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Bite -memory-

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「んっ… ?」





『噛まれる』


そう身構えていたからか、

突然与えられたその温かな感覚に
思わず閉じた目をまた開く






彼の黒い睫毛が私の視界に入ると

今度はその湿った舌先が、私の唇をなぞる






それからまた押し当てられる赤い唇に

いつもとは何かが違うことを確信する






そのまま、何度か角度を変えながらキスをして

その唇と舌が私を離せば、

少し熱を帯びたその瞳には、私が反射して





… やはり、

どこかに、違和感を覚えた









「サクヤ… ?、」









私をその視界に捉えたまま、

瞬きと静かな呼吸だけを繰り返す彼の名前をもう一度口にすれば


彼の大きな手が、私の頬を掠めて

そのまま、乾かしたばかりの髪に指を通し、横髪を雑に耳にかける





そして、すっとそこに顔を寄せて

今度は
露わになった耳に、ゆっくりと舌を這わす







「ん、… っ」








その感覚に、

背中にゾクゾクと痺れが走った








その、次の瞬間









「いっ…… !」









突如、

その刃が、皮膚に突き立てられる






いつもとは違う、鋭い痛みに

思わず顔が歪み、片耳に熱が集まる






まるでピアスホールを噛み切るように

きつく喰いこむ、その歯先








「痛いっ……… !」









とっさに彼の胸を押し返せば、

すぐにその刃は離れて

代わりにまた、生温い感覚が伝う






まるで消毒でもするかのように、傷口に舌を這わせて

そこから唇を離せば、また私の唇を塞ぐ







それと同時に

身に纏ったばかりの服の中に、彼の冷たい手が入って








腰から肩まで、ゆっくりと

遮るもののない素肌を、その手が這う







未だ熱を持つピアスホールの痛み

それと混ざり合う、彼の掌がもたらす快感







… うまく、頭が働かなくて

彼に抵抗することすら、ままならない







ただ崩れ落ちないように、
必死で彼の肩にしがみついていると


いきなり掬い上げるように身体を持ち上げられて、真っ暗なベッドの上に押し倒される







温めたばかりの肌を刺すその冷たさと

闇の中で感じる、私に向いた熱い視線







… そうなってしまえばもう、

私には、どうすることもできなくて








私の服を剥ぐように脱がせて

身体中に柔く噛みついていく彼に



ただ身を任せることしか、出来なかった









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