エメラルドの檻③ ─Albion─【オリジナル夢】
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ローズ・パレードが終わり、街は次なる祭りへと向けて準備を始めていた。
歩く先々から楽器の音が響き、飾り付けのリボンや花びらが宙を舞う。
レオとサリスが細い路地に入ったその時、どこからか切羽詰まった声が耳に届いた。
「……困ったねぇ、歌姫役の子が急に来られなくなったなんて」
「……そうよねぇ、これじゃあ明日の音楽祭は中止かねぇ……」
ふと足を止めると、エプロンをつけた年配の女性二人が、店先のベンチで肩を落としていた。
店の看板には、淡いピンクの刺繍で「ミュローズ仕立工房」と書かれている。
気になったサリスが一歩近づいて声をかけた。
「…あの、どうかしましたか?」
婦人たちは驚いたように顔を上げる。
「あら、ごめんなさい、聞いてたかしら?」
「そうなのよ、ちょっと聞いてちょうだいな」
婦人の一人が身を乗り出して説明を始める。
「明日は音楽祭があるの。広場の舞台で女神さまに歌を捧げる儀式が毎年あるのよ」
「でも、その歌姫役の子が……急に家の事情で来られなくなってしまって」
「せっかく衣装も完成したっていうのに…残念だわぁ」
二人は肩を落とし、大きなため息をついた。
その様子に、サリスの眉が寄る。
旅先とはいえ、困っている人を放っておける性分ではなかった。
「……歌姫役って、どんな役なんですか?」
「おや、興味あるのね?」
婦人の目がぱっと輝く。
「女神さまへ“精霊の歌”を捧げるのよ。舞台の上でね。毎年、選ばれた娘がその役をするんだけど……」
「……もしかして、あなた……歌えるの?」
「えっ?わ、私ですか?」
目を丸くするサリス。
もう一人の婦人も身を乗り出してきた。
「まぁまぁ!あなたとっても綺麗だし、雰囲気もぴったりよ!しかもサイズもぴったりそうだわ!ほら、衣装試着してみない?ね?」
「いや、ちょっと待ってください、まだ本人が何も──」
レオが慌てて割って入ろうとするが、婦人たちは完全にサリスの出演が決定した空気で盛り上がっている。
「お祭りはお昼からなのよ!船の出発は夕方なんでしょ?ちょうどいいじゃない!」
「えっ、ええっと……」
サリスは戸惑いながらも、周囲の熱気と期待の眼差しに圧されるように視線をレオに向けた。
(どうしよう……)
(……どうせ断れないんだろ?)
レオは小さく肩をすくめて、ため息混じりに言った。
「……仕方ないな。終わったら真っ直ぐ港に向かうぞ」
その言葉に、サリスの瞳がぱっと輝いた。
「ありがとう、レオ!」
「さぁさぁ、こっちこっち!衣装部屋はこちらよ!」
「そこの色男さんも、ちょっと荷物持って!」
ずんずんと引っ張られていくレオ。
レースとリボンが天井から垂れる仕立て屋の中は、まるでおとぎ話のような華やかさだった。
レオは(また一波乱か……)と苦笑しながら、店の奥へと導かれていった。
そしてその夜、サリスは「歌姫の衣装」を身に纏うことになる。
――それは、レオの心を大きく揺さぶることになる、“とある魔法の夜”の始まりだった。
