このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

Bite -3years later-

.








不意に耳に入った、その懐かしい響きに

ドクン、と
鈍い鼓動が、心臓を揺らす








「サクヤどこ行ってたんだよ」

「すいません、急に会社行かないとだめになって、さっき着いたんです」









久々に聴く、その声は

以前よりもずっと低く、安定していて









「リョウかっこいいじゃん。珍しく」

「は、おい!珍しくって何だよ!お前~!」

「ははっ、あ、ちょっ!やめ」









わずかに見える笑顔に

ぎゅっと、胸が苦しくなる









瞳に映る、その姿は

私が知っている彼とは、似ても似つかないのに








"彼"だと認識してしまった脳も、心臓も

その動きを止めてくれなくて







ギリギリと締め付けられる胸に、

喉が熱くなって、息が詰まる







苦しい呼吸に、なんとか息を吐き出すと

ふとこちらを見たその瞳と、視線が絡む









私と目が合った、その瞬間に


"彼"は、その真っ黒な瞳を、ぱっと見開いた









「あ、そうだ」





私たちが視線を交わしたことに気付いたのか、

弟は何かをひらめいたように呟いて、彼の腕を引き、私の前に立たせる




「ねーちゃん、初めましてだよね。こいつもおれらと一緒にダンスしてるんだ。サクヤ、前話したよな?ねーちゃんのこと」

「あー… うん、」




リョウのその言葉に頷いて

ゆっくり視線を私に戻す彼と、また目が合えば

これまで影を潜めていた感情が
まるで色を取り戻したように、鮮明に蘇って




以前より、ほんの少し背の伸びた彼は

わずかに戸惑いながらも、微笑んで
私にそっと、手のひらを差し出した








「藤永咲哉です。

… 初めまして、 "望叶"さん」









… 以前と同じように、

その赤い唇から溢れる、私の名前に



熱くなった喉を隠すように、その手を取った








「… 初めまして、

さくや、くん」








そう返せば、

彼は一度俯いてから、穏やかに微笑んで見せた








.
6/10ページ