Bite -3years later-
*
披露宴が終わった、広い会場
柔らかな日差しを受け入れる、大きな窓
すっきりと晴れた昼下がりの空気は
いつもよりも穏やかで、暖かくて
それまでの落ち着いた雰囲気から一転し
またがやがやと騒がしくなった空間
散り散りにテーブルを離れていく人たちと会釈を交わしながら
さりげなく辺りを見回し、"彼"の姿を探す
… けれど
視界に入る人影は、どれも
彼のそれとは、異なるもので
『僕たち、席、向こうなんで。
……… また、後で』
そう言って、
一度別れた彼の後ろ姿は、見当たらなかった
… どこにいるんだろう、
もしかしたら
もう、いないんだろうか、
そう考えるだけで、
妙な焦燥感に駆られて
カタン、
周りを見回すために、私も席を立つと
「ねーちゃん、」
「… あ、リョウ、」
さっきまで輪の中心にいた弟の姿
「中庭で写真撮るからさ、ねーちゃんも入ってよ」
私の腕を掴みながら微笑む彼が指差す方向に視線を向ければ、開いた大きな窓の外でこちらに手招きする、ユウシくんとデヨンくん
すぐに2人の周りをぱっと目を凝らして見るけれど
やはりそこにも、
私の視線が追い求める影は存在しなくて
無意識にまた、会場の中に視線を巡らす
「リョウーー!!お嫁さんが待ってるぞーーー!」
「あーもううるさいな、今行くよー」
デヨンくんの呼びかけに楽しげに笑いながら、ねーちゃん、とまた、私の手を軽く引く弟に
彼の方を振り返ろうとした、その瞬間
私の視界の端を掠めた、見覚えのある黒髪
会場の扉を開き、
廊下の方へ出て行く後ろ姿に
振り向きかけた視線を急いで戻すけれど
焦点が合う頃にはもう
その姿はその場からは消えていた
… それでも、
.
「… ねーちゃん?」
「あ… ごめん、リョウ。
ちょっと… メイク、直してくるね。先にみんなと撮ってて」
固まった私を心配そうに見つめていた弟に、咄嗟にそう言い訳して
私の腕を掴んでいた手をそっと外す
「リョウーーー!!!」
「あーもーまじ… ならねーちゃん、また後でね」
「うん。早く行ってあげて」
そう声をかけて、微笑めば
リョウは私にぱっと手を振って、「デヨンイヒョン、うるさ!」と、笑いながらまた輪の中に戻っていく
その背中を見送ってから、
私も会場の外に出た
.
披露宴が終わった、広い会場
柔らかな日差しを受け入れる、大きな窓
すっきりと晴れた昼下がりの空気は
いつもよりも穏やかで、暖かくて
それまでの落ち着いた雰囲気から一転し
またがやがやと騒がしくなった空間
散り散りにテーブルを離れていく人たちと会釈を交わしながら
さりげなく辺りを見回し、"彼"の姿を探す
… けれど
視界に入る人影は、どれも
彼のそれとは、異なるもので
『僕たち、席、向こうなんで。
……… また、後で』
そう言って、
一度別れた彼の後ろ姿は、見当たらなかった
… どこにいるんだろう、
もしかしたら
もう、いないんだろうか、
そう考えるだけで、
妙な焦燥感に駆られて
カタン、
周りを見回すために、私も席を立つと
「ねーちゃん、」
「… あ、リョウ、」
さっきまで輪の中心にいた弟の姿
「中庭で写真撮るからさ、ねーちゃんも入ってよ」
私の腕を掴みながら微笑む彼が指差す方向に視線を向ければ、開いた大きな窓の外でこちらに手招きする、ユウシくんとデヨンくん
すぐに2人の周りをぱっと目を凝らして見るけれど
やはりそこにも、
私の視線が追い求める影は存在しなくて
無意識にまた、会場の中に視線を巡らす
「リョウーー!!お嫁さんが待ってるぞーーー!」
「あーもううるさいな、今行くよー」
デヨンくんの呼びかけに楽しげに笑いながら、ねーちゃん、とまた、私の手を軽く引く弟に
彼の方を振り返ろうとした、その瞬間
私の視界の端を掠めた、見覚えのある黒髪
会場の扉を開き、
廊下の方へ出て行く後ろ姿に
振り向きかけた視線を急いで戻すけれど
焦点が合う頃にはもう
その姿はその場からは消えていた
… それでも、
.
「… ねーちゃん?」
「あ… ごめん、リョウ。
ちょっと… メイク、直してくるね。先にみんなと撮ってて」
固まった私を心配そうに見つめていた弟に、咄嗟にそう言い訳して
私の腕を掴んでいた手をそっと外す
「リョウーーー!!!」
「あーもーまじ… ならねーちゃん、また後でね」
「うん。早く行ってあげて」
そう声をかけて、微笑めば
リョウは私にぱっと手を振って、「デヨンイヒョン、うるさ!」と、笑いながらまた輪の中に戻っていく
その背中を見送ってから、
私も会場の外に出た
.