エメラルドの檻③ ─Albion─【オリジナル夢】
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通り一面に花があふれ、頭上には色とりどりのリボンと花弁の飾り。
陽気な笛や太鼓の音が絶え間なく響き、ミュローズの街はまるで一つの舞台のように華やいでいた。
「……きれい……!」
サリスが思わず息を呑む。
石畳を練り歩いてくるのは、花で作られた巨大な催し物。
天馬の姿をした山車にはバラや菊、すずらんが敷き詰められ、その羽根には銀色の粉が舞っていた。
太陽の光を浴びて、それはまるで本物の魔法のように輝いていた。
山車の上では子どもたちが笑いながら手を振り、大人たちも音楽に合わせて踊りながら沿道を進んでいく。
「すごい……こんなに賑やかなの、初めて見たわ」
サリスは、花びらを手に乗せてそっと目元にあてながら、目を細めるようにして見つめた。
レオはそんな彼女の横顔をそっと見つめていた。
陽射しに透ける栗色の髪。
花の香りに包まれ、柔らかく微笑む彼女の姿は、誰よりもこの街の祝祭にふさわしいとすら思えた。
「……楽しいな、こういうのも」
レオがふと呟くと、サリスはびっくりしたように振り返った。
「えっ、今、笑った?」
「笑ってない。……たぶん」
「ふふっ、照れてる?」
「してない」
小さく肩をすくめて、レオは前を向いた。だが、その口元には確かに柔らかな笑みが宿っていた。
───
賑やかなパレードも終わり、二人が散歩するように街を歩いていると、とある教会の前にたどり着く。
通りに面した庭先に、白い花が咲き乱れ、人々がわいわいと笑いながら集まっていた。
その奥。教会の扉の前で、タキシード姿の男性と、ふんわりとした純白のドレスを纏った女性が手を取り合っていた。
「……何をしているのかしら?あれ……」
「ん?……あぁ、結婚式をしているんだな」
「結婚式?」
サリスが、どこか驚いたような声を出した。
レオが不思議そうにサリスを見ると、彼女はゆっくりと首を振った。
「いいえ、知らないわけじゃないのよ。でも……」
少し遠くを見るように、サリスの瞳に淡い記憶の光が宿った。
「昔、海の底で……一度だけ、貴族同士の結婚式に出たことがあったの。
その時は、光るクラゲたちが天井を漂って、銀色の泡が舞って……幻想的だったわ。
でも、どこか静かで……少し、寂しかったの」
視線の先で、幸せそうに笑い合う人々の姿。
拍手、花吹雪、軽やかな祝福の音楽。
それは、海の中の世界とはあまりにも違っていた。
「……温かいのね。こっちの結婚式は」
「そうだな」
レオもまた、人々の笑顔に目を細めた。
「……みんなに祝福されてる。誰かの幸せを、こんなにも心から喜べるなんて」
サリスの声は、どこか遠くを見ていた。
――そして、ふと。
その視線が、タキシードの男性に添えられた白い手に、優しく重ねられたドレスの花嫁の手に向けられる。
(……いつか私も、こんな風に)
隣にいるレオと、肩を並べてこの白い道を歩く日が来るとしたら。
想像しただけで、頬が自然と熱を帯びていった。
「? どうかしたか、サリス?」
レオが少し身を屈めて覗き込むように聞いてきた。
「なっ、なんでもないわ!ちょっと、眩しかっただけ!」
慌てて顔を振るサリス。
それでも赤らんだ頬は隠しきれず、風に揺れる髪が揺れるたびに、その想いが滲んでいた。
そんな彼女を見て、レオは小さく笑う。
(……サリス。俺も、今、まったく同じことを考えてた)
風が、そっと二人の間を通り抜けていく。
教会の鐘が鳴り、笑い声が広がる祝福の空間だった。
