最原ちゃんには秘密がある
週末、土曜日。
最原は待ち合わせ場所である池袋駅35番出口でスマホを眺めながらクラスメイトたちの到着を待っていた。
ことの始まりは月曜日。最原の特殊な性別のことがクラス中に知れたその日の昼休みまで遡る。
一人席に座ったまま伯母が作ってくれた弁当を広げようとして、ふと目の前に気配を感じ、最原は顔を上げた。
そこに立っていたのは赤松だった。
彼女はいつも明るい笑顔ではなく、キリリとした真剣そのものの表情。ただならぬ雰囲気に内心戦々恐々とする中、彼女は最原の机に両手をつき、教室中に聞こえるほどの声でこう言ったのだった。
「最原くん、一緒に買い物に行こう!」
強い決意を秘めたその表情に気圧され、気づくと最原はうん、と頷いていた。
「ホントっ?やったぁ!」
途端、赤松の表情がパァッと晴れる。
心から嬉しそうな彼女の様子は見ていて和むが、けれどそこまで喜ぶことだろうか、とも不思議に思う。
わざわざ自分なんかを誘わなくても、彼女ならきっと買い物に付き合ってくれる友達なんてたくさんいるだろうに。
「でも、何で急に?」
「私ね、最原くんともっと仲良くなりたいんだ」
臆面もなく告げられた言葉に、最原は一瞬声にならない息を吐く。
「仲、良く?」
「うん。だって最原くん、今までどこか一線引いてるっていうか…出来るだけ自分の話をしないようにしてたでしょ。今朝の話でその理由は分かったけど、でも、だったら最原くんはもう隠し事する必要はないんじゃないかなって思ったんだ。今なら君と本当の意味で友達になれるんじゃないかなって」
「赤松さん…」
胸がじん、と熱くなる。
今までだって彼女は積極的に声をかけてくれた。
皆の輪の中に入れようと頑張ってくれた。
そんな彼女の厚意に上手に応えるが出来ず、結局は卑屈に一人で居続けることを選んできた自分。
そんなこの手を、それでもまだ彼女は握り続けてくれている。それがとてつもなく嬉しい。
「あの、だったらさ」
彼女の想いに応えたい。こんな面白みのない、不甲斐ない自分だけど。それでも一緒に遊べて良かったと思ってもらえるように、精一杯に。
その一心で、最原はたどたどしく言葉を紡いだ。
「放課後とかじゃなくて、休みの日に…えっと、例えば今週の土曜とかにどこかに遊びに行くのはどうかな。その方がたくさん遊べるし、色んな話だって、きっとできると思うんだ」
その選択肢は、どうやら正解のようだった。
赤松の笑顔がますます輝く。あぁ可愛いな、と眩しく思う。
「うん、私もそうしたいな!じゃあどこに行く?私、今までピアノばっかりだったから、実は普通の高校生が遊びに行くようなスポットって詳しくないんだよね」
「そうなんだ。それじゃあ」
頭の中に様々な情景を思い描く。
場所は交通アクセスが良いところがいい。買い物に誘われたのだから、お店が多い場所。でも彼女の好みが分からないから色んなお店があって、疲れたらすぐに休憩できるカフェなんかもあって。それから、それから。
弾むような心地で候補地を絞り込み、うん、と一拍置いてから提案する。
「池袋のサンシャインシティはどうかな。大型複合施設だからあまり移動しなくても色んな店があるし。それに水族館とかもあるから買い物以外でも楽しめると思うよ」
「水族館まであるの!?すごい、私もそこに行きたいな。あ、そうだ。せっかくだから他の皆も誘ってみようよ。その方がきっと楽しいよ」
「いいね。あ…でも買い物をメインにするなら男子を誘うのは遠慮した方がいいのかな。きっと退屈させちゃうよね」
「そうだね。じゃあ女子の皆に声かけてくる!」
元気よく飛び出していく赤松の背中を微笑ましく見送った後、最原はおもむろにスマホを取り出した。
そうとなればこちらもスケジュールを調整しておかないと、と、来たるべき土曜日に思いを馳せて頬を弛ませながら。
