Bite -change-
*
次に目を覚ました時には
開いた扉の隙間から、眩いほどの朝日が差し込んでいた
身体中に感じる気だるさと
何かが足りないような違和感
ふと視線を向けた左隣には
もう、彼の姿はなかった
しわになった白いシーツ
その温もりの欠片も残さない空間
ただ、何気なく
彼が眠っていた場所を、掌でなぞってから
私は、寝室を出た
.
裸足でリビングに出れば
その空気を揺らすのは、
私が鳴らす足音と
繰り返す小さな呼吸の音だけで
少し部屋を歩き回ってみれば
彼が使っていた様々なものが、この空間から実在を消したことに気付く
彼が使っていた箸も、歯ブラシも
私に出会った日に着ていた服も
玄関先の白いスニーカーも、すべて
この部屋に漂っていたその存在、すべてを
まるで初めから、なかったものにするかのように
彼はその物たちと共に
この部屋を去ったようだった
少し、その質量を軽くした部屋
その中央に立って、ただ、ぼんやりと
窓から入ってくる光に、目を向ける
… なんとなく、分かっていた
昨夜、彼が私に手を伸ばした瞬間から
彼の瞳の色が、わずかに違うこと
私に触れるその手つきが
前とは何か、違う意味を含んでいること
…… 彼が、
"変わろう"としてること
だから
すべて、分かっていたから
悲しくも、寂しくもなかった
.
『……… 望叶、』
目を閉じれば
耳の奥に反響する、
昨夜の彼の声
耳元を掠める、その乱れた呼吸
途絶えていく意識の中で聴いた、最後の彼の言葉
… その言葉が、
夢か、現実か
それは、分からないけれど
ふとその言葉を思い出した瞬間
頬に、冷たい感触が伝った
.
『……………… 愛してる』
.
次に目を覚ました時には
開いた扉の隙間から、眩いほどの朝日が差し込んでいた
身体中に感じる気だるさと
何かが足りないような違和感
ふと視線を向けた左隣には
もう、彼の姿はなかった
しわになった白いシーツ
その温もりの欠片も残さない空間
ただ、何気なく
彼が眠っていた場所を、掌でなぞってから
私は、寝室を出た
.
裸足でリビングに出れば
その空気を揺らすのは、
私が鳴らす足音と
繰り返す小さな呼吸の音だけで
少し部屋を歩き回ってみれば
彼が使っていた様々なものが、この空間から実在を消したことに気付く
彼が使っていた箸も、歯ブラシも
私に出会った日に着ていた服も
玄関先の白いスニーカーも、すべて
この部屋に漂っていたその存在、すべてを
まるで初めから、なかったものにするかのように
彼はその物たちと共に
この部屋を去ったようだった
少し、その質量を軽くした部屋
その中央に立って、ただ、ぼんやりと
窓から入ってくる光に、目を向ける
… なんとなく、分かっていた
昨夜、彼が私に手を伸ばした瞬間から
彼の瞳の色が、わずかに違うこと
私に触れるその手つきが
前とは何か、違う意味を含んでいること
…… 彼が、
"変わろう"としてること
だから
すべて、分かっていたから
悲しくも、寂しくもなかった
.
『……… 望叶、』
目を閉じれば
耳の奥に反響する、
昨夜の彼の声
耳元を掠める、その乱れた呼吸
途絶えていく意識の中で聴いた、最後の彼の言葉
… その言葉が、
夢か、現実か
それは、分からないけれど
ふとその言葉を思い出した瞬間
頬に、冷たい感触が伝った
.
『……………… 愛してる』
.