赤褐色の青年は何のために剣を握るのか
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
朝靄の漂う訓練場――
木の杭で囲まれたその空間に、冷たい風が吹き抜けた。
草は踏みならされ、地面には数えきれない足跡と、打ち合いの痕が残っている。
その中央で、レオは一本の訓練用の木剣を手にしていた。
長年使われてきたそれは、表面に無数の傷が刻まれ、柄はすっかり滑らかになっていた。
「……」
手に馴染む感覚と、どこか懐かしい重み。
木剣をそっと構えたその瞬間――
背後から声が飛んだ。
「レオ、お前、剣を握ったことがあるな?」
レオは肩をすくめて、くるりと振り返った。
そこには腕組みしたベルトホルトが立っている。重たい視線が、彼を真っ直ぐに見つめていた。
「あるわけないよ。俺には剣の才能なんてない」
言いながら、レオは木剣をだらりと下げ、視線を逸らす。
心の奥底に、わずかな震えがあった。それは過去から来る恐れか、それとも、未来への不安か。
だがベルトホルトは、にやりとも苦笑ともつかぬ表情で答えた。
「いや、あるさ。……剣は命を奪うためだけの道具じゃねえ」
レオが顔を上げる。
「剣ってのはな、大事な奴を守るための“盾”にもなる」
その言葉に、少年の胸がかすかに震えた。
ベルトホルトは歩み寄り、訓練場に落ちていた別の木剣を拾う。
「レオ、お前はきっと、誰かを守りたいと思ったときに――本当に強くなれる奴だ」
「……守る?」
「そうだ。誰かのために生きて、誰かのために剣を振るう。
そういう奴が最後に立ってるんだ」
ベルトホルトの言葉は、レオの中に深く染み入っていった。
それはこれまでに誰からも与えられたことのない、“信頼”というものだった。
しばらく無言で立ち尽くしていたレオは、もう一度、手にした木剣をじっと見つめる。
「……守れるかな、俺に」
「それは、お前次第だ」
ベルトホルトが構えを取る。
「だから、まずは構えてみろ。剣の重さを感じろ。風を切る音を聞け。そして、何より――負けず嫌いになれ」
レオは小さく息を吐き、足を踏みしめた。
背中には、昨日までの「孤児」がいた。
けれど、胸には確かに生まれていた。「何かを守りたい」と思う、ほのかな灯。
「……俺も、あんたみたいに、なれるかな」
「なれるさ。だが、なるためには――」
「血だらけになってでも勝ち残る、か」
思わず返したレオの言葉に、ベルトホルトは口元を緩めた。
「……口の利き方だけは、一人前になったな」
そして、二人の木剣が静かに交差した。
それは、ただの訓練の始まりではなかった。
後に「守る者」として歩み出す少年――レオの、本当の出発点だった。
