Bite -3years later-
*
重い扉を開き、廊下に出て
辺りを見回しながら、当てもなく歩き出す
先ほどと同じ焦燥感からか、
自然と足取りは速くなり
久々に履く踵の高いヒールの鳴らす音が、徐々に間隔を狭めていく
階段を登って
角を曲がって
出口まで見るけれど
その姿は、見つからない
… 一体、どこ?
どこにいるの、
「サクヤ… 、」
ふと、小さな声で
彼の名前を呟いた、その瞬間
ぱっと私の手を掴んだ、少し冷たい掌
突然の感覚に、驚いて振り返ろうとすれば
私がそちらに視線を向ける間もなく、
そのままその腕をぐいっと後ろに引かれる
「わっ… 、」
その強い引力のせいで
高いヒールが縺れ、バランスを崩して
重力に抵抗し切れず、よろける私の身体は
その次の瞬間には
仄かに熱を帯びた、
大きな身体に包まれていた
.
顔を押し当てた黒いスーツからする、
あまり嗅ぎ慣れない、香水の匂い
抱きしめられているせいで
顔を確かめることは出来ない
… なのに、
その胸から伝わる、少し速まった鼓動
髪を梳く、わずかな指の感覚
私の服をきつく握りしめる、その掌の力
ただ、それだけで
身体はその熱を憶えていたかのように、その存在を受け入れていく
首元にかかる、吐き出された熱い吐息
耳の掠めたその息と共に、
あの赤い唇から零れた声に
またぎゅっと、
胸が苦しくなった
.
「望叶………… 、」
.
重い扉を開き、廊下に出て
辺りを見回しながら、当てもなく歩き出す
先ほどと同じ焦燥感からか、
自然と足取りは速くなり
久々に履く踵の高いヒールの鳴らす音が、徐々に間隔を狭めていく
階段を登って
角を曲がって
出口まで見るけれど
その姿は、見つからない
… 一体、どこ?
どこにいるの、
「サクヤ… 、」
ふと、小さな声で
彼の名前を呟いた、その瞬間
ぱっと私の手を掴んだ、少し冷たい掌
突然の感覚に、驚いて振り返ろうとすれば
私がそちらに視線を向ける間もなく、
そのままその腕をぐいっと後ろに引かれる
「わっ… 、」
その強い引力のせいで
高いヒールが縺れ、バランスを崩して
重力に抵抗し切れず、よろける私の身体は
その次の瞬間には
仄かに熱を帯びた、
大きな身体に包まれていた
.
顔を押し当てた黒いスーツからする、
あまり嗅ぎ慣れない、香水の匂い
抱きしめられているせいで
顔を確かめることは出来ない
… なのに、
その胸から伝わる、少し速まった鼓動
髪を梳く、わずかな指の感覚
私の服をきつく握りしめる、その掌の力
ただ、それだけで
身体はその熱を憶えていたかのように、その存在を受け入れていく
首元にかかる、吐き出された熱い吐息
耳の掠めたその息と共に、
あの赤い唇から零れた声に
またぎゅっと、
胸が苦しくなった
.
「望叶………… 、」
.