エメラルドの檻③ ─Albion─【オリジナル夢】
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世界は夜が深まり、森に銀の帳が下りた。
月は満ち、静かな光を地上へと注いでいた。枝の間から漏れたその光は泉の水面を照らし、まるで鏡のように揺れていた。そこに腰掛けるふたり――レオとサリスの間を、冷たいが心地よい風が通り過ぎていく。
風が枝を鳴らし、葉をそっと撫でる音が、眠りにつく森の子守唄のように響いていた。
「……サリス」
ぽつりと、レオが言葉を落とす。
「お前が連れ去られた時、俺は……また、守れなかった。目の前で、あんなふうに……」
拳を握りしめ、肩を落とすレオの姿には、強さの裏にある脆さがにじんでいた。
サリスはそっとその手を包み、首を横に振る。
「でも、あなたは来てくれたわ。私の名前を呼んで、駆けつけてくれた。……それだけで、世界が輝いて見えたの」
レオの瞳がわずかに揺れる。
サリスの声に嘘はなかった。むしろ、その想いは風よりもまっすぐに、レオの胸に届いていた。
その時――
泉の水面がふわりと青白く光り出した。光の粒が空へと舞い、星のように降り注ぎ、あたりの空間を包み込む。
「……なに、これ?」
サリスが息を呑んだその瞬間、木の陰から小さな羽を持つ妖精たちが現れた。
彼らは夜露のような光を纏い、笑い声をあげながら、泉のまわりを踊り出す。後ろには、銀の衣を纏ったエルフたちが続き、静かな旋律に合わせて舞を紡いでいた。
その光景は、まるで夢の中――現実とは思えないほど幻想的だった。
そんな中、ひとりのエルフの女性が、静かにサリスの元へと歩み寄る。
透き通るような銀髪、月を宿したような瞳――まさに夜の精そのもの。
彼女は優しく微笑み、サリスに手を差し伸べた。
「――さあ、あなたも踊りましょう。今夜の月は、あなたのためにある。
精霊の歌に応えし者、“希望の歌姫”サリス」
その声は鈴の音のように美しく、森の静寂にやわらかく溶けていく。
サリスは少し戸惑い、振り返ってレオを見る。
「……レオ?」
彼は、どこか照れくさそうに肩をすくめて、微笑んだ。
「行ってこいよ、サリス」
そのひと言に背中を押され、サリスはエルフの手をとった。
月光に照らされた栗色の髪が揺れ、アクアマリンのバレッタが一瞬、星のように煌めいた。
その姿は、まさに“精霊に選ばれし者”だった。
(……サリス。お前の輝きを、俺はこの先もずっと見ていたい)
レオは胸の奥に、そっと新たな誓いを刻む。
やがて舞を終えたサリスが戻ってきた。頬は紅潮し、瞳は月の光を宿してきらめいている。
「レオ、次はあなたの番よ」
「俺は……踊るなんて柄じゃない」
「大丈夫。私がいるから」
サリスが差し出した手に、レオはほんの一瞬だけ迷った。
だが次の瞬間には、その手をしっかりと握り返していた。
こうして、ふたりは静かに踊り出す。
うまくなくていい。ただ、相手の心に寄り添うだけで、音楽はそこに生まれる。
手と手を重ね、目と目を見つめ合い、世界がふたりだけのものになる。
夜風がそっと揺れ、泉のまわりに咲いた白い花々が、まるで祝福するかのように、そよいだ。
――風は静かに、夜を運んでいく。
その温もりを、ふたりの心に残して。
