蒼の使徒
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朝から茸の…否、太宰さんのせいで散々であったが、何とか事務室内も落ち着き、ついでに日も傾き始めた頃のこと。
「麟、今回の事案、念の為お前も同行してくれ。」
「え…私もですか?」
机に向かう私に、後ろから国木田さんが声を掛けて来た。いつの間にかすぐ後ろに立っていたらしい。依頼の内容は昨日の晩、武装探偵社の国木田さん宛で届いた電子書面 だ。えらく仰々しく書かれていたが、結論としては近所の廃墟から変な物音がするから調べてくれ、との内容であり、差出人不明で依頼料は相場の倍振り込まれているという非常に奇妙な依頼だった。今日はその依頼者と依頼内容である廃墟を国木田さんと太宰さんのペアで調査する予定だった筈だ。
…何故私まで。
私の顔を見て云いたいことを察したのか国木田さんが続ける。
「今回の依頼は廃墟の調査…其処まで大きな危険性はないと思うが、念の為人手が欲しい。それに…あの迷惑噴霧器の相手をするのに少し疲れた。」
私は少し驚いた。あの国木田さんが私に対して弱音とは…思った以上に参っている様だ。可哀想な後輩の為にも如何やら引き請けるべきらしい。とは云え、此の良く出来た歳上の後輩に折角頼まれたのにそのまま素直に頷くのは少し癪だ。私は少し考えてから
「…ちゃんと後輩らしくお願いして貰えるなら手伝います。」
と一寸した厭がらせをした。国木田さんは何か云いたげな表情で此方を睨むが、結局飲み込んだ様で
「麟さん、お願いします。」
と少し頭を下げた。一寸気持ちいいかもしれない。私は多分満面の笑みを浮かべたまま立ち上がった。
「ありがとうございます。満足しました。」
「それは良かったな。」
国木田さんはやや強めの口調で答えた。少しばかり苛立ちが見えるが、許容範囲内だろう。出張鞄を手に国木田さんと太宰さんの後ろに着いて行った。
向かう先は港の倉庫街。恐らく数月程前、探偵社 に電網破り を仕掛けてきた少年を訪ねる心算 の様だ。倉庫街の余所より一回り程小さな倉庫の呼鈴を鳴らした。
「イヨオ眼鏡。今日も手帳の言成かい?」
電子錠の重い鉄製の扉の先にあったのは、二十畳程の部屋に所狭しと並ぶ電算筺体 に電子機材の数々、そして机上の大きな四つの液晶板に照らされてふんぞり返る鋭い目の少年だった。
「偉そうな口を利くなよ情報屋。社にある証拠品を然るべき筋に回せば、お前は十年獄舎暮らしだ。そうなればお前の亡き御父上が泣くぞ。」
「父上の話は出すんじゃねエよ。」
成程…彼が田口六蔵か。本人に逢うのは初めてだが、思っていた通り小生意気な少年だった様だ。
「それより遅刻だぜ?珍しいじゃんか。何、コレと逢引 ?」
小指を立ててにやける田口少年に国木田さんは強めに返答する。
「断じて違う。逢引 とは結婚を決めた女性とするものだ。そして結婚予定は六年後と、手帳の『将来設計』の頁に書いて在る。」
そう返す国木田さんに私は思わずうわぁと声を漏らしてしまった。理由は以前国木田さんの手帳のその『将来設計』の配偶者に関する頁を読んだことがあるからだ。58項目にも及ぶ其れは最早呪詛だ。若し仮に男性からこの条件を出されたうえで交際を申し込まれたなら、相手がどんなに善い人であったとしても張り手を喰らわせる自信がある。
「何だ。眼鏡、結婚決めてる相手が居んの?お、真逆そっちの彼女かい?」
「違います。私は”唯の同僚”です。何時ぞやは素敵なプレゼントをありがとうございます。お陰様で後処理はなかなか骨が折れましたよ?」
六蔵少年の発言に間髪入れずに否定し、ついでに少しばかり厭味を零した。
「…相手ができるのは四年後の予定だ。理想と計画に生きる、それが大人だ。見習え少年。」
「あ…そう。」
六蔵少年が少しばかり引いていることが判る。私もヤバい奴だと思う。そこは同意だ。
「うん…国木田君のキャラは大体わかったけど、今のはちょっとアレだよね。」
