赤褐色の青年は何のために剣を握るのか
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訓練所の片隅、朝もやの中に小さな影がひとつ、木剣を振っていた。
「遅い。腕が甘いぞ、レオ!」
ベルトホルトの怒声が響き渡る。
太い腕を組み、彼は少年の動きを鋭く見つめていた。
レオは、黙ってもう一度、木剣を構える。
額には汗が滲み、足元は泥だらけだった。
訓練が始まってから、すでに三ヶ月が過ぎていた。
最初のうちは剣すら満足に持てず、体もすぐに倒れ込んだ。
けれど、誰よりも早く起き、誰よりも遅くまで鍛錬を重ねた。
「力じゃない。体の軸だ。剣は振るんじゃない、流れに乗せるんだ」
そう言って、ベルトホルトは自ら模範を見せた。
一歩、踏み込み、腕の軌道が滑らかに空を裂く。
それを見ていたレオの瞳がわずかに揺れた。
「あんた、なんで俺にこんなこと教えるんだ」
ぽつりとこぼれた本音に、ベルトホルトは少しだけ口元を緩めた。
「お前は、命を軽んじていない目をしていた。
奪うための剣じゃなく、誰かを守るための剣を――お前は握れるかもしれないと、そう思った」
「守るための……剣?」
「そうだ。剣は道具だ。誰のために使うかで、意味が変わる」
レオは、黙ってうつむいた。
「俺は、誰かのために……生きたことなんてなかった」
「なら、それを探せ。剣の使い方を知るってのは、自分が何を守りたいかを知るってことだ」
それは、レオの中の何かを静かに揺らした。
────
時は過ぎ、半年後。
軍学校の試験を受けるかどうか、ベルトホルトに問われたとき――
レオは、しばらく言葉を失っていた。
かつての自分なら、そんなものには見向きもしなかった。
命令され、使い捨てにされるだけの“兵士”というものに、希望などなかったからだ。
けれど今は、違った。
鍛錬を通じて、体が強くなっただけではない。
ベルトホルトの言葉が、拳が、時折くれるパンとスープが、
レオの乾いた心に、少しずつ温度を戻していた。
「俺、兵士になるよ」
静かな決意だった。
「……誰かに言われてじゃない。俺自身の意志で、なりたいって、今は思う」
ベルトホルトは、無言で頷いた。
その瞳には、かつて息子を亡くした男の、深い情があった。
「そうか。なら、俺の教えられることは、全部教えてやる」
「うん……よろしく、師匠」
その言葉に、ベルトホルトの顔が一瞬、笑み崩れたように見えた。
「バカ野郎、笑わせんな」
