エメラルドの檻③ ─Albion─【オリジナル夢】
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「──レオ!見て!陸が見えてきたわ」
「あそこが北大陸・エーテルネヴァか…」
ミュローズの街から離れ、約二週間、
今回の目的地である巨大な大陸を二人は目の当たりにした。
────
港を離れ、レオとサリスは北の大地へと足を踏み入れた。
エーテルネヴァ――それは神話と伝説が今なお息づく、霧と森の大陸。
港から続く石畳の坂道を登る途中、サリスが肩をすくめるように小さく震えた。
「うぅ〜、寒いわっ……」
「ほら言ったろ。北の大陸は南と違って気温が低いんだ。風邪引くぞ、ちゃんとコートを羽織れ」
そう言って、レオは自分の外套を脱ぐと、そっとサリスの肩に掛けた。
その手つきは乱暴でなく、けれど慣れていて、まるでずっと昔からそうしてきたようだった。
「ありがとう……レオ」
サリスは頬を少し紅潮させながら、コートの襟をぎゅっと掴む。
まだ人魚だったころ、深海の冷たさは“寒さ”ではなかった。
けれど今こうして“人間”として体感する冷気は、どこか身に染みる現実で――同時に、レオの温もりがどこまでも優しく感じられた。
「レオはあまり寒くなさそうね」
「俺は寒いのは慣れてるからな。兵士時代、冬山での任務ってのがあってな……水が凍ってて顔洗えないし、飯も凍る。慣れると逆にあれが懐かしいくらいだ」
「ふふっ、さすがだわ。でも……その頃のレオを見てみたかったかも」
「やめとけ。隈も酷い上の無精髭だらけで、今よりずっと無愛想だったぞ」
「じゃあ今は……“無愛想じゃない”のね?」
からかうように笑ったサリスに、レオは少しだけ目を細め、肩をすくめた。
「……お前の前ではな。たぶん、そうなっちまった」
その言葉に、サリスの頬がほんのり赤らむ。
北の大陸は、澄んだ空気と白く染まった山並み、そしてどこまでも続く針葉樹の森に包まれていた。
空は高く、空気は凛と張り詰めていて、遠くで小さく風鈴のような鳥の声が響く。
「そういえばね。昔、お父様に聞いたの。北の大陸にはエルフという種族がいて、自然と心を通わせながら、何千年も生きているんだって」
「エルフ、か……俺は見たことないけど、確かにこの空気なら、どこかにいても不思議じゃないな」
「森の中で、風と話して、木々と一緒に歌うの。とても優雅で、静かで、美しい種族だって……」
「お前も似たようなことしてただろ。風と話すのは得意じゃなかったか?」
「ふふ、それは……精霊の加護のおかげだったけど、今はもう……」
一瞬だけ、その表情に影が落ちた。
だがすぐに、アクアマリンのバレッタが陽の光にきらりと光り、サリスの笑顔が戻る。
「……でも、あなたがいてくれたら、それだけであったかいの」
レオは何も言わず、そっと彼女の手を取る。
どこまでも静かな森の入口。
その先に、まだ見ぬ世界が待っている。
エーテルネヴァでの旅は、ここから始まった。