後ろの木戸から出てきたヤバい奴二号が同じく引いた様子で発言した。
「あれ、新顔がもう一人。誰?」
「やあ。名乗っても勿論良いのだけれど、次に国木田君が云う台詞があるから無理。」
「少年、人に名を尋ねる前には自ら名乗るべきだ。あと太宰、許可なく俺の言動を先読みするな。」
「眼鏡はつくづく『べき』って言葉が好きだな…まァいいや。己等 の名前は田口六蔵。十四歳。職業は電網潜士。」
そう名乗る少年に探偵社に電網破り を仕掛け、情報屋として協力する条件で証拠品を軍警に引き渡さない取引をしていることを国木田さんが付け加えた。
「それで、事前に渡した電子書面 の送り主は判ったか?」
「人遣いが荒いぜ眼鏡。先刻 の今で出来る訳ねェだろ。も少し待てよ。それでなくてもアンタの別件依頼『失踪者の足取り追跡』で忙しいんだ。そっちが先だろ?」
どうやら前もって件の書面 の送信者調査を依頼していたらしい。それに話から察するに一月程前から発生している『横浜来訪者連続失踪事件』についても調査依頼済みの様だ。横浜に来訪した旅客が自らの足で失踪していると云う非常に不可思議な事件だが、詳細を聞きたがる太宰さんに国木田さんが答えないということはこれを入社試験に充てようと考えているらしい。
「ふゥん、新人教育って訳か。眼鏡も出世したなァ。」
そう云う田口少年にうんうんと頷いて続けた。
「そうですね。気が付いたらどんどん可愛げがなくなってしまって…。」
「本当に頑固な上司で困っちゃうよ。あそうだ、田口少年だっけ?君電網破り なんでしょ?何か無いかなあ、国木田君の弱みとか、見られたら困る秘匿写真とか。」
「え、なんですかそのちょっと面白そうなの。」
太宰さんの続けた台詞に思わず反応する。
「おい太宰!本人の前で堂々と脅迫の算段をするな!」
「お!話が判るね新人。千円、壱万円、十万円。どのコースが良い?」
「そんなにあるのか!?」
国木田さんが動揺しながら怒鳴る。おお、すごく焦ってて非常に面白い。手が若干バタバタしている。
「…巫山戯るな、俺に弱みなど無い。餓鬼が吹いてるだけだ。太宰、麟、相手にするな。」
「…ふうん」
何か含ませたような顔で国木田さんを見る太宰さん。
「信じないなら善いぜ別に。信じた客に売るだけさ。ただ眼鏡が先に金払うッつうんなら、証拠資料を削除してもいいけどなァ。」
ニヤニヤと笑う田口少年に
「誰が払うか。俺に見られて困る情報など無い!行くぞ!」
そう云って太宰さんの襟首と私の鞄の紐を引っ張り部屋を出る国木田さん。ただ、表情を見る限り先程の動揺はまだ続いているらしく、恐らく脳内では払うかどうか葛藤しているところだろう。
「国木田君って大分面白いよね。」
「ええ、それはもう。」
国木田さんに引かれながら太宰さんの言葉に頷いた。
「麟、今回の事案、念の為お前も同行してくれ。」
「え…私もですか?」
机に向かう私に、後ろから国木田さんが声を掛けて来た。いつの間にかすぐ後ろに立っていたらしい。依頼の内容は昨日の晩、武装探偵社の国木田さん宛で届いた電子
…何故私まで。
私の顔を見て云いたいことを察したのか国木田さんが続ける。
「今回の依頼は廃墟の調査…其処まで大きな危険性はないと思うが、念の為人手が欲しい。それに…あの迷惑噴霧器の相手をするのに少し疲れた。」
私は少し驚いた。あの国木田さんが私に対して弱音とは…思った以上に参っている様だ。可哀想な後輩の為にも如何やら引き請けるべきらしい。とは云え、此の良く出来た歳上の後輩に折角頼まれたのにそのまま素直に頷くのは少し癪だ。私は少し考えてから
「…ちゃんと後輩らしくお願いして貰えるなら手伝います。」
と一寸した厭がらせをした。国木田さんは何か云いたげな表情で此方を睨むが、結局飲み込んだ様で
「麟さん、お願いします。」
と少し頭を下げた。一寸気持ちいいかもしれない。私は多分満面の笑みを浮かべたまま立ち上がった。
