エメラルドの檻② ─Aura─【オリジナル夢】
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ヴェルリナの城門をくぐった瞬間、石畳の通りに広がる賑やかな喧騒が、一行を迎えた。
馬車の車輪がカタンカタンと音を立て、活気ある街並みを進んでいく。左右には香草や果物を並べる露店、行き交う旅人や商人、笑い声をあげる子供たちの姿があふれていた。
そんな中で、レオは一歩引いたような表情を崩さず、周囲を警戒しながら歩いていた。表向きはいつもの冷静な顔。だが、サリスにはわかっていた。
「ふふっ……」
レオの隣で、サリスが小さく肩を揺らして笑う。
「ん?どうかしたか?」
レオが怪訝そうに目を向けると、サリスは口元を押さえて、さらにクスクスと笑った。
「いいえ、別に。……ただ、レオって、機嫌がいいとすぐわかるから」
「……そんなことないだろ」
レオはむっとしたように視線を逸らすが、耳の先がわずかに赤いのを、サリスは見逃さなかった。
「あるわよ。いつもより歩幅がちょっと大きいし、目が少し柔らかい。それに、さっきから口角が、ほら……ちょっと上がってる」
「……観察しすぎだ」
「だって面白いんだもの」
そう言って、サリスはレオの腕に軽く手を添えた。
「アナベルちゃんが、あんなに懐いてたもの。嬉しかったんでしょ?」
「……別に。ただ、無事でよかったとは思ってる」
「うん、そういうことにしておく」
にっこりと微笑んで、サリスは前を向いた。
レオはその横顔をちらりと見て、ほんのわずかに笑みを深めると、頭をかきながら溜息をついた。
(まったく……油断も隙もないな)
とはいえ、あの少女の「王子さま」呼びに少し照れたのも本当だった。あんな風に見られたのは初めてで、どこかくすぐったくも悪くない。
そんな穏やかな空気の中、ウィリアムが手綱を引いて馬車を停めた。
「この近くに、私の知人が経営する宿があります。どうか今夜は、私の招待ということで……!」
レオが何か返そうとした瞬間、アナベルが身を乗り出して声を上げた。
「おにいちゃん!おねえちゃんもいっしょにおとまりして!」
「はは……それは命令か?」
「うんっ!」
無邪気な声に、レオはもう逆らえない。観念したように頷いたレオに、サリスがふたたび微笑みかける。
「……やっぱり、王子さまは頼りになるのね」
「言うなって、それ……」
街の雑踏の中に、楽しげな笑い声が溶けていく。
ヴェルリナの一日が、ゆっくりと始まっていた。
