男は狼なのよ
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夜の空気は涼やかで、遠くの潮騒が心地よく響く。
旅の途中、小さな宿でひとときを過ごす夜。
レオはベッドに腰を下ろし、その地方に伝わる精霊伝承の本を読んでいた。
厚手の本には風や水の精霊たちの名前、そして精霊に捧げる歌や、祈りの言葉が丁寧に綴られている。
まさに、サリスが好きそうな内容だ。
ページをめくっていたそのとき──
バスルームの扉が開いた。
「レオ、お風呂空いたわよ」
「……ん、今いく──」
何気なく顔を上げたレオは、次の瞬間、思考をフリーズさせた。
「……ッッ!?」
扉の前に立っていたのは、濡れた髪から滴を零しながら、彼のシャツ一枚を纏ったサリスだった。
栗色の髪はしっとりと肩に沿い、頬は湯気でほんのり染まっている。
襟元からは鎖骨がのぞき、シャツの裾はふわりと太ももを隠す程度。
その肌の白さに、レオの目は釘付けになった。
「……着替え、忘れちゃって。ちょっとだけ、レオのを借りたの。ごめんなさい」
何が「ごめんなさい」だ、と頭の中で突っ込むレオだったが、
口は開けたまま、言葉にならない。
「……な、なんで、よりにもよって俺のシャツなんだよ……っ!」
「だって、ちょうど手に取れるところにあったんだもの」
サリスは無邪気な笑みを浮かべる。
だがその目には、ほんの少しだけ──いや、確実に「からかい」の色が混じっている。
「おまえ……絶対その格好で外に出るなよ!?死活問題だぞ!!」
「そんなに変だったかしら?」
サリスはくるりと身をひねり、シャツの裾をひらりと揺らした。
「じゃあ……脱いだほうがいい?」
そう言って、シャツのボタンに指をかける。
「やっ、やめろぉぉぉっ!!」
レオは慌てて立ち上がり、タオルケットを引っつかんで彼女にかぶせる。
その顔は、ほとんどトマトのように赤かった。
「な、な、なんでそうなる!?まじで心臓に悪いんだけど!!」
「だって……レオ、顔真っ赤で、面白いんだもの」
サリスはくすくすと笑いながら、いたずらっぽく彼を見上げる。
肩にかかったシャツが、彼女の柔らかな香りとともに揺れた。
「お、男は狼なんだぞ……?」
ようやく絞り出した一言。
しかし、説得力の欠片もないくらい、声が震えている。
「真っ赤な顔で言われても……ねぇ?」
サリスが悪戯っぽくささやいた瞬間、
レオはぷしゅうと湯気でも出しそうに頭を抱えた。
「俺の理性、試されすぎじゃない……?」
「ふふ。レオのシャツ、温かくて……いい匂いがするわ。なんだか安心する」
そう言って、サリスはそっとシャツの袖を握りしめる。
その仕草は、さっきまでの茶目っ気と違い、どこか愛おしさに満ちていた。
レオは思わず、その頭をぽんと撫でて、深くため息をつく。
「……ああもう。ずるいよ、おまえってやつは」
「うふふ、ありがとう。レオ、大好き」
「……俺も、好きだよ。サリス」
月明かりがカーテン越しに差し込む静かな部屋で、
ふたりはそのまま、寄り添うようにして、夜の時間を過ごしていった。
──旅の途中、恋人のシャツ一枚から始まる、甘く、くすぐったい夜だった。
