エメラルドの檻② ─Aura─【オリジナル夢】
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ヴェルリナの街に、思いがけず長く滞在していた。
治安を乱していた盗賊団の掃討をきっかけに、レオの名は町のあちこちで囁かれるようになり、
そのたびにサリスは何とも言えない顔をして、ちらちらと彼に視線を送っていた。
ティーハウスでの甘い一幕や、旅の途中で出会った幼い少女アナベルとの別れ――
今ではすっかり懐かしい思い出になっていた。
彼女が見せた涙や怒り、笑顔といった“感情”がレオにとって何よりの宝物だった。
(それにしても、あの時の本気で怒った彼女は、かなり怖かった…)
レオは一瞬、サリスの後ろに海王オーケアノスの残像を見たとかなんとか。
そんなヴェルリナを後にして二日。
二人は港の見える丘までたどり着いていた。海風が草原を撫で、心地よく髪を揺らす。
「本当に行っちゃうのね、ヴェルリナ…」
丘の上から小さくなっていく街を振り返りながら、サリスがぽつりと呟いた。
レオは横顔を見つめた。
海に背を向ける少女はもう、人魚ではない。
それでも彼女の中に流れている“海”は確かにここにあった。
髪の色も、瞳の色も、かつてとは変わったが――優しさも、まっすぐな強さも、何ひとつ変わってはいなかった。
「俺たちは、まだ旅の途中だからな」
「…そうね」
次の目的地は北の大陸。
伝説によれば、そこには人前に姿を見せることの少ない竜たちが眠る谷があり、
月光の下にしか現れないエルフの集落があり、
羽ばたく音すら残さずに姿を消す妖精たちが暮らすという。
きっと今まで以上に困難もあるだろう。
だが、それでも――この旅の続きを彼女と共に歩めることが、レオには何より嬉しかった。
港へと続く白い石畳の道を歩いていくと、ようやく停泊中の船が見えてきた。
大きな帆を膨らませて、潮の匂いをたっぷり含んだ風が吹き抜けていく。
「すごいわ…! 海の上を走ってるみたい…!」
サリスが目を輝かせ、船に乗り込んだ瞬間だった。
一羽のカモメがどこからともなく舞い降りてきて、サリスの指にちょこんととまる。
「この子…”向かい風が気持ちいい”って、言ってるみたい」
「鳥の言葉がわかるのか?」
「いいえ、でも…なんとなくそう言ってる気がするの」
「そっか」
レオは笑った。
たとえ精霊の加護を失っても、サリスにはまだ“自然と共に在る心”が残っていた。
きっとそれは、生まれ持った魂のかたちのようなものなのだろう。
彼女はもう、海の中にはいない。だが――海も風も、鳥も花も、彼女を愛していた。
「……”唯一不可能な旅は、決して始めることのない旅”ね」
「…ん?何か言ったか?」
「ふふっ、べつに?」
そう言ってサリスは、風に靡く髪を押さえて笑った。
その笑顔を見た瞬間、レオは改めて誓った。
この旅がどんな終わりを迎えようとも、どこで道が分かれようとも、
彼女を守り、共に在ると。――何度でも。
「行こう。お前が見たいって言ってた、星の谷があるらしいぜ。北の森の奥に」
「うん…! あなたと一緒に行けるなら、どこでも行ける気がするわ」
波を裂いて進む船は、彼らを新たな物語の始まりへと運んでいく。
空には高く、カモメたちの声。
風は優しく、そして力強く二人の背を押していた。
まだ見ぬ世界へ――
竜の眠る谷へ。
妖精たちの森へ。
そして、サリスとレオの旅は続いていく。
エメラルドの檻 ~ aura ~
~ Fin ~
to be continued...
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