エメラルドの檻 ─番外編─【オリジナル夢】
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とある街の、石畳の小さな広場に面したカフェバー。
祭りの余韻がまだ街に残っているのか、灯りは暖かく、通りには笑い声がちらほら聞こえていた。
「レオ、これ……とっても甘くておいしいわ」
サリスが手にしていたのは、“ルジェ・ベリー”と書かれた赤いカクテルグラス。
「ん?……あ、それ──」
気づいたときにはもう遅かった。
氷の鳴るグラスはすでに半分ほど空になっていて、サリスの頬にはふんわりとした赤みが差していた。
「ふふっ、ちょっと体があったかい気がするの。ねえ、レオ……今日は、空が綺麗ね」
「……お、おい……もしかして酔ってるか?」
レオは慌てて店主に駆け寄り、注文を確認した。
「ルジェ・ベリー、ですね? ええ、あれはうちのオリジナルカクテルでして。果実酒とミルク、蜂蜜を──」
「……っ、やっぱり酒かよ!!」
急いで会計を済ませ、周囲の視線を感じながらも、レオはサリスの手を取り店を後にした。
***
宿に戻ったのはそれから十数分後。
サリスはすっかりぽやんとした顔で、レオに身を預けながら歩いていた。
「ねぇ……レオって、いつからそんなに格好良くなったの……?」
「なっ……!? サリス、いいから黙ってろ、頼むから……!」
「んふふっ、だって……ほんとにそう思ってるのよ?」
こんな時に限って、周囲には他の宿泊客もちらほらいて、サリスの無防備な言葉と仕草は明らかに周囲の男たちの視線を集めていた。
栗色の髪は夜の明かりに照らされて艶を帯び、潤んだ瑠璃の瞳はどこか誘うように揺らめいている。
ただでさえ人目を惹く容姿なのに、今は酔いがまわって頬を紅く染め、自然と首筋や肩に視線を誘うような色気を纏っていた。
(……やばい、これはマズい……)
レオはなんとか理性を保ちながら、彼女の肩を支えつつ、自室に滑り込むようにして扉を閉めた。
***
部屋に入ると、サリスはベッドにふわりと倒れ込んだ。
「……んー…お布団、きもちぃ……」
白い頬にほんのり熱がこもっていて、体温が高いのがひと目で分かる。
彼女はゆっくり寝返りを打ち、レオの方を見つめる。
「……ねえ、レオ……」
「ん……なんだ?」
「キスして……?」
その一言で、レオの思考がフリーズした。
「──な、なにを言って……」
「ん……ねぇ……キス、して……レオ……」
潤んだ瞳でまっすぐに見つめられ、紅潮した頬で甘えるように囁かれるその姿は、あまりにも美しくて。
普段のサリスなら、こんな台詞は絶対に言わない。
そして、彼女はきっと……明日には忘れてしまうかもしれない。
それでも。
恋人として、惚れた女として、目の前のサリスは──たまらなく愛しかった。
「……キスなんて、何度もしてるのに……」
だけど、これは違う。
これは、理性との戦いだった。
レオは一度だけ息を吐き、意を決して、彼女の柔らかな唇にそっと口づけた。
そのとき──
「……足りないわ……レオ」
ぽつりと、甘えたように呟く。
その一言で、最後の理性の防波堤が音を立てて崩れた。
「……あーーーもうっ!どうにでもなれ!!」
レオはベッドの縁に膝をつき、再び彼女に顔を寄せた。
今度は、静かに、深く、長く──心を込めて口づけた。
「ん……ふっ……」
サリスは小さく、色っぽい吐息を漏らす。
指先がレオのシャツを掴み、身体が震えるように熱を帯びていく。
(ああ……この人が、俺のすべてなんだ)
唇を離した後、レオはそっと彼女の額に手を添えた。
「……サリス、愛してる」
そう囁いたとき──
「えっ」
思わず彼女の声に目をやると──
「…………すぅ……すぅ……」
完全に、寝息だった。
レオは天井を仰ぎながら、崩れ落ちそうな肩を無理やり持ち上げた。
「……マジかよ……」
あの色気も、あの甘えた言葉も、全部──酔った勢いだったのか。
枕元の彼女は、何も知らずに幸せそうに眠っている。
その無防備な寝顔に、レオは思わず苦笑を零した。
「……おまえってやつは、まったく……」
***
そして翌朝。
「おはよう、レオ……ん? なんだか、顔が赤いけど……?」
「い、いや、なんでもない。昨日のことはな……なにも覚えてないよな?」
「え? 昨日……?」
「なんでもないっ!!」
(俺の理性、頑張った。ほんとに偉かった……)
そう思いながら、レオは彼女の出した朝の紅茶を一気に飲み干すのだった。
─Fin
