エメラルドの檻② ─Aura─【オリジナル夢】
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アラリオンが手を掲げると、周囲の空気が凍りついた。
次の瞬間、空気中の水分が刃となり、鋭く宙に浮かび上がる。
「人間ごときが、僕に敵うと思うな」
振り下ろされる氷の刃。
レオは素早く身を引き、短剣でそれを弾いたが――
「くっ……!」
小さな傷が腕に走った。氷の破片が肌を切り裂いたのだ。
その温度は、冷たいというより「痛い」。鋭く、容赦のない冷気だった。
アラリオンは動きに迷いがない。
水を自在に操り、氷を空中に複数生成し、同時に放つ。
レオは何度も避け、受け流し、切り返した。
だが――
(速い……。力も、技も……まるで獣のような正確さだ)
氷の刃が、また一閃。
レオの肩に切り込んだ。
「……ぐっ!!」
鮮血が飛び、レオは肩を押さえて片膝をついた。
握っていた短剣が、カラン、と音を立てて石畳を転がる。
「レオ!!」
サリスが駆け寄ろうと一歩踏み出した。
「サリス!来るな!!」
怒鳴るようなレオの声。
その言葉にサリスは思わず立ち止まり、唇を噛み締めた。
「その程度で彼女を守るだって?……笑わせるな」
冷たく吐き捨てるように言い放ち、アラリオンはゆっくりと歩みを進める。
倒れたレオの目の前に立ち、剣を振りかぶった。
「とどめだ」
その刹那――
「やめて!!!」
風を裂くような叫び声と共に、サリスが二人の間に飛び込んだ。
レオの前に立ち、その身体を両腕で強く抱きしめた。
氷の剣の切っ先が、サリスの頬にわずかに触れたが――
アラリオンの手は、そこで止まった。
「……っ! サリス、なぜ……!」
金色の瞳が揺れる。
怒り、哀しみ、寂しさ、そして信じられないという戸惑い――
アラリオンの顔には、まるで感情という感情が押し寄せたような、複雑な影が差していた。
「もう、やめて……!」
サリスの声が震えていた。
「これ以上、私の大切な人たちが傷つくのは……もう見たくないの……!」
「……なぜ……なぜ、人間なんかを庇う?」
アラリオンの手がかすかに震える。
「僕は……僕は君のために……!」
その瞳に涙が滲んだ。
剣を握る指が緩み、彼の身体は一歩、後ずさる。
「君がいなくなってから、どれだけ苦しかったと思う……!
僕は……君を奪われたと思っていた……!」
震える声に、サリスも目を伏せる。
「……私も、あなたの優しさに救われたことはある。
でも今、私は……」
彼女はそっとレオを見下ろし、傷だらけのその姿を胸に抱いた。
「私は、レオと共に生きていくって決めたの。
あなたを拒むんじゃない……でも、過去には戻れない」
アラリオンは、何も言わず、しばらくその場に立ち尽くした。
剣を下ろし、静かに一歩、また一歩と後ずさる。
表情はもう、怒りではなかった。
ただ……届かぬものを見つめる者の、悲しげな瞳だった。
「……そうか。ならば……」
彼はそのまま背を向け、風のように夜の闇へと消えていった。
サリスはレオを支えながら、しばらくその場から動けなかった。
月が、静かにその背中を照らしていた。
