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Bite -change-









『いまからねーちゃんの家行ってもいい?』





弟から久しぶりにそんな連絡が来たのは

そろそろ眠りにつこうとした、
金曜日の夜更けのことだった








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「ん、水飲む?」

「あー… ありがと、飲む」




その連絡から数十分後、

スーツ姿のままソファに身を沈める弟にグラスを手渡しながら、私もその隣に腰掛ける




グラスに口をつける横顔は、ほんのり上気していて


まだアルコールが抜けていないのか、

心なしか、行動ひとつひとつも気だるそうに見えた




「ユウシくんとかは大丈夫だったの?」

「んー… たぶん。おれ途中で抜けてきちゃったから、わかんないけど」

「そう、」




んん、と少し体を伸ばすリョウ




彼が身に纏うスーツからは

アルコールと煙が混ざったような、複雑な香りがした







… 電話口の、リョウの話によれば
今日は、仕事終わりにそのまま飲みに行ったそうで

気付けば終電がなくなっていて

たまたまその場所が、私の家の近くだったらしい






…… 私は別に、かまわないのだけれど

またグラスに口をつける横顔に、気になったことを尋ねた





「… ここからだったら、楓ちゃんの家も近いんじゃないの?」





楓ちゃん、は

リョウが2年ほど付き合っている彼女で

私の記憶が正しければ、
あの駅の辺りに住んでいたはず




… もしかして、




そう思いつつ、彼を見つめると

リョウはあぁ、と呟いてから、手で後ろ髪を掻いた





「最初、それも思ったんだけど。でも、もう夜遅いし、迷惑かなと思って。… それに、こんな真夜中に家の鍵開けさせたくないし」





そう言って、また一口水を含む




… ああ、なんだ、

どうやら、彼女とは順調らしい




それを知って、少し胸を撫で下ろした





「… いい彼氏やってるね」

「はー?普通だよ、こんなの」





そう言って、照れ隠しのように鼻を擦る





少し緩んだ表情に、安心すると同時に

なぜか、

リョウの醸し出す雰囲気に、違和感を覚えた







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