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Bite -the past-








「私リビングで寝るから、ここ使ってね」





もうすぐで日付が変わる頃




そう言って彼を寝室に通し、ベッドに座らせる




私の言葉に、

彼は頷くことも、首を振ることもしなかった




…… けれど、





「… じゃあ、おやすみ」





そう最後に声をかけて、
寝室を出ようと背を向けた瞬間




突然ぱっと、手首を掴まれた




それに驚いて振り返ると、

また、あの真っ黒な瞳と、視線が絡んで

身体の奥で、鼓動が響いた








「… いかないで」

「え、」

「…… となりいて」









その濁った瞳に、私を映したまま

少年は小さく、でも確かに、そう呟いた





初めて聞いた彼の声は

思ったよりも幼く、掠れていて






単語単語だけを発して

私の手を掴んだまま、じっと私を見つめる彼に





… その時には既に

私は、侵食され始めていたんだろう









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その次の日、目を覚ませば

私の隣には、いつもはない大きな背中があった





… 結局その日は
彼と同じベッドで眠ることになったのだけれど


彼は私に手を出すどころか、

それ以上触れることもせず


すぐに私に背を向けて、
眠りに落ちてしまったのだった





… やっぱり、不思議な少年だ、





そうは思いながらも

彼のいる空気に、
私は明らかに順応し始めていた





しばらくして起きてきた彼と一緒に朝食をとって

身支度を済ませて、ソファに座る彼に歩み寄る






何も考えずに彼と共に過ごしていたけれど

これからこの少年は、どうするんだろうか






元いた場所に帰るのか

それとも… 、





「…… 私、これから仕事行くけど」






"君は、どうする?"




そう、尋ねる前に



「…… ここ、」



少年は私を見上げながら、そう呟いた









「… おれ、

ここが、いい」









躊躇いもなく、逡巡もせず

私をじっと見つめたまま

彼ははっきり、そう言った







その瞬間から

私と彼のこの奇妙な同居生活は始まって






私の世界の半分は、

"彼"という存在を含み

瞬く間に、その色を変えたのだ









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