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Bite -start-

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「え… 、」




そう呟いた時には、遅かった




次の瞬間には、
少年の冷えた右手は、私の服の襟にかかっていて

そのままぐっと服を引っ張られれば

露わになった皮膚にかかる、その吐息






私の承諾も拒絶も聞かずに

少年はそこに顔を寄せて

そのまま、私の鎖骨に歯を立てる







無機質なその刃がゆるく肌に当たった瞬間、

また、背筋がゾクっと震えた







「え、や、やだっ………… 」









反射的にその肩を押せば、

ぱっと噛みつくのをやめて、顔を上げる







「… いたい?」







私の服の襟に未だ手をかけたまま、

そう呟いて、彼は少し首を傾げる






私を反射する、虚ろな黒い瞳






そこに潜む虚無感と

有り余るほどの存在感







その矛盾にまた、飲み込まれて








「い…… 痛くは、ない、けど………… 」







気付けば、

私はそんな、歯切れの悪い返事をしていた








私の返事を聞いた彼は、

また徐に、私の首元に顔を寄せて



そっと目を閉じて

今度はゆっくり、私に噛みついた







「っ………… 、」







鎖骨辺りに感じる、わずかに棘のある感覚

それと同時に皮膚に伝う、彼の熱い唾液







柔く歯を立てては、少し離して

また噛みついて、同じところを舌でなぞる






その感触に、

また、ゾクゾクと背中が痺れる







何度も同じことを繰り返して


徐々に濡れていく皮膚と

妙に火照り出す身体






鳥肌が立つほど、違和感を覚えるのに





なぜか、

私にその少年を拒絶することは、出来なくて






彼がその行為を辞めるまで

私はただ、彼に噛みつかれながら

襲ってくる快感にも似た何かを抑え込むように、
その肩にしがみつくことしか、出来なかった









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