エメラルドの檻② ─Aura─【オリジナル夢】
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夜の帳が降りるころ、ヴェルリナの宿に用意された客室は、静かで温かな明かりに包まれていた。
重厚な扉を開けると、思わず息を呑むような広々とした空間が広がる。天井には手の込んだ彫刻が施され、窓辺には柔らかなカーテンが揺れていた。壁には高級な絵画が飾られ、敷かれた絨毯はふかふかで、足音すら吸い込むようだった。
「わぁぁあーーー!!」
アナベルが勢いよく部屋に飛び込み、真ん中のふかふかのベッドへとダイブする。
「ひろーいっ!おしろみたいー!」
ベッドの上で両手両足を広げて笑うアナベルを見て、サリスはくすっと微笑んだ。
「よかったわね、アナベルちゃん」
「うんっ!それにね、おねえちゃんにえほんをよんでもらいたいの!」
「あら、それは光栄ね。どれを読んで欲しいのかしら?」
アナベルは迷うことなく鞄から一冊の絵本を取り出し、まるで宝物を見せるように、サリスに差し出した。
「これっ!『にんぎょひめ』!」
「まぁ……」
サリスがページをめくる指先に、一瞬の懐かしさと、どこか遠くを見つめるような眼差しがよぎる。
「アナベルねー、いつかにんぎょさんとおともだちになりたいの」
「ふふ……きっと、なれるわ」
その答えに、アナベルの顔がぱっと花のように輝いた。
「やったー!!」
絵本を胸に抱いたアナベルは、ぴょんとベッドから降りると、今度はサリスの胸に飛び込んできた。
「おねえちゃん、だいすきー!」
「うふふ、ありがとう」
柔らかく受け止めるサリス。レオはそれを見て、どこか照れたように視線を外した。
その様子を見ていたウィリアムが苦笑しながら近づいてくる。
「アナベル、あまりお姉さんを困らせるんじゃないよ。もうおやすみの時間だから……」
「やだー!アナベル、おねえちゃんたちといっしょにねたいのっ!」
駄々をこね始めたアナベルに、ウィリアムは困ったように眉をひそめた。
「こらこら……それはさすがに――」
「私たちは大丈夫ですよ」
サリスが優しく微笑みながら言うと、ウィリアムはほっとしたように笑った。
「本当に、すみません……この子は、甘えるのが上手でして」
「子どもらしくて可愛らしいです」
そのやり取りを聞いていたアナベルは、喜びの声を上げてサリスにぴったりとくっついた。
「じゃあねー、おねえちゃんとおにいちゃんのあいだでねるー!」
そう言って、レオとサリスの手をそれぞれ握ると、満面の笑顔で宣言した。
「アナベルがまんなかね!」
「え、真ん中……?」
「ええっ、真ん中?」
レオとサリスがほぼ同時に、きょとんとした顔で言葉を漏らす。
「うん!おねえちゃんがここでー、おにいちゃんがこっち!」
小さな指で配置を指示するアナベル。
つまりは、一つのベッドで三人並んで寝ろということか――。
レオとサリスの視線が、ふと交差する。
(まじか……)
(……ど、どうしましょう)
同時に頭の中で同じ言葉が浮かんだことを、二人は知らない。
しかし――アナベルの無邪気な笑顔の前では、何も言えなかった。
「……よ、よし。絵本を読んでからな、な?」
レオが苦笑混じりに言うと、アナベルは「うんっ!」と満面の笑みで頷いた。
部屋の灯りが少し落とされ、ベッドの上ではサリスが柔らかな声で「にんぎょひめ」の一節を読み始めた。
その声に耳を傾けながら、アナベルは満ち足りたように目を細め、両手でレオとサリスの手をきゅっと握りしめる。
その温もりの中で、静かな夜が、やさしく更けていった――。