「ありがとうございます。満足しました。」
「それは良かったな。」
国木田さんはやや強めの口調で答えた。少しばかり苛立ちが見えるが、許容範囲内だろう。出張鞄を手に国木田さんと太宰さんの後ろに着いて行った。
向かう先は港の倉庫街。恐らく数月程前、
「イヨオ眼鏡。今日も手帳の言成かい?」
電子錠の重い鉄製の扉の先にあったのは、二十畳程の部屋に所狭しと並ぶ
「偉そうな口を利くなよ情報屋。社にある証拠品を然るべき筋に回せば、お前は十年獄舎暮らしだ。そうなればお前の亡き御父上が泣くぞ。」
「父上の話は出すんじゃねエよ。」
成程…彼が田口六蔵か。本人に逢うのは初めてだが、思っていた通り小生意気な少年だった様だ。
「それより遅刻だぜ?珍しいじゃんか。何、コレと
小指を立ててにやける田口少年に国木田さんは強めに返答する。
「断じて違う。
そう返す国木田さんに私は思わずうわぁと声を漏らしてしまった。理由は以前国木田さんの手帳のその『将来設計』の配偶者に関する頁を読んだことがあるからだ。58項目にも及ぶ其れは最早呪詛だ。若し仮に男性からこの条件を出されたうえで交際を申し込まれたなら、相手がどんなに善い人であったとしても張り手を喰らわせる自信がある。
「何だ。眼鏡、結婚決めてる相手が居んの?お、真逆そっちの彼女かい?」
「違います。私は”唯の同僚”です。何時ぞやは素敵なプレゼントをありがとうございます。お陰様で後処理はなかなか骨が折れましたよ?」
六蔵少年の発言に間髪入れずに否定し、ついでに少しばかり厭味を零した。
「…相手ができるのは四年後の予定だ。理想と計画に生きる、それが大人だ。見習え少年。」
「あ…そう。」
六蔵少年が少しばかり引いていることが判る。私もヤバい奴だと思う。そこは同意だ。
「うん…国木田君のキャラは大体わかったけど、今のはちょっとアレだよね。」
後ろの木戸から出てきたヤバい奴二号が同じく引いた様子で発言した。
「あれ、新顔がもう一人。誰?」
「やあ。名乗っても勿論良いのだけれど、次に国木田君が云う台詞があるから無理。」
「少年、人に名を尋ねる前には自ら名乗るべきだ。あと太宰、許可なく俺の言動を先読みするな。」
「眼鏡はつくづく『べき』って言葉が好きだな…まァいいや。
そう名乗る少年に探偵社に
「それで、事前に渡した電子
「人遣いが荒いぜ眼鏡。
どうやら前もって件の
「ふゥん、新人教育って訳か。眼鏡も出世したなァ。」
そう云う田口少年にうんうんと頷いて続けた。
「そうですね。気が付いたらどんどん可愛げがなくなってしまって…。」
「本当に頑固な上司で困っちゃうよ。あそうだ、田口少年だっけ?君
「え、なんですかそのちょっと面白そうなの。」
太宰さんの続けた台詞に思わず反応する。
「おい太宰!本人の前で堂々と脅迫の算段をするな!」
「お!話が判るね新人。千円、壱万円、十万円。どのコースが良い?」
「そんなにあるのか!?」
国木田さんが動揺しながら怒鳴る。おお、すごく焦ってて非常に面白い。手が若干バタバタしている。
「…巫山戯るな、俺に弱みなど無い。餓鬼が吹いてるだけだ。太宰、麟、相手にするな。」
「…ふうん」
何か含ませたような顔で国木田さんを見る太宰さん。
「信じないなら善いぜ別に。信じた客に売るだけさ。ただ眼鏡が先に金払うッつうんなら、証拠資料を削除してもいいけどなァ。」
ニヤニヤと笑う田口少年に
「誰が払うか。俺に見られて困る情報など無い!行くぞ!」
そう云って太宰さんの襟首と私の鞄の紐を引っ張り部屋を出る国木田さん。ただ、表情を見る限り先程の動揺はまだ続いているらしく、恐らく脳内では払うかどうか葛藤しているところだろう。
「国木田君って大分面白いよね。」
「ええ、それはもう。」
国木田さんに引かれながら太宰さんの言葉に頷いた。
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