綺羅をまとえば

 ずっと夢を見ていた。あの人に会いたいと。夢の中で出会ったからには、中華国にあるお香と枕が効くのかどうかも知りたかった。誰を思っているの、わたしはいちばん綺麗な人に出会いたかった。夢見の悪いことでも、きっと、ばくちゃんに食われていたとしても、まずは貴方に出会いたかった。
 いつだって嵐は大海を這っているだろう。だから、いつに海の外に向かったとしてなにも変わらないだろう。わたしは夢に見た景色が、大陸にあるかを知りたかった。この島国は、わたしにはいきづらい。
じんしんくとう人身御供なんてするのはよくないだろう!」
「いや、しなくても届けられたらそれでいいんだ」
「でも、もし、彼女が……」
「大丈夫だろう。明朝、出発するぞ」
「わかりました」
「お前は……」
 ゆらゆら揺れていると、酔っぱらいよりも酷い気分。わだつみが女を嫌うから、というより、女が好きなのだろう。美女なら尚良し。なんて思ってたりして。
「仙女か」
「はい、この度はありがとうございます」
「名前は」
「書いていいですか。言っちゃだめらしいです」
「珍妙な名前だな」
「あなたは?」
「俺は正健と名乗っている。書くな」
「しょうけん…お金みたい」
「なにそれ!! 俺は群勢」
「ぐんぜい…うるさそう」
「ひどい!!」
「じゃあ、おれはひろむ。ひろむは…感じ考えてて〜」
「ひろは広くにむは無敗の無。広無。変なの」
「あの、いきますよ。俺は……後で教えます」
「中華国かぁ……どんな景色だろう」
「よし、進め!」
 海を出る瞬間にぴりりと両手が痛んだ。嫌な予感。でも、わたしたちは大丈夫。きっと、この島国が悲しんでいるのだろう。わたしの門出は、きっと世界をはんらんさせる。そんな変な言葉を思い浮かべて、やめた。わたしたちの旅立ちは、世の中を繁華させるだろう。よし、これがいい。あの御門のそばにいられないなら、わたしは皇帝でもないと言ったうつくしい人の次に美丈夫な中華国の人に出会いたい。かなしいね。そんな物語に落とし込んで。いやだ。出会いたいの。
 潮風が鼻をつつく。すこし痛い。
「仙女さんは、書いて覚える派ですか」
「うん、そう。わたし、すぐ忘れちゃうから、書いてないと」
「うわぁ、ぎっしり。難しい話ばかりしてますね」
「あ、これみちゃだめ」
「なんで??」
「占い……途中だから」
「にしても、話し方……」
「あら? だめよぉ。みたいな?」
「うん、そう」
「いやぁ、それは……」
「先帝の好みだったのよ、ただそれだけ」
「へえ。そんなことあるんや」
「ぐんぜい? ちょっとちがう」
「俺はなんでもええよぉ」
「飯食うぞ」
「じゃあ、わたしは…なんか作る!」
「火ぃ使うなよ!!」
「大丈夫。使わないの考えてきた」
 科学で陰陽師は幻術に似たものを使うけれど、わたしはただ単に本で街で、人で得た知識を使うだけ。
「お米、いい感じになってた。よかった」
「水だけで炊けるもんなんだな」
「丸一日かけたかいあったねぇ」
「おへてつだわされたし」
「味噌煮?」
「味噌きゅうり! を、ごはんと食べたかったの!」
「刃物は持っちゃだめだから、バキバキに折ってたよ」
「なにそれ……すごい」
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