エメラルドの檻③ ─Albion─【オリジナル夢】
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
夜明け前、森の空気はひときわ澄みわたり、月と朝の気配が入り混じっていた。
サリスとレオは、静かに立ち上がった。
ふたりの間にはまだ昨夜のぬくもりと余韻が、やさしく漂っていた。
泉のほとりには、もう妖精たちの姿はない。
けれど、草の露に残る淡い光と、そっと開いた白い花が、昨夜の祝福の名残を静かに伝えていた。
「行くのか」
振り返ると、森の長カルヴァスが静かに立っていた。
その背後には数人のエルフたちが並び、朝の光を待つように木々の間に佇んでいる。
「……ありがとうございます、カルヴァス様」
サリスが一礼すると、彼はわずかにうなずいた。
「そなたの歌が森を目覚めさせた。“希望の歌姫”の名は、もう精霊たちの間でも囁かれている」
「……でも私は、もう精霊とは契約できない身です。人間として――」
「それでも、“感じること”はできるだろう。精霊は力ではなく、想いに応じる」
カルヴァスの視線が、そっとレオへ向けられる。
「そして、“力”ではなく、“共に歩む者”の存在が、そなたの道を導く」
レオは少し驚いたように目を見開いたが、すぐに静かにうなずき返した。
「……行くがいい。
北の大地は、まだそなたたちの旅に必要な記憶と試練を秘めている。
だが心せよ――“風の竪琴”は、精霊と人の橋でもあり、扉でもある」
その言葉の意味を、ふたりはまだ深く理解していなかった。
だが、その響きは、確かに胸の奥に刻まれた。
「……必ず、またお会いしましょう」
サリスがそっと告げると、カルヴァスは、ようやくわずかに口元を緩めた。
「その時、そなたが真に“人として生きる”意味を見つけていれば……我らの森は、再び道を開こう」
そしてエルフたちは、森の奥へと音もなく消えていく。
残されたのは、淡い風と、ひとすじの光の道――
その道を辿りながら、サリスとレオは静かに森を後にした。
────
やがて森を抜け、村の輪郭が朝靄の中に見え始めた。
「あそこが……私たちの帰る場所、ね」
サリスがつぶやくように言った。
「一時だけな。すぐ次の旅が待ってる」
「ふふ……わかってるわ。でも、今は“ただいま”って言いたいの」
そう言って、サリスはレオの手をぎゅっと握る。
レオも応えるように、そっとその手を握り返した。
村へと続く小道には、夜露の残る草が揺れていた。
そしてその先には、命の水晶が眠る祠と、ロルフとエレンのあたたかな待つ場所があった。
――ふたりの旅は、また一歩、進もうとしていた。
