エメラルドの檻② ─Aura─【オリジナル夢】
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だんだんと、アナベルの瞼がとろんと重くなっていくのがわかった。
「ねむくなってきちゃった……」
そう呟くと、小さな口からふあっと可愛らしいあくびがこぼれる。
「じゃあ、子守り歌を歌ってあげるわね」
サリスは、そっとアナベルのお腹のあたりに手を置き、優しくぽんぽんとリズムをとりはじめる。まるで海のゆりかごのように穏やかで優しい、その動きとともに、静かに歌が始まった。
柔らかく、風のように包み込むその旋律は、まるで森の奥の精霊がささやくように、どこか懐かしく、あたたかい。
⸻
“眠れ、眠れ 泡の子よ
潮のゆりかご 揺れるまま
珊瑚の森で 迷っても
泣かないで いつもそばにいるわ…”
⸻
その歌声に、レオは思わず息を呑んだ。
澄んだ音色が静かな部屋に溶けていく。その中心でアナベルは、まるで深い海に沈んでいくように、すぅ…すぅ…と規則正しい寝息を立てはじめる。
そしてその横顔を見つめるサリスは、まるで神話の中の聖母のようだった。
(……きれいだな)
最初は、サリスと同じベッドに寝ているということに妙な緊張を覚えていたレオだったが、今はそれも忘れていた。ただ、その姿に心を奪われていた。
「……まるで母親だな」
思わず漏らした呟きに、サリスが首を傾げた。
「私が?」
「ああ。俺は親のぬくもりがどんなものか知らないけど……今のお前は、まさに“優しいお母さん”って感じだ」
その言葉に、サリスの頬がほんのりと赤らむ。
「ふふ……じゃあ、私が“優しいお母さん”なら、レオは“かっこいいお父さん”ね」
「“王子さま”の次は“お父さん”か」
レオはそう言って、肩をすくめる。けれどその表情はどこか嬉しそうだった。
「ふふっ」
サリスも、アナベルを起こさないようにそっと笑う。
「ねぇ、もし……私たちに、本当に子どもがいたら、どんな子になるかしら」
「うーん……こんなふうに元気で、甘えん坊で……でも、きっと泣き虫だな」
「そうかしら? 私は意外と、レオに似て無口な子になる気がするわ」
「それも……悪くないな」
ふたりの笑い声が重なり、ほんのひとときの家庭のような空気が、静かに宿の部屋を包んでいった。
アナベルは、すっかり夢の世界の中で微笑んでいた。
その寝顔を挟んで、そっと視線を交わすふたり。照れくさいけれど、心がじんわりと温まっていく。
こうして過ごす、穏やかな夜――。
それは、旅の中で得られた、何よりもかけがえのないひとときだった。
