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うちの子まとめ


フィルクさんが戻ってきて一件落着…してスグの事。
[貴方の祖父が危険な状態にある]
そう知らせを聞いた僕はドイツに渡ることになった。

祖父の危篤なんて真っ赤な嘘。僕を呼び寄せるためのデマだった。
従伯父に自分の部屋を渡されたものの、家の中で殴る蹴るはいつもの事。食事などはあるはずもなく、経験を生かして飲食店でアルバイトをするも、金銭は全て従伯父の懐。

こっちに来てからは地獄のようだった。
初めから親戚にいい気はしていなかった。そうでなければ、アメリカに残って路源を彷徨うなんてことしなかった。
こんなとこ、来るんじゃなかった。 今の環境じゃ、アーカムに帰ることも出来ない。

それでも何とか生活しながら…人助けをしていた。
『この手で救えるだけの苦しんでいる人を助けたい』
アーカムを去る前、親友のロスと約束した言葉を嘘にしない為。たとえ、僕を利用したり、偽善者扱いされたとしても構わなかった。
幸せの手助けが出来ればそれで良かった。

ロスが目の前に現れるまでは…
アーカムに居るはずの…僕の大切な親友。

「ロス…!?お前…なんでドイツに…」
「アルバさん……やっと見つけた…」
「僕を探してた…?」

やっと見つけた、と言ったその顔に笑顔はなかった。
ルビーの様に綺麗だった赤い瞳は濁っていた。
アーカムで…いや、ここでも幾度となく対峙したことのある、狂気を孕んだ瞳……間違いなく、狂ってる。

「何があったんだよ…!…ロス!」
「アルバさんが…悪いんですよ…?」
「僕が…?」
「あなたが…居なくなるから…俺の前から消えたから!」

ロスの表情が険しくなる。
僕が初めて救った人、それがロスだ。
母親と兄の消失で狂ってしまった父親に育てられ、心が壊れていたアイツを笑顔にさせるために”頼れ”と言った。
……ロスが狂ってしまったのは…僕が原因なのか…?

「ごめんな」
「そんな言葉を聞くために、ここまで来たんじゃない!」
「…………」
「もう手遅れなんです……勇者さん」
「……勇…者?」

初めて言われたにも関わらず、しっくりきた呼び名。
まるで、お前にそう呼ばれることが当たり前だったような…

ふと、ロスが目の前に迫る。直後、腹部に冷たいものを感じた。じわじわと身体が熱を帯び始める。
刺された。そう状況を理解するのに時間はかからなかった。
足に力が入らなくなり、そのまま崩れ落ちる。
それが出血からか、ショックからかはわからない。

「……どうして」
「あなたが俺の前から消えてしまうなら…」

力が入らない僕の体は簡単に押し倒される。
倒れた体にロスはのしかかり、ナイフを振り上げる。

「この手で…消してしまえばいい!」

何度も、何度も、冷たい刃が体に刺さる。

「あ、あ、ぎっ、あぁっ、いだ、あああッうぅ、ぅ……うご、あぁああッ!いぎゃああああっ!!ああああ!!」
「あははははっ!俺の!手で!」

数十回は刺された頃、ロスがピタリと動きを止めた。そして、立ち上がって自分の後首をナイフで切り裂いた。
血が噴水のように飛び出し、地面に落ちていく。
僕の足元に倒れ込んだ体はピクリともしなくなった。

……ごめんな、ロス……助けてあげられなくて……
体の感覚が徐々に無くなっていく。
多分、僕もこのまま死ぬんだと思う。

自分の過去が頭の中に蘇ってくる。
これが走馬燈のようにって言うんだっけ?本で見たことがある。

動かない体をなんとか動かして、体の下敷きになっていた自分のナイフを取り出す。
ナイフを抱え、自分の血だまりの中、ぼんやり空を見つめる。

僕の人生って悲惨だったな…不幸なことばっかり。
でも、幸せはいつも自分の心が決めるって聞いた。
僕の人生が不幸だとしても、僕はアーカムで皆に会えたことは幸せだと思ってる。

もし、生まれ変われるなら……

お菓子に囲まれてみたい、音楽に挑戦してみたい、また不思議な体験をしたい、ロスともまた親友になりたい

皆にまた会いたい…

皆と幸せになりたいです
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