
そこは問題じゃない。

微かにしか感じられないマナの方。
マナは存在するが、ヒトにしか存在しない。
ヒトの中にある命のような灯火。そこからマナを感じる。

「(厄介な世界に連れてこられたな…)」

自分の糧となるマナは存在している。
が、それはヒトの命としてだ。

この世界で存在し続けるためには、“ヒトの命のマナ”を貰わなければならない。
マナが枯渇した時は、何とか存在し続けることが出来たが……この世界ではどうなるかわからない。
現に今、マナの不足でうまく力が入らない。

コイツは呑気に中で眠りこけやがって……
いい加減起きて協力しろっての……バカエミル

寝坊助のコイツのことは後回しだ。

この状況を何とかする方法は2つ。
多分、先程までいた建物の中は俺の世界と繋がっている。そこに留まり、活動できるくらいまでマナを溜めて行動するというクソ時間のかかる方法。
でも、あんな薄いマナの供給じゃいつコアに戻ってもおかしくない。却下だ。

となると、もう1つの方法。膨大なマナを持つヒトと契約して、マナを分けてもらうことだ。
幸い、近くにいるヒト……8人組の中に膨大なマナを持つのが5人いる。

割合高いな?なんだコイツら……
少し離れたところに大量にいるヒトのマナを基準に考えると、割合高すぎるな……中にはありえない量のマナを持ってるヤツまでいやがる……

まるで……大樹のような……


ゆっくり足を進める。
もう、コイツに頼るしかねぇ……
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