エメラルドの檻③ ─Albion─【オリジナル夢】
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朝靄が薄く村を包み、冷たい空気が吐息を白く染めていた。
蒸し風呂と宴の余韻がまだ身体に残るのか、村人たちの顔にも、どこかぽやんとした眠気がにじんでいる。
そんな中、レオは縁側に腰を下ろし、頭を抱えていた。
「……飲みすぎた……」
自業自得の呻きが、静かな朝に溶けていく。
村人たちの熱烈すぎる歓待と、断れない勢いで注がれ続けたエールとワイン。
その余波は、まるで鈍い鐘のように彼の頭の奥で鳴り響いていた。
「大丈夫? レオ」
ふと顔を覗き込んできたのは、サリスだった。
瑠璃色の瞳が心配そうに揺れ、冷えた手がそっと彼の額に触れる。
「少し熱っぽい……。ほら、水、飲んで」
差し出された水筒を受け取り、レオはこくりと喉を鳴らした。
「……助かる。昨夜はちょっと、はしゃぎすぎたかもな」
「ふふっ、楽しそうだったもの。あんなに笑ってるレオ、初めて見たわ」
その言葉にレオは照れくさそうに視線を逸らしたが、口元はほんのわずかに綻んでいた。
────
やがて、広場に出ると、村人たちが集まっていた。
ロルフとエレン夫妻、子供たち、宴で肩を組んだ男たち――
誰もが別れを惜しむように、サリスとレオを囲んでいる。
「……本当にもう行ってしまうのかね?」
ロルフが目を細めて問う。
「ええ。でも、また来ます。その時は、もっとゆっくりと」
サリスは静かに微笑んだ。
その表情は、春の風のように穏やかで、心を和らげる。
「お前さんたちが来てくれて、村に笑い声が戻った。感謝してるよ」
「……特にお前さんはな! あの夜のツッコミ、最高だったぜ!」
「頼むから忘れてくれ……」
レオが苦笑しながら頭をかくと、わらわらと子供たちが駆け寄ってきた。
「サリスお姉ちゃん、またお歌聞かせて!」
「お兄ちゃん、剣の構え教えてくれてありがとー!」
ひとつひとつの声が、二人がこの村で過ごした証。
その小さな存在たちは、純粋な感謝と憧れのまなざしで二人を見つめていた。
「……さあ、行こうか」
「うん」
サリスはそっと深呼吸し、レオと共に村の門へと歩き出した。
最後に二人は足を止め、振り返る。
まだ手を振っている村人たち。
変わらない小さな村の風景。
けれど、それはもう、ただ通り過ぎるだけの場所ではなかった。
二人は、静かに、でもしっかりと手を振り返した。
――そして次なる地へ。
