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Bite -change-

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ドクン、


身体中に、
そんな鼓動の音が響いたような気がした







" 捨てられた "







その言葉に、

また、あの雨の日の映像が瞼の裏に浮かび上がる








吐き出そうとした息を思わず飲み込むと、

シオンさんは下唇を軽く噛んで、また口を開いた









「… 僕が中学生の頃、僕の父と、彼の母が再婚したんです

けどその時は、僕も彼の存在を知りませんでした。母に離婚歴があるのは知っていましたが、子どもがいることは聞かされていなかったので…、


僕が弟の存在を知ったのは、つい半年ほど前のことです。僕が実家を出ることになった時、母の口から彼のことを聞きました。『あなたには弟がいるのよ』、と」









そこまで語ると、シオンさんは一度言葉を切って、また深く息を吐いた









「僕の父と出会った当初に、母は彼を施設に預けたそうです。詳しい理由までは分からないんですが… 、それでも、母が彼を手放したことには変わりありません


その話を聞いてすぐ、僕は彼を探しました


そしていくつか施設を回った後、ようやく会うことが出来たんです」








そう言って、また少し微笑むと

手元のカップの縁をその指先でなぞって
ゆっくり、目を閉じた








「… 初めは、というか、ずっと、彼は僕のことを警戒しているようでした。当たり前と言えば当たり前なんですけど… 、それでも、その後も僕は何度か彼に会いに行きました。言葉を交わすことはできなくても、少しでも距離が縮まればと思って


… けど、数ヶ月前にまたその施設に行ったら、彼はもういないと言われました。おそらく夜のうちに自力で抜け出して、それから帰ってきていないと」


「……… 、」








脳内に映し出される、あの日の彼の姿




… おそらく、あの日に

彼は、その場から逃げ出してきたんだろう





そう考えるだけで、

訳もなく、息が詰まった









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