エメラルドの檻①【オリジナル夢】
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人間の足で歩くことに、サリスはまだ慣れていなかった。
石畳の冷たさ、土のぬくもり、そのすべてが初めての感覚。
けれど何より『自分の足で、レオを探している』というその事実が、彼女の心を強く支えていた。
「彼は旅人……この街にはもういないかもしれない」
それでも、諦めるという選択肢はなかった。
サリスは宿や港を巡り、人々に問いかけ続けた。
不審がられ、冷たくあしらわれても、彼女の瞳は決して曇らなかった。
一方、レオもまた旅を続けていた。
どこへ行っても心の奥にはあの夜の海があった。
波の音を聞けば、サリスの瞳、歌声、触れた手のぬくもりがよみがえる。
「……きっと、また会える」
その希望だけを胸に、港町を巡る旅を続けていた。
ある春の日。
潮風が柔らかく香る小さな港町。
レオは教会前の広場で、ひとときの休息を取っていた。
通りを行き交う人々の中に、ふと目を引く存在があった。
——透き通るような銀髪。陽に淡く輝く肌。
アクアマリンのような澄んだ瞳。
彼女は、確かにそこにいた。
レオは息をのんで立ち上がり、気づけば駆け出していた。
叫んだつもりでも、声は喉で震えたまま。
そして、少女がゆっくりと振り返る。
アクアマリンのように光る瞳が、彼をまっすぐに捉えた。
「……レオ」
たった一言。
だがそれだけで、全てが通じ合った。
人混みの中、ふたりは歩み寄り、言葉もなく抱きしめ合った。
あの夜の別れを、今ここでようやく繋ぎ直すように。
「探したのよ。ずっと、ずっと……あなたに伝えたかった」
サリスの声は震えていた。
レオはそっと額に手を当て、静かに囁いた。
「俺も。あの海の夜から、ずっとお前のことばかり考えてた」
そして、ふたりは潮風のなかで語り合った。
離れていた日々、想い、祈り、決意のすべてを。
サリスは言った。
「私は海に帰れる。でも、君といたいと思った。……だから、歩くことを選んだの」
レオは笑顔を返した。
「だったら、俺もお前の世界を見てみたい。陸と海、どっちも一緒に旅しよう」
人と人魚。
陸と海。
交わらないと思われていた二つの世界が、いま一つになった。
そのとき、遠くで鐘の音が響いた。
まるで、それがふたりの新たな旅立ちを祝福するかのように——
