OH!Baby

ふわふわ、ゆらゆら。
気が付くと、オレはあたたかな暗闇の中で微睡んでいた。
あれ、ここはどこだろ。何でオレこんなあったかい場所でうとうとしてるんだっけ。
ぬるま湯のような温度の中で一生懸命記憶の糸を手繰り寄せようと奮闘していると、少し遠くからオレの名前を呼ぶ声がした。
心地よいテノール。男の声だ。その声に引っ張られるように、暗闇の中から白い光の元にゆっくり引き上げられるような感覚を覚える。

『…きち』
『こきち』

うんうん、そうだよ。小吉くんですよ。
あれ、でも。
オレのこと名前で呼ぶような男っていたっけ…?

ぱちり。強い光を瞼の裏に感じて反射的に目を開いた。
ぼんやりとボヤける視界の中、見知らぬ顔がすぐ傍にあって驚く。
若い男だ。高校生…いや大人っぽいから大学生か社会人になりたてってところかな。
どうやら仰向けに寝っ転がっているオレを覗き込んでいるような恰好らしいけど…誰だ?コイツ。
「ははっ、可愛いな。ビックリした顔してる。どうしたー?面白い夢でも見てたか?」
独り言のように一方的に語り掛けるその男は、腕に抱いたオレの体をあやすように揺らしながら幸せそうに微笑んで……
いや、待て。
待て待て待て待て。おかしいだろ。
確かにオレは高校生にしちゃ小柄だよ?
でもさすがに、そこらへんの男がすっぽり抱きかかえられるほど小さいワケじゃない。
何だか嫌な予感がして突っ張るように両手を伸ばして目の前に持ってくる。
視界に飛び込んで来たオレの両手は…小さくぷくぷくしていた。
着せられている服も柔らか素材で出来た薄いブルーのベビー服。
「あ、あーうぅ…」
ウソだろ、と思わず零れた言葉はマトモな単語すら形成することなく、ただ甲高い音として虚しく空気を震わせるだけだった。

オレは王馬小吉。1万人の部下を持つ悪の秘密結社…もとい、笑えることが大好きな9人の部下たちと世界中を飛び回り悪戯を仕掛けて回っていた愉快犯的犯罪グループ『DICE』の元・総統だ。
才囚学園とかいう趣味の悪い学校で目覚めてからオレを含めた16人の『超高校級』の生徒たちと共にコロシアイ学生生活を送っていたオレは最後の最後であえなく命を落とし。
そして今、どうやら赤ん坊として新たな生を受けたらしかった。


「ん、何だママの顔を触りたいのか?」
えっ、アンタが俺のママなの?
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