エメラルドの檻③ ─Albion─【オリジナル夢】
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冷たい風が、白い息となって空に溶けていく。
レオとサリスが辿り着いたのは、森と丘に囲まれた、ひっそりとした小さな村だった。
家々の屋根には雪が薄く積もり、煙突からは静かに煙がのぼっていた。
静かだが、人の気配は確かにあった。ぬくもりを閉じ込めるような、控えめな生活の匂い。
「……ここが、村か」
「うん……なんだか、時間がゆっくり流れてるみたい」
道端の石垣に腰かけていた髭の老紳士が、ふたりの姿を見つけて立ち上がる。
「おや、旅の方ですかな?」
白い息と共に響いた声は、穏やかでどこか懐かしさを帯びていた。
「はい。名前はレオ。こちらはサリス。旅の途中でして……できれば、今夜だけでも宿を貸していただけませんか?」
そう言って、レオは軽く頭を下げた。
サリスもそっと微笑みながら会釈する。
「レオさんとサリスさん、……ふむ、ふむ。よくぞこんな辺鄙な場所まで。
こんなところまで訪ねてくる者など、何年ぶりでしょうかのう」
老紳士はそう言って、ゆっくりと顔を綻ばせた。
「わしは村長のロルフと申します。大したもてなしはできませんが、それでもよければ……。ああ、どうぞどうぞ、こちらへ」
彼に導かれ、小さな石造りの家々の間を進んでいく。
「本当に静かな村ですね」
サリスがぽつりと呟いた。
「ふふ、そうでしょう。ここは“沈黙の村”とも呼ばれております。
旅の地図には載っておらんでしょうな。昔はもう少しにぎやかだったのですが……」
「……何か、あったんですか?」
レオが問いかけると、ロルフは一瞬だけ目を伏せ、歩みを止めた。
「……いや、いや。今夜は旅の疲れを癒やしてくだされ。語るには、もう少しあたたかい場所のほうがいい」
その言葉には、何かを抱えている者に特有の、静かな重みがあった。
やがて案内されたのは、石造りの家の中でも少し広めの一軒だった。
木製の扉を開けると、暖炉の火がほのかに灯り、干し草と薬草の混じった香りが広がった。
「寒かったでしょう。火を強くしておきました。さ、遠慮せずあたたまってくだされ」
「ありがとうございます……!」
サリスは感謝の声をこぼしながら、炉辺に手をかざす。
レオもマントを解いて、焚き火のそばに腰を下ろした。
ふと、ロルフがサリスを見つめる。
「……その髪飾り、アクアマリンと真珠ですかの」
「え?」
サリスは無意識に髪に手をやった。
そこには、レオから贈られた大切なバレッタがきらりと光っていた。
「昔、よく似た石を見たことがありましてな……。あれも、命をつなぐ不思議な石でした。
……“命の水晶”という名前で呼ばれておりましたよ」
「命の、水晶……?」
ロルフの瞳が、かすかに悲しみを宿すように細められた。
「もしよろしければ、明日……この村の祠へ足を運んでいただけませんか?
少し、頼みたいことがあるのです。……旅のお二人に、でなければ叶えられぬことなのかもしれません」
静かな夜の始まり。
その奥に、まだ語られていない村の秘密が――静かに、確かに息づいていた。
