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Bite -3years later-

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実際、時間が経てば経つほど

私の記憶の中だけに残る"彼"の影は、徐々に薄れていった








2年も経てば、もう

彼の実在に対する執着心は、ほとんど薄れていて




このまま忘れられると、そう、信じていた







… けれど







その考えが打ち砕かれたのは、

1年前のことだった


















『… 結婚しない?俺ら』








新しく住み始めた、アパートの一室

以前とは全く間取りの異なる部屋





穏やかな空気が満たすその空間で

リクは不意に、そう言った





彼らしくない、ストレートな言葉と

そのあまりにも唐突な発言に

私は思わず、固まってしまったのだけれど








… 率直に、嬉しかった







リクはいつでも、私に寄り添って

何もかも全て受け止めて、包み込んでくれる






このまま彼と一緒にいれば

確実に、幸せになれる








そう、分かっていた








… けれど








なぜかその瞬間に

ふと瞼の裏に浮かんだのは
孤独に怯えた、あの漆黒の瞳で






耳の奥に響いたのは、

最後に聴いた、
息の切れた、掠れた声









それまで記憶の奥底に沈んでいたはずの、彼の欠片

それらが、なぜか一瞬で鮮明に思い出されて









同意を示すために用意した言葉は全て

喉を滑り落ちるように、身体の中に溶けてしまった









そのまま黙り込んだ私に

リクは、曖昧に微笑んで





『… 気ぃ早すぎたか』





そう言って、

軽く私を抱き寄せてくれたのだけれど








その日を境に

私たちの関係には、少しずつヒビが入って








結局、数ヶ月前
また、別れを告げた身勝手な私を


リクは引き留めることもせず、頷いて


私たちはまた、恋人であることをやめてしまったのだった







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