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Bite -change-

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「初めにひとつ、お尋ねしてもいいですか?」





やっとカフェラテに口を付けたシオンさんは、小さく咳払いをしてからそう言って、手にしていた白いカップを静かにテーブルに置いた




それにつられるように、

私もカップから手を離すと






「… どうやって、僕の電話番号を?」






彼は少し気まずそうに
私の顔をちらりと見た







… ああ、そういえば、







その言葉で、
ふと、数週間前のことを思い出した







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リョウがあの部屋に来た日

彼が私に手渡した小さな紙






弟があの部屋を出て行った後も





私の思考は、その紙に書かれた文字と

"彼"とを繋ぐ何かを、必死で探していて







そんな思考の末に、


私はその数字を頼りに

その番号に、電話を掛けたのだった









… 繋がるなんて、思ってはいなかった









そもそも、

それが電話番号なのかも、定かではないし





たとえ電話番号だったとしても

その相手方と"彼"に接点があるのかも、不透明で









… それでも

私がその行動を選んだのは




たとえ鱗片だったとしても、彼を




… サクヤを、知りたいと




そう、思ったからだろう







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簡潔にその経緯をシオンさんに伝えると

彼は『ああ、』と呟きながら、

納得したようにまたカップに手を伸ばした








「… 一応、捨てずに持っててくれたんだ」








ぽつりとそう呟いて

その潤んだ唇をカップにつける






… その何気ない言葉が、

妙に、心の隅にひっかかった









数日前

電話口で、私が"彼"の名前を出した瞬間




それまで至って冷静に話していたシオンさんは、突如動揺したかのように、声色を変えた








『…… "彼"を、知っているんですか?』









焦りと戸惑いと驚きが入り混じった、

そんな複雑な感情を抑え込んだような声








その声がまた、耳の奥で反響した瞬間

私は無意識に、口を開いていた









「あの… 、失礼ですが、」

「はい?」









少し首を傾げた彼に、

一度息を吐いて、尋ねる









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「彼、とは… 、


… サクヤとは、どういうご関係で?」









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