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Bite -change-











次に目を覚ました時には

開いた扉の隙間から、眩いほどの朝日が差し込んでいた







身体中に感じる気だるさと

何かが足りないような違和感









ふと視線を向けた左隣には

もう、彼の姿はなかった









しわになった白いシーツ

その温もりの欠片も残さない空間









ただ、何気なく

彼が眠っていた場所を、掌でなぞってから

私は、寝室を出た








.








裸足でリビングに出れば

その空気を揺らすのは、

私が鳴らす足音と
繰り返す小さな呼吸の音だけで





少し部屋を歩き回ってみれば

彼が使っていた様々なものが、この空間から実在を消したことに気付く








彼が使っていた箸も、歯ブラシも

私に出会った日に着ていた服も

玄関先の白いスニーカーも、すべて








この部屋に漂っていたその存在、すべてを

まるで初めから、なかったものにするかのように









彼はその物たちと共に

この部屋を去ったようだった









少し、その質量を軽くした部屋

その中央に立って、ただ、ぼんやりと

窓から入ってくる光に、目を向ける









… なんとなく、分かっていた









昨夜、彼が私に手を伸ばした瞬間から

彼の瞳の色が、わずかに違うこと







私に触れるその手つきが

前とは何か、違う意味を含んでいること








…… 彼が、

"変わろう"としてること









だから

すべて、分かっていたから





悲しくも、寂しくもなかった









.









『……… 望叶、』







目を閉じれば

耳の奥に反響する、
昨夜の彼の声






耳元を掠める、その乱れた呼吸

途絶えていく意識の中で聴いた、最後の彼の言葉






… その言葉が、

夢か、現実か

それは、分からないけれど






ふとその言葉を思い出した瞬間

頬に、冷たい感触が伝った









.









『……………… 愛してる』









.
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