エメラルドの檻② ─Aura─【オリジナル夢】
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【アラリオン視点】
泡の音も聞こえない、静かな深海。
冷たい水の中で、アラリオンは目を閉じていた。
けれど、心はまるで煮えたぎるように熱かった。
「……君が、なぜ、人間なんかを選んだのか」
水底の珊瑚に腰を下ろし、胸元に手を当てる。
君のことは、ずっと見ていた。
それは幼い頃。
サリスがまだ、人魚の王族の娘としても知られていなかった頃のこと。
アラリオンは、名家に生まれた少年だった。
周囲からは冷静で品行方正、才能ある若者として認められていたが、
実のところ、彼は人の目を気にしすぎる臆病者だった。
ただ、サリスだけは違った。
初めて出会ったのは、彼が十三、サリスが十歳の頃。
海の浅瀬に迷い込んだアラリオンに、彼女が手を伸ばしたのが最初だった。
「こっちだよ!この珊瑚の道を通れば戻れる!」
無邪気に笑うその姿に、思わず心を奪われた。
恐怖も、不安も、その一瞬だけは消えた。
サリスは、アラリオンの「世界の中心」になった。
時が流れ、サリスが王族の娘であることが明かされると、
海の者たちは彼女の力と歌声に畏敬の念を抱くようになった。
アラリオンも例外ではなかった。
だが、彼が彼女に惹かれたのはその「力」ではなかった。
夜の浜辺で、誰も見ていない場所で、
独りでイルカと話していた、あの寂しげな背中。
誰よりも美しく、誰よりも孤独な魂――
それこそが、アラリオンが彼女を愛した理由だった。
だからこそ、婚約を命じられた時、
彼は内心で小さく震えながらも、誇らしさと幸福を噛み締めていた。
「サリスを、この手で守る。誰よりも彼女を理解する存在になろう」
だが、その誓いは突然破られた。
――人間に攫われた。
その報が届いた日、アラリオンは狂ったように海中を探した。
血眼になり、岩礁や沈没船、海流の隙間までもくまなく。
だが、サリスは見つからなかった。
代わりに、彼の手に残ったのは――
「人間が海の者たちを攫い、兵器として売買している」という闇の噂だった。
怒りで震えた。
サリスがどれだけ優しく、誰かのために歌を捧げていたかを、
彼は知っている。
その彼女が、あろうことか人間に囚われ、弄ばれたかもしれないなどと――
耐えられるはずがなかった。
「……必ず取り戻す。殺してでも、奪い返す」
サリスが戻らぬまま月日は流れた。
彼は戦闘訓練を受け、水と氷の力を極めた。
王国の一部からは「復讐に囚われた愚か者」とさえ呼ばれたが、
それでも彼は止まらなかった。
それは「婚約者としての誇り」でもあり、
それ以上に、「誰よりも彼女を理解している」という自負があったからだ。
だからこそ。
あの街角で。
人間の男と肩を寄せ合い、穏やかな顔で微笑むサリスを見た時――
アラリオンの心は、一瞬で音を立てて崩れた。
「……なんでだよ……」
なぜ、自分ではなく、あんな人間の男を選んだのか。
なぜ、自分が狂うほど求め、守ろうとした彼女は――
人間の言葉に微笑み、彼を庇い、抱きしめたのか。
あれほど、深く、愛していたのに。
「僕は、間違っていたのか……?」
蒼い海が、その問いに答えることはない。
ただ、凍るほど冷たい水の中で、アラリオン静かに目を閉じた。
過去の自分と向き合うように。
失った光を、心の奥で手繰るように。
泡の音も聞こえない、静かな深海。
冷たい水の中で、アラリオンは目を閉じていた。
けれど、心はまるで煮えたぎるように熱かった。
「……君が、なぜ、人間なんかを選んだのか」
水底の珊瑚に腰を下ろし、胸元に手を当てる。
君のことは、ずっと見ていた。
それは幼い頃。
サリスがまだ、人魚の王族の娘としても知られていなかった頃のこと。
アラリオンは、名家に生まれた少年だった。
周囲からは冷静で品行方正、才能ある若者として認められていたが、
実のところ、彼は人の目を気にしすぎる臆病者だった。
ただ、サリスだけは違った。
初めて出会ったのは、彼が十三、サリスが十歳の頃。
海の浅瀬に迷い込んだアラリオンに、彼女が手を伸ばしたのが最初だった。
「こっちだよ!この珊瑚の道を通れば戻れる!」
無邪気に笑うその姿に、思わず心を奪われた。
恐怖も、不安も、その一瞬だけは消えた。
サリスは、アラリオンの「世界の中心」になった。
時が流れ、サリスが王族の娘であることが明かされると、
海の者たちは彼女の力と歌声に畏敬の念を抱くようになった。
アラリオンも例外ではなかった。
だが、彼が彼女に惹かれたのはその「力」ではなかった。
夜の浜辺で、誰も見ていない場所で、
独りでイルカと話していた、あの寂しげな背中。
誰よりも美しく、誰よりも孤独な魂――
それこそが、アラリオンが彼女を愛した理由だった。
だからこそ、婚約を命じられた時、
彼は内心で小さく震えながらも、誇らしさと幸福を噛み締めていた。
「サリスを、この手で守る。誰よりも彼女を理解する存在になろう」
だが、その誓いは突然破られた。
――人間に攫われた。
その報が届いた日、アラリオンは狂ったように海中を探した。
血眼になり、岩礁や沈没船、海流の隙間までもくまなく。
だが、サリスは見つからなかった。
代わりに、彼の手に残ったのは――
「人間が海の者たちを攫い、兵器として売買している」という闇の噂だった。
怒りで震えた。
サリスがどれだけ優しく、誰かのために歌を捧げていたかを、
彼は知っている。
その彼女が、あろうことか人間に囚われ、弄ばれたかもしれないなどと――
耐えられるはずがなかった。
「……必ず取り戻す。殺してでも、奪い返す」
サリスが戻らぬまま月日は流れた。
彼は戦闘訓練を受け、水と氷の力を極めた。
王国の一部からは「復讐に囚われた愚か者」とさえ呼ばれたが、
それでも彼は止まらなかった。
それは「婚約者としての誇り」でもあり、
それ以上に、「誰よりも彼女を理解している」という自負があったからだ。
だからこそ。
あの街角で。
人間の男と肩を寄せ合い、穏やかな顔で微笑むサリスを見た時――
アラリオンの心は、一瞬で音を立てて崩れた。
「……なんでだよ……」
なぜ、自分ではなく、あんな人間の男を選んだのか。
なぜ、自分が狂うほど求め、守ろうとした彼女は――
人間の言葉に微笑み、彼を庇い、抱きしめたのか。
あれほど、深く、愛していたのに。
「僕は、間違っていたのか……?」
蒼い海が、その問いに答えることはない。
ただ、凍るほど冷たい水の中で、アラリオン静かに目を閉じた。
過去の自分と向き合うように。
失った光を、心の奥で手繰るように。
