青藍と天鵞絨
【hold me hold you】
ベレトの顔を覗き込みながら、リンハルトは不満そうな顔をする。
「好きにさせてくれるって言ったじゃないですか」
「確かに言ったがそうじゃなくてだな……」
ベレトはとても悔しそうな顔をしながら言った。
記念すべき、新婚初夜。
念願叶って互いの想い人として結ばれたベレトとリンハルトだったが、彼らには今、重大な問題が持ち上がろうとしていた。
そう。
どちらが抱くか、抱かれるか、だ。
「嫌なんですか?」
「嫌なわけないだろう」
リンハルトの問いに対して、ベレトは即答する。
二人で広々と眠れるようにとわざわざ誂えた大きめのベッドの上で、リンハルトはベレトを押し倒し、ベレトはリンハルトに押し倒されていた。
「ですよねえ」
リンハルトはしみじみと、だが嬉しそうに言った。
「先生、僕のこと大好きですもんね」
リンハルトの滑らかな指が、ベレトの頬を撫でる。
撫でられたそこに、わずかに熱が集まるのを感じながら、ベレトは頬を擦り寄せた。
「嫌ではないし、その、確かに好きにさせてやるとは、約束したが……」
「まだ早い、ですか?」
すっかりお決まりになってしまった断り文句をリンハルトが口にすると、ベレトは首を横に振り、両手で顔を覆う。
「……お前を抱くのを、かなりとても楽しみにしていたんだ、俺は……」
「奇遇ですね、僕もなんですよ」
リンハルトは、ひたすら楽しそうににこにこと笑っていた。
「貴方のことだから、自分が抱かれるなんて思ってもみないだろうなと」
「分かっててこれか……」
「別にいいんですけどね、先生になら。抱いても、抱かれても」
リンハルトはそう言って、甘えるようなキスを落とす。
「でも今日は、僕が貴方を欲しいんです」
駄目ですか、と囁かれて、ベレトはついに観念することにした。
「……どうせ、断られると思ってないんだろう」
「もちろん」
「……大した自信だ……」
ベレトはやれやれと笑って、両腕を広げてみせた。
「おいで、リンハルト」
リンハルトは幸せそうに笑うと、その腕の中に滑り込むようにして、また唇を重ねた。