エメラルドの檻①【オリジナル夢】
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翌朝、街は何事もなかったかのようにいつもの喧騒を取り戻していた。
レオは港近くの安宿の一室に身を隠すようにして過ごしていた。
昨夜の出来事を思えば、いつ捕まってもおかしくはない。だが幸いなことに——彼の顔を見た者はいなかったようだった。
「小僧が逃がした? 顔は?」「いや、後ろ姿だけだったらしい」「なら探しようがねえな……」
そんな声が宿の外の市場から聞こえてきた。
倉庫の男たちは人魚の逃亡に激怒しているものの、確実な証拠がない以上、騒ぎを大きくできないのだろう。
なにより「人魚の密売」という裏の事業が明るみに出るのは、彼らにとっても避けたい事態だった。
レオは宿の窓辺に腰かけ、遠くに見える海をじっと見つめていた。
風が吹くたびに、昨夜のあの歌が耳に蘇る。
サリス。
遠い昔、どこかで彼女と会ったような、そんな気がする。
彼女の名前と、あの透明な瞳が、何度も胸に浮かぶ。
「ありがとう」とは言葉でなく、心で交わされた約束だった気がする。
彼女は自由になった。
だけど、あれで本当にすべて終わったのだろうか?
ふと、レオはポケットに手を入れる。
中に残っていたのは、小さな鱗——
あのとき、箱から助け出す瞬間に、彼の手にふと落ちてきたものだった。
小さな鱗が光に反射して、淡いエメラルド色の輝きを放つ。
それは、夢ではなかった証。
そして、どこかで彼女も同じように、自分のことを思い出してくれている気がした。
「……また、会えるといいな」
そうつぶやくと、レオは立ち上がり、背負い袋を手に取った。
旅はまだ終わらない。
けれどこれから先の道には、きっとまた、不思議な出会いが待っている。
そしてそのどこかで、海と空がつながる場所で——
サリスに、もう一度会える日が来るかもしれない。
海風が窓をくぐり、そっと青年の髪を撫でていった。
