腹が減っては戦はできぬと言うし
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「……うーん」
街角の石畳に腰を下ろして、レオは己の財布をひっくり返していた。
風に吹かれた数枚の硬貨が、カランカランと切ない音を立てる。
「ま、まだ……次の宿代くらいはあるだろうが……」
琥珀の瞳をしかめて、レオは小さく唸った。
「そろそろ、日雇いでも探すか……」
「今までは、どうしていたの?」
隣に座ったサリスが、首を傾げて訊いてくる。
栗色の髪が肩に触れ、夕陽に照らされてふわりと光った。
「ん? いろいろさ。用心棒、皿洗い、レストランの給仕、迷子の猫探し……」
「ひっ……! 猫……っ!!」
サリスが突然、悲鳴のような声を上げ、レオの腕にしがみつく。
あの日、猫三匹に浜辺で追いかけられた”猫騒動”は彼女にとって深刻なトラウマらしい。
レオは思わず吹き出した。
「……そこまで怖がるほどのもんか? 可愛いもんだろ、猫って」
「甘く見ないで、レオ……あの瞳、あの執念……!私、あの日、命の危機を感じたのよ!」
「おおげさな……」
と、そんなやり取りをしているうちに、石造りの街並みに張り出された一枚の紙が目に入った。
『急募! 協力者求む!!
厨房・接客どちらも大歓迎!食事付き!笑顔と根性ある者、歓迎!』
「お、いいタイミングじゃねぇか」
レオはサリスを連れて、その店へ向かった。
***
その飲食店は、活気ある市場通りの一角にあり、外から見ても繁盛している様子だった。
店の名は《パンと風》。
「いらっしゃい!」
声をかけてきたのは、筋骨隆々の中年店主。ヒゲもエプロンも、どこかパン粉まみれである。
「求人を見て来たんですが」
レオが言うと、店主の目が輝いた。
「おおっ、助かる!厨房が地獄でな、若いの、できそうな顔してるじゃねぇか!」
「まあ、一応料理はできる方です。サリスは接客のほうが……」
「お嬢さん、ウェイトレスか!大歓迎だ!ああ、こりゃ今夜は神に感謝しないとな!」
かくして、レオは厨房、サリスはウェイトレスとして、その日から《パンと風》の戦場──もとい、店内で働くこととなった。
