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Bite -3years later-

.







その言葉を聞いた瞬間に

それまで堪えていた涙が、ふと閉じた瞼と共に頬を伝った






声を押し殺して涙を流す私を見て

彼はなぜか柔く微笑んで

その指先で掬い取るように雫を拭う








… 3年前、



彼と過ごしていた時も、

彼と離れてすぐも、気付けなかった









… けど

今なら、分かるよ









私のこの感情が、一体何なのか

どうして何度も、彼を思い出したのか


その理由、すべて









「私も… 、会いたかった、」

「… うん、」

「…… 私も、



サクヤが、好き… 」









彼がいない半分の世界は

とても退屈で、
とてもつまらないものだった







彼と過ごしたあの時間は

私にとって、"特別"なもので







私があの時彼を受け入れたのは

疑いもなく







彼を、愛していたからだと








同情なんかじゃなく、心から

その存在全てが、愛おしかったからだと









… やっと、気付いたんだよ









.







言葉にした瞬間、

再び、頬を流れ落ちた熱い雫




その涙をまた指で拭いながら

彼は柔く微笑んだ






「… メイク、落ちてる」

「…… うるさい」

「目、真っ黒」

「… 誰のせいだと思って、」







そう言えば、また

その瞳を細めて、私を見つめ

そっと、私の頬を包む彼








今、

手の届く距離にある、その存在を








もう2度と

失いたくないと思うほどに







………… 彼が、愛おしい








.








「… 望叶、」






そしてまた、その声が

私の名前を象れば





近づく距離に、目を閉じて

瞼の裏に、あなたを描いて





優しく触れ合う唇に、

未来を夢見た









「… 愛してる」









-fin-
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