Bite -memory-
*
リクと知り合ったのは、
私がまだ大学生の頃だった
同じ学部で、ひとつ年下の彼
… 出会いのきっかけは、何だっただろう
そんなことも思い出せないほど、
私たちの出会いは何気ないものだったけれど
『… 望叶さん、
隣いいですか?』
昼下がりの図書館で、
一緒に本を読んで過ごしたり
『俺、家まで送りますよ』
寄り道もせずただ、
並んで夕暮れの道を歩いたり
『あー、俺もその監督の映画好きです』
たまには
趣味の話で盛り上がったり
彼と過ごす穏やかな時間は
ごく自然に、私たちを引き合わせて行って
『…俺と、付き合ってくれませんか?』
大学3年生の冬
そう言った彼の手を取って、
穏やかに、私たちの恋は始まった
彼の隣は、心地よくて
それまでの恋愛の無駄な詮索も嫉妬も何もかも、
私たちの間には、存在しなかった
そのせいか、周りからは淡白な2人だと言われていたらしいけれど、別に良かった
ただ、彼がいて
その温もりに時折触れる
それだけで安心出来たし、
特に何も望まなかった
… 彼と恋人でいたのは、2年間
別れを告げたのは、私だった
大学を卒業して、
就職した、1年目
変わってしまった環境と慣れない仕事に疲れて
彼とはすっかり疎遠になってしまっていた
そんな曖昧な関係をはっきりさせるため
電話口で、簡潔に別れを告げれば、
『… そっか。
うん、わかった』
彼独特の静かな声で、そう言って
私たちの恋は、終わりを迎えたのだった
… 彼のことが、嫌いになったわけではなかった
むしろ、会わなければ会わずにいるほど
その温もりと優しさを求めてすらいた
… 別れを告げたのは、
そんな自分に、嫌気がさしたからだろうか
今思えば、自分勝手な決断だったと思う
だけど彼は私を責めることも、
逆に慰めることもしなかった
… きっと、
私の考えを尊重してくれる、彼だから
私の出した答えに、
抗うつもりなんて、初めからなかったんだろう
その証拠に
別れを告げたその瞬間
彼はすっぱり、私の恋人であることを辞めた
それ以降、
会うことはおろか、
連絡を取ることすらしなかった
… それから、3年
久々の彼との再会は、
私の胸の奥に、わずかな違和感を残したのだった
.
リクと知り合ったのは、
私がまだ大学生の頃だった
同じ学部で、ひとつ年下の彼
… 出会いのきっかけは、何だっただろう
そんなことも思い出せないほど、
私たちの出会いは何気ないものだったけれど
『… 望叶さん、
隣いいですか?』
昼下がりの図書館で、
一緒に本を読んで過ごしたり
『俺、家まで送りますよ』
寄り道もせずただ、
並んで夕暮れの道を歩いたり
『あー、俺もその監督の映画好きです』
たまには
趣味の話で盛り上がったり
彼と過ごす穏やかな時間は
ごく自然に、私たちを引き合わせて行って
『…俺と、付き合ってくれませんか?』
大学3年生の冬
そう言った彼の手を取って、
穏やかに、私たちの恋は始まった
彼の隣は、心地よくて
それまでの恋愛の無駄な詮索も嫉妬も何もかも、
私たちの間には、存在しなかった
そのせいか、周りからは淡白な2人だと言われていたらしいけれど、別に良かった
ただ、彼がいて
その温もりに時折触れる
それだけで安心出来たし、
特に何も望まなかった
… 彼と恋人でいたのは、2年間
別れを告げたのは、私だった
大学を卒業して、
就職した、1年目
変わってしまった環境と慣れない仕事に疲れて
彼とはすっかり疎遠になってしまっていた
そんな曖昧な関係をはっきりさせるため
電話口で、簡潔に別れを告げれば、
『… そっか。
うん、わかった』
彼独特の静かな声で、そう言って
私たちの恋は、終わりを迎えたのだった
… 彼のことが、嫌いになったわけではなかった
むしろ、会わなければ会わずにいるほど
その温もりと優しさを求めてすらいた
… 別れを告げたのは、
そんな自分に、嫌気がさしたからだろうか
今思えば、自分勝手な決断だったと思う
だけど彼は私を責めることも、
逆に慰めることもしなかった
… きっと、
私の考えを尊重してくれる、彼だから
私の出した答えに、
抗うつもりなんて、初めからなかったんだろう
その証拠に
別れを告げたその瞬間
彼はすっぱり、私の恋人であることを辞めた
それ以降、
会うことはおろか、
連絡を取ることすらしなかった
… それから、3年
久々の彼との再会は、
私の胸の奥に、わずかな違和感を残したのだった
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