Bite -change-
*
『いまからねーちゃんの家行ってもいい?』
弟から久しぶりにそんな連絡が来たのは
そろそろ眠りにつこうとした、
金曜日の夜更けのことだった
------
「ん、水飲む?」
「あー… ありがと、飲む」
その連絡から数十分後、
スーツ姿のままソファに身を沈める弟にグラスを手渡しながら、私もその隣に腰掛ける
グラスに口をつける横顔は、ほんのり上気していて
まだアルコールが抜けていないのか、
心なしか、行動ひとつひとつも気だるそうに見えた
「ユウシくんとかは大丈夫だったの?」
「んー… たぶん。おれ途中で抜けてきちゃったから、わかんないけど」
「そう、」
んん、と少し体を伸ばすリョウ
彼が身に纏うスーツからは
アルコールと煙が混ざったような、複雑な香りがした
… 電話口の、リョウの話によれば
今日は、仕事終わりにそのまま飲みに行ったそうで
気付けば終電がなくなっていて
たまたまその場所が、私の家の近くだったらしい
…… 私は別に、かまわないのだけれど
またグラスに口をつける横顔に、気になったことを尋ねた
「… ここからだったら、楓ちゃんの家も近いんじゃないの?」
楓ちゃん、は
リョウが2年ほど付き合っている彼女で
私の記憶が正しければ、
あの駅の辺りに住んでいたはず
… もしかして、
そう思いつつ、彼を見つめると
リョウはあぁ、と呟いてから、手で後ろ髪を掻いた
「最初、それも思ったんだけど。でも、もう夜遅いし、迷惑かなと思って。… それに、こんな真夜中に家の鍵開けさせたくないし」
そう言って、また一口水を含む
… ああ、なんだ、
どうやら、彼女とは順調らしい
それを知って、少し胸を撫で下ろした
「… いい彼氏やってるね」
「はー?普通だよ、こんなの」
そう言って、照れ隠しのように鼻を擦る
少し緩んだ表情に、安心すると同時に
なぜか、
リョウの醸し出す雰囲気に、違和感を覚えた
.
『いまからねーちゃんの家行ってもいい?』
弟から久しぶりにそんな連絡が来たのは
そろそろ眠りにつこうとした、
金曜日の夜更けのことだった
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「ん、水飲む?」
「あー… ありがと、飲む」
その連絡から数十分後、
スーツ姿のままソファに身を沈める弟にグラスを手渡しながら、私もその隣に腰掛ける
グラスに口をつける横顔は、ほんのり上気していて
まだアルコールが抜けていないのか、
心なしか、行動ひとつひとつも気だるそうに見えた
「ユウシくんとかは大丈夫だったの?」
「んー… たぶん。おれ途中で抜けてきちゃったから、わかんないけど」
「そう、」
んん、と少し体を伸ばすリョウ
彼が身に纏うスーツからは
アルコールと煙が混ざったような、複雑な香りがした
… 電話口の、リョウの話によれば
今日は、仕事終わりにそのまま飲みに行ったそうで
気付けば終電がなくなっていて
たまたまその場所が、私の家の近くだったらしい
…… 私は別に、かまわないのだけれど
またグラスに口をつける横顔に、気になったことを尋ねた
「… ここからだったら、楓ちゃんの家も近いんじゃないの?」
楓ちゃん、は
リョウが2年ほど付き合っている彼女で
私の記憶が正しければ、
あの駅の辺りに住んでいたはず
… もしかして、
そう思いつつ、彼を見つめると
リョウはあぁ、と呟いてから、手で後ろ髪を掻いた
「最初、それも思ったんだけど。でも、もう夜遅いし、迷惑かなと思って。… それに、こんな真夜中に家の鍵開けさせたくないし」
そう言って、また一口水を含む
… ああ、なんだ、
どうやら、彼女とは順調らしい
それを知って、少し胸を撫で下ろした
「… いい彼氏やってるね」
「はー?普通だよ、こんなの」
そう言って、照れ隠しのように鼻を擦る
少し緩んだ表情に、安心すると同時に
なぜか、
リョウの醸し出す雰囲気に、違和感を覚えた
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