そして1週間はあっという間に過ぎ去り、約束の土曜日がやってきた。
赤松のコミュニケーション能力はすさまじく、急な誘いだというのにそこそこの人数が集まったようだ。メンバーは確か…と思考を巡らせていると、
「おまたせ!」
溌剌とした声がかかり、最原は顔を上げてスマホを小さなショルダーバッグにしまい込む。
池袋駅口から現れる赤松、白銀、茶柱と夢野。この4人が今日誘いに応じてくれたメンバーだった。
「ううん、僕もさっき来たところ。全然待ってないよ」
「なら良かった。それにしても」
カジュアルなパーカーとひざ丈のワンピース。パステルカラーでまとめた春らしい装いの赤松が最原をじいっと見て破顔した。
「休日の最原くん、本当に可愛いんだね」
「え…そ、そうかな。赤松さんたちに比べたら全然だと思うんだけど」
「ううん。すっごく可愛い。似合ってるよ!」
ちなみに本日の最原の恰好はハイネック・リブニット素材の薄手の白いトップスに膝下丈の黒のVネックワンピース。黒いベレー帽。足元は黒のストッキングに白のスニーカーを合わせている。かなりシンプルなコーデなので化粧もあまり色味が強いものは避け、オレンジのチークで気持ち春らしい色味を加えるに留めている。
正直、華やかな女子メンバーに比べたらよほど地味。『可愛い』と言われるような恰好ではないと思うのだが。
そんな内心を見透かしたように白銀がずいっと人差し指を最原の鼻先に突き付けた。
「今のお世辞だとか思ってるでしょ。言っとくけど今日の最原くん、地味でもなんでもなく可愛いからね」
そんな彼女は普段は下ろしている長い髪を高い位置でひとつにまとめ、白いシャツに黒のロングカーディガン、黒のスリムパンツに細かなラメがさりげなく散った黒のハイヒールという恰好。首元には細いシルバーチェーンに小さな石を通したネックレスが煌めいている。うっすらと施された化粧も相まって学校で見るよりもグッと大人っぽく見える。さすがコスプレイヤー、彼女本来のスタイルの良さが際立つセンスのいい服選びだ。
「あ、ありがとう。白銀さんはいつもよりずっとクールな印象だね。似合ってるよ」
「あーもう。これは地味に信じてないね?」
本当なのになぁ、と、頬を膨らませる白銀に苦笑するしかない最原。
そんな三人のやり取りを見ながら冷や汗をかいているのは茶柱と夢野だ。
「皆さん本当に素敵ですよ!最原さんも…本当に休日の最原さんは女子なんですね。むしろ…むしろ転子の方が…み、皆さんの隣を歩いても良いのかと…ふ、不安になってきてしまいました…!」
「んあー…ウチもじゃわい」
「夢野さんはいつだって最っ高に可愛らしくて無敵に素敵なので全く問題ありません!!今日の格好も良くお似合いですよ!!が、転子は今までお洒落もお化粧も興味がなかったので」
皆さんお洒落すぎでしょう…としょげてしまっている。
そんな茶柱は黒と白のボーダーが入った半袖Tシャツにジーンズ、グレーのスニーカーという恰好。確かにシンプルではあるがカジュアルで軽やかな印象。学校で見る彼女とは違い、髪を下で二つに束ねているのも新鮮だ。
夢野もまた可愛らしい。えんじ色の生地に黄色と緑のドットが踊るワンピース。全体的にくすんだ色味なので子供っぽすぎることもなく程よい愛らしさだ。靴下もレトロ感のあるワンピースに合わせるかのような茶色のリブニットで、歩きやすさを重視したのだろう紺色に白い靴底のスニーカーが良く似合っている。
「そんなことないよ。茶柱さんも夢野さんも素敵だよ」
これは最原の心からの言葉なのだが、今の彼女たちには逆効果のようだ。
特に最原は普段男性として過ごしていることもあってか、
「今日の最原さんに言われてもお世辞にしか聞こえませんッ!」
と逆に噛みつかれる始末。
ほとほと困っていると、赤松がポンと手を叩いた。
「じゃあさ、今日は茶柱さんと夢野さんが気に入るような服とかも探してみようよ!」
「え、で、でも…」
「私も地味に賛成だよ。試着するだけならタダだしね」
「っていうか、実は私も白銀さんと最原くんにお願いしたいことあるんだよね」
「え?」
「何かな。私に出来ることなら協力するよ」
「お願いっ、コスメ選びを教えてくださいっ!」
戸惑う最原と首をかしげる白銀。彼らの前で赤松がパンッと顔の前で手を合わせ、見本のように頭を下げる。
「お化粧なんて今までコンサートの時にお母さんにしてもらったくらいしか経験がなくってさ。でも高校出たら自分で化粧しなきゃいけない機会が増えるでしょ。それに街に出ると結構高校生くらいの子たちがきれいにお化粧してたりするじゃない? そういうの見ると、このままじゃダメなのかなーって思っちゃってさ」
あはは…と頬を掻く彼女の姿に、そしてそれに続く白銀たちの言葉に、しょげていた茶柱と夢野の気分も徐々に上向いていく。
「うん、分かった。じゃあ、まずはコスメを扱ってる店に寄ろうか。その後に色んな服を見て回る感じで」
「皆をフルコーデしてみるっていうのも楽しそうだよね。皆、素材がいいからどんな風にするか想像するだけでたぎっちゃうよ~」
「か、買い物も良いが、水族館を回る時間はあるのか?」
「大丈夫。色々回るかもしれないと思って早めの集合時間を設定しておいたんだ。ショーはさすがに無理だけど、水族館をゆっくり見て回ることは出来るはずだよ」
「ホントか!?ペンギンは? 見れるのか?」
「確かペンギンは常設だから普通に見れるはずだよ。僕はクラゲが見たいな」
「っきゃー!ペンギンと戯れる夢野さん…きっと夢のような光景でしょうね!」
「”夢”野さんなだけに?」
「赤松さん…今のは地味に寒いよ」
いつの間にかそこにはきゃあきゃあとはしゃぐ空気で満たされていた。
”彼女たち”はそのまま流れるように話題をコロコロと変えながら、数多の人たちがひしめく池袋の大型複合施設へと歩みを進めていったのだった。
最原は待ち合わせ場所である池袋駅35番出口でスマホを眺めながらクラスメイトたちの到着を待っていた。
ことの始まりは月曜日。最原の特殊な性別のことがクラス中に知れたその日の昼休みまで遡る。
一人席に座ったまま伯母が作ってくれた弁当を広げようとして、ふと目の前に気配を感じ、最原は顔を上げた。
そこに立っていたのは赤松だった。
彼女はいつも明るい笑顔ではなく、キリリとした真剣そのものの表情。ただならぬ雰囲気に内心戦々恐々とする中、彼女は最原の机に両手をつき、教室中に聞こえるほどの声でこう言ったのだった。
「最原くん、一緒に買い物に行こう!」
強い決意を秘めたその表情に気圧され、気づくと最原はうん、と頷いていた。
「ホントっ?やったぁ!」
途端、赤松の表情がパァッと晴れる。
心から嬉しそうな彼女の様子は見ていて和むが、けれどそこまで喜ぶことだろうか、とも不思議に思う。
わざわざ自分なんかを誘わなくても、彼女ならきっと買い物に付き合ってくれる友達なんてたくさんいるだろうに。
「でも、何で急に?」
「私ね、最原くんともっと仲良くなりたいんだ」
臆面もなく告げられた言葉に、最原は一瞬声にならない息を吐く。
「仲、良く?」
「うん。だって最原くん、今までどこか一線引いてるっていうか…出来るだけ自分の話をしないようにしてたでしょ。今朝の話でその理由は分かったけど、でも、だったら最原くんはもう隠し事する必要はないんじゃないかなって思ったんだ。今なら君と本当の意味で友達になれるんじゃないかなって」
「赤松さん…」
胸がじん、と熱くなる。
今までだって彼女は積極的に声をかけてくれた。
皆の輪の中に入れようと頑張ってくれた。
そんな彼女の厚意に上手に応えるが出来ず、結局は卑屈に一人で居続けることを選んできた自分。
そんなこの手を、それでもまだ彼女は握り続けてくれている。それがとてつもなく嬉しい。
「あの、だったらさ」
彼女の想いに応えたい。こんな面白みのない、不甲斐ない自分だけど。それでも一緒に遊べて良かったと思ってもらえるように、精一杯に。
その一心で、最原はたどたどしく言葉を紡いだ。
「放課後とかじゃなくて、休みの日に…えっと、例えば今週の土曜とかにどこかに遊びに行くのはどうかな。その方がたくさん遊べるし、色んな話だって、きっとできると思うんだ」
その選択肢は、どうやら正解のようだった。
赤松の笑顔がますます輝く。あぁ可愛いな、と眩しく思う。
「うん、私もそうしたいな!じゃあどこに行く?私、今までピアノばっかりだったから、実は普通の高校生が遊びに行くようなスポットって詳しくないんだよね」
「そうなんだ。それじゃあ」
頭の中に様々な情景を思い描く。
場所は交通アクセスが良いところがいい。買い物に誘われたのだから、お店が多い場所。でも彼女の好みが分からないから色んなお店があって、疲れたらすぐに休憩できるカフェなんかもあって。それから、それから。
弾むような心地で候補地を絞り込み、うん、と一拍置いてから提案する。
「池袋のサンシャインシティはどうかな。大型複合施設だからあまり移動しなくても色んな店があるし。それに水族館とかもあるから買い物以外でも楽しめると思うよ」
「水族館まであるの!?すごい、私もそこに行きたいな。あ、そうだ。せっかくだから他の皆も誘ってみようよ。その方がきっと楽しいよ」
「いいね。あ…でも買い物をメインにするなら男子を誘うのは遠慮した方がいいのかな。きっと退屈させちゃうよね」
「そうだね。じゃあ女子の皆に声かけてくる!」
元気よく飛び出していく赤松の背中を微笑ましく見送った後、最原はおもむろにスマホを取り出した。
そうとなればこちらもスケジュールを調整しておかないと、と、来たるべき土曜日に思いを馳せて頬を弛ませながら。
そして1週間はあっという間に過ぎ去り、約束の土曜日がやってきた。
赤松のコミュニケーション能力はすさまじく、急な誘いだというのにそこそこの人数が集まったようだ。メンバーは確か…と思考を巡らせていると、
「おまたせ!」
溌剌とした声がかかり、最原は顔を上げてスマホを小さなショルダーバッグにしまい込む。
池袋駅口から現れる赤松、白銀、茶柱と夢野。この4人が今日誘いに応じてくれたメンバーだった。
「ううん、僕もさっき来たところ。全然待ってないよ」
「なら良かった。それにしても」
カジュアルなパーカーとひざ丈のワンピース。パステルカラーでまとめた春らしい装いの赤松が最原をじいっと見て破顔した。
「休日の最原くん、本当に可愛いんだね」
「え…そ、そうかな。赤松さんたちに比べたら全然だと思うんだけど」
「ううん。すっごく可愛い。似合ってるよ!」
ちなみに本日の最原の恰好はハイネック・リブニット素材の薄手の白いトップスに膝下丈の黒のVネックワンピース。黒いベレー帽。足元は黒のストッキングに白のスニーカーを合わせている。かなりシンプルなコーデなので化粧もあまり色味が強いものは避け、オレンジのチークで気持ち春らしい色味を加えるに留めている。
正直、華やかな女子メンバーに比べたらよほど地味。『可愛い』と言われるような恰好ではないと思うのだが。
そんな内心を見透かしたように白銀がずいっと人差し指を最原の鼻先に突き付けた。
「今のお世辞だとか思ってるでしょ。言っとくけど今日の最原くん、地味でもなんでもなく可愛いからね」
そんな彼女は普段は下ろしている長い髪を高い位置でひとつにまとめ、白いシャツに黒のロングカーディガン、黒のスリムパンツに細かなラメがさりげなく散った黒のハイヒールという恰好。首元には細いシルバーチェーンに小さな石を通したネックレスが煌めいている。うっすらと施された化粧も相まって学校で見るよりもグッと大人っぽく見える。さすがコスプレイヤー、彼女本来のスタイルの良さが際立つセンスのいい服選びだ。
