エメラルドの檻③ ─Albion─【オリジナル夢】
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村に戻った頃には、空が淡く白み始めていた。
吐く息が白く曇り、朝の霧が木の壁に薄く貼りついている。
屋根の上に宿る霜が、昇りかけた陽光を受けて微かにきらめいていた。
村の門のそばで薪を割っていたロルフが、ふと顔を上げ、目を見開いた。
「……おお。戻ったか!」
その声に応えるように、サリスとレオは微笑みながら手を軽く挙げた。
二人の足元には、まだ森の匂いが宿っている。
「おかえりなさい!」
エプロン姿のエレンが、家の縁側から駆け寄ってきた。
その手にはまだ湯気の立つマグが握られていた。
「まぁまぁ、こんなに冷えて…… サリスちゃん、手が冷たいじゃないの。すぐ暖炉の前に……」
そう言いかけて、エレンの目がふと吸い寄せられる。
「……あら? その竪琴……」
サリスが両腕にそっと抱えていたのは、森の精霊たちから授かった“風の竪琴”。
その木肌には、見る角度によって揺れる風紋のような文様が浮かび、朝の光を受けて静かに煌めいていた。
「ええ。森の奥で……大切なものを、託されたの」
そう答えるサリスの声は、どこか誇らしげで、けれど優しかった。
ロルフは目を細め、ゆっくりとうなずく。
「……それで、わかったのかね。水晶のこと」
その問いに、サリスとレオはそっと顔を見合わせ、確かにうなずいた。
「はい。森の精霊たちは、深い眠りから目覚め始めています。
まだ完全ではありませんが……命の水晶にも、その兆しが届いているはずです」
「……なら、確かめてみるか」
ロルフの一言で、四人は再び村のはずれにある祠へと向かった。
────
苔むした石の祠は、夜の間も変わらず静かに佇んでいた。
その奥、重い扉を開けた先には――
「……!」
エレンが小さく声を漏らす。
そこにあったのは、昨日までとは明らかに異なる光景だった。
祠の中心に置かれた“命の水晶”が、やわらかに、けれど確かな輝きを放っていた。
青白く澄んだ光が、水面のように揺らぎながら辺りに広がり、空気ごと浄化するような清らかな気配を漂わせている。
「……戻ってきておるな。命の気配が……」
ロルフが目を細めながら言った。
それは疑いようもなかった。
かすかだった水晶の鼓動が、今は確かに脈打ち、祠の中に命の律動を満たしていた。
サリスは、“風の竪琴”を胸に抱いたまま、静かに目を閉じた。
(風よ……精霊の声よ。この地に、もう一度……命の流れを)
風が吹き抜けたわけではない。
それでも、竪琴の弦がひとりでに震え、やさしい音色を奏でた。
それは祈りの音。
そして、この先の旅路への、小さな誓いの音でもあった。
――遠く、まだ知らぬ試練が待ち受けていても。
いま、確かにふたりは、“希望を紡ぐ者”として、この村の風と命に祝福されていた。