「あ、ありがとう。白銀さんはいつもよりずっとクールな印象だね。似合ってるよ」
「あーもう。これは地味に信じてないね?」
本当なのになぁ、と、頬を膨らませる白銀に苦笑するしかない最原。
そんな三人のやり取りを見ながら冷や汗をかいているのは茶柱と夢野だ。
「皆さん本当に素敵ですよ!最原さんも…本当に休日の最原さんは女子なんですね。むしろ…むしろ転子の方が…み、皆さんの隣を歩いても良いのかと…ふ、不安になってきてしまいました…!」
「んあー…ウチもじゃわい」
「夢野さんはいつだって最っ高に可愛らしくて無敵に素敵なので全く問題ありません!!今日の格好も良くお似合いですよ!!が、転子は今までお洒落もお化粧も興味がなかったので」
皆さんお洒落すぎでしょう…としょげてしまっている。
そんな茶柱は黒と白のボーダーが入った半袖Tシャツにジーンズ、グレーのスニーカーという恰好。確かにシンプルではあるがカジュアルで軽やかな印象。学校で見る彼女とは違い、髪を下で二つに束ねているのも新鮮だ。
夢野もまた可愛らしい。えんじ色の生地に黄色と緑のドットが踊るワンピース。全体的にくすんだ色味なので子供っぽすぎることもなく程よい愛らしさだ。靴下もレトロ感のあるワンピースに合わせるかのような茶色のリブニットで、歩きやすさを重視したのだろう紺色に白い靴底のスニーカーが良く似合っている。
「そんなことないよ。茶柱さんも夢野さんも素敵だよ」
これは最原の心からの言葉なのだが、今の彼女たちには逆効果のようだ。
特に最原は普段男性として過ごしていることもあってか、
「今日の最原さんに言われてもお世辞にしか聞こえませんッ!」
と逆に噛みつかれる始末。
ほとほと困っていると、赤松がポンと手を叩いた。
「じゃあさ、今日は茶柱さんと夢野さんが気に入るような服とかも探してみようよ!」
「え、で、でも…」
「私も地味に賛成だよ。試着するだけならタダだしね」
「っていうか、実は私も白銀さんと最原くんにお願いしたいことあるんだよね」
「え?」
「何かな。私に出来ることなら協力するよ」
「お願いっ、コスメ選びを教えてくださいっ!」
戸惑う最原と首をかしげる白銀。彼らの前で赤松がパンッと顔の前で手を合わせ、見本のように頭を下げる。
「お化粧なんて今までコンサートの時にお母さんにしてもらったくらいしか経験がなくってさ。でも高校出たら自分で化粧しなきゃいけない機会が増えるでしょ。それに街に出ると結構高校生くらいの子たちがきれいにお化粧してたりするじゃない? そういうの見ると、このままじゃダメなのかなーって思っちゃってさ」
あはは…と頬を掻く彼女の姿に、そしてそれに続く白銀たちの言葉に、しょげていた茶柱と夢野の気分も徐々に上向いていく。
「うん、分かった。じゃあ、まずはコスメを扱ってる店に寄ろうか。その後に色んな服を見て回る感じで」
「皆をフルコーデしてみるっていうのも楽しそうだよね。皆、素材がいいからどんな風にするか想像するだけでたぎっちゃうよ~」
「か、買い物も良いが、水族館を回る時間はあるのか?」
「大丈夫。色々回るかもしれないと思って早めの集合時間を設定しておいたんだ。ショーはさすがに無理だけど、水族館をゆっくり見て回ることは出来るはずだよ」
「ホントか!?ペンギンは? 見れるのか?」
「確かペンギンは常設だから普通に見れるはずだよ。僕はクラゲが見たいな」
「っきゃー!ペンギンと戯れる夢野さん…きっと夢のような光景でしょうね!」
「”夢”野さんなだけに?」
「赤松さん…今のは地味に寒いよ」
いつの間にかそこにはきゃあきゃあとはしゃぐ空気で満たされていた。
”彼女たち”はそのまま流れるように話題をコロコロと変えながら、数多の人たちがひしめく池袋の大型複合施設へと歩みを進めていったのだった